月別アーカイブ: 1月 2011

子ども手当騒動 — 所詮は他人のカネ(第488回)

子ども手当をめぐって、国に対する地方の拒否反応が広がっている。
1月22日の毎日新聞によれば、少なくとも1県7市35町村が子ども手当の地方負担を拒否し、来年度の子ども手当の財源を自治体としては計上しない方針だという。
わが千葉県においてもすでに浦安市は予算計上を拒否し、千葉市も追随する可能性が高い。
20日の記者会見での森田知事の発言がすべての地方の声を代弁していると言える。
「現政権は国が全部面倒をみると言って選挙をしたのに、いつの間にか地方負担となっている」
民主党政権は、マニフェストという国民との契約(民主党の言い方を借りれば)を破ったばかりかそのツケを地方へ押し付けたのである。
これに対して毎日新聞の見出しは『国への反発拡大』と書いた。
しかし、反発というのは「人の言動などを受け入れないで、たてつくこと」というニュアンスであり、この場合には不適切である。
あくまで悪いのは民主党政権なのであり、正しい行動・言動をとっているのは地方の方だということを明記しておかねばならない。
民主党が地方へ負担を押し付けたのは、「税金なんて所詮は他人のカネ」という傲慢な考えが根本にあるからだと私は思う。
「地方自治体の予算なんては、所詮他人の金なんだから出したっていいではないか」というのが本音なのだと私は思う。
その証拠に、地方への負担押し付けについて何の説明も無かった。
もし、これが国民に直接負担させるものだとしたら、それこそ政治生命を賭けて真剣に説明をしただろう。
負担をさせることについて、説明がなされたのかどうかをみれば「税金なんて所詮は他人のカネ」と思っているかどうかがバレてしまうのである。
民主党のマニフェストは全般において、「私、使う人。あなた、負担する人」という思想が貫かれているように思えてならない。

1年前の消費税論議(第487回)

第2次菅改造内閣は「消費税増税」への布陣だと言われる。
与謝野氏を経財相に抜擢したのがその証左だという。
1月19日の日本テレビに対する与謝野氏の発言「消費税の税率を引き上げる際には、一気に上げず、段階的に実施することもあり得る」(趣意)などを見ているといよいよ消費税増税に動き出すことが確実に思われる。
そこで、ちょうど一年前にどのような議論が行われていたのか明確にしておこう。
2010年1月21日の衆議院予算委員会で菅直人氏はこう答弁している。
『消費税の議論でありますけれども、私は、総理も何度も言われていますが、今のこの連立政権において、4年間、消費税の引き上げをやることはしない』
2009年9月から4年間といえば2013年8月までであり、今はまだ2011年1月である。
早くもぶれぶれではないか。
詳細に追いかけていけば、菅発言はもともとブレブレだったことを誰もが思い出す。
予算委員会からちょうど5カ月後の6月21日の記者会見では
『早期にこの問題について、超党派で議論を始めたい。
その場合に参考にすべきこととして、自民党が提案されている10%というものを一つの参考にしたい。
そのこと自体は公約と受け止めていただいて結構 です』
この5日後の6月26日の記者会見では
『消費税を含む議論をスタートさせましょうと提案していることを公約と言われるなら、その通り』
「公約と言われるなら、その通り」と、まるでこちらが『公約』だと言っているかの様な発言をする。
「公約と受け止めていただいて結構」と発言したのは菅総理ご自分なのに、他人が言ったようなレトリックを使うところがこの人らしい。
そしてさらに4日後の6月30日の発言は具体的な仕組みまで述べた。
青森市では『(低所得者対策として)年収が200万や300万までは還付制度を』
秋田市では『(低所得者対策としての還付制度は)年収300万とか350万以下』
山形市では『例えば年収300万円、400万円以下』
南下するに従って、還付される年収が上がってくるのが特徴だ。
青森が250万円で山形が350万円。
その距離からすると東京では450万円、名古屋では550万円、岡山では650万円である。
これでは沖縄に至れば1000万円を超えてしまう。
「消費税はあげない」から「10%は公約」となり、旗色が悪くなると「議論開始が公約」になる。
そして今度は、自分がやるのではなく抜擢した大臣にやらせようというのであろうか。
いずれにしても、国民は何を信用すればよいのか?
残念なことに民主党政権には信ずるに足るものが一体何なのか、まるで見い出せないのである。

松戸駅東口問題(第486回)

松戸駅東口の新東京病院落成式のことを今でも思い出す。
当時、市議会議員だった私はお招きをいただき、病院内の各部屋や設備を見せていただいた。
ところが、落成式の席上に宮間市長の姿はなく、助役が代理出席をしていた。
欠席した本当の理由はわからない。
ただ、宮間市長が新東京病院の建設を素直に喜んでいなかったことは理解できた。
市長にしてみれば、駅前とは商業集積をするゾーンであり、医療機能を持ってくるべきではないと思っていただだろう。
しかし、病院の設置許可の権限は千葉県にあり、松戸市にはない。
県は、松戸市の考えとは関係なく病院設置を認めてしまった。
市長には面白くなかったろうと推察する。
もちろん、あくまで推察であり、全く私の見当違いかもしれない。
私はそう理解していたし、私も駅前は商業集積であるべきということには同一意見である。
さて、新東京病院が誕生してもうすぐ20年が経とうとしている。
松戸駅東口の商業集積はどう進んだろう?
松戸駅東口の賑わいはどうだろう?
あくまで私の私見ではあるが、新東京病院のあるお陰で東口は今後も賑わいが保てると思う。
もっと言えば、今後は新東京病院を核にして東口の商業集積を戦略的に考えるべきとすら思う。
駅とヨーカドーはデッキでつながっている。さらに新東京病院とつなげた場合、商業集積はどう変化するだろう。
仮に、商業集積が進むのなら実施する手ではないか。
今後は高齢者が増えることが自明である。
そうであれば間違いなく医療ニーズは伸びる。
電車も使うだろう。車でも来るだろう。自然と賑わいも生まれる。
逆に、もし仮に新東京病院がなかったとしたら東口はどうなっただろうか?
そして、仮に今この瞬間に200床を超える規模の病院がなくなったとしたら東口は・・・?
そう考えると、結果的に「まちづくり」の上では病院誕生は相当プラスになったのではないか。
これが20年間の経過をみた私の結論である。

グラミン銀行は失敗か?(第485回)

今朝の公明新聞に掲載されていた『少額ローンで自殺者急増』という記事はいろいろ考えさせられた。
同記事はニューデリー時事が伝える『インドで新たな貧困問題』で、グラミン銀行の手法の失敗を報じている。
グラミン銀行は、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏がバングラディシュで創設した銀行だ。
無担保で貧困層に小口融資をし、起業させることにより貧困救済を図ろうというものである。
グラミン銀行については、かねてより同様の懸念を表明する人もいた。
たとえば返済がちゃんとなされるのか?という疑問は常について回る。
仮に返済が滞った場合、銀行側から見れば損失、借りた側から見ればさらなる貧困ないしは最悪の結末もある。
お金を貸す、借りるというのは貧困層にとってはまさに重大なことである。
しかし、現実に2400万人の契約者が存在するということは、やはりこの仕組みは必要なものであることは間違いない。
するとこの問題もまた、制度自体は正しくとも運用を誤ると制度の根幹を揺るがしかねないという教訓を示すものである。
市場主義、資本主義の国においては、政治が需給をコントロールできない、極力しないというのが原則である。
だからこそ『運用』面についてのコントロールを問われる。
人間社会は実に複雑で難しいものだと思うのである。

日本の国際協力(第484回)

今朝の公明新聞1面に、スイス国際経営開発研究所(IMD)が発表した2010年国際競争力ランキングの表が掲載されていた。
それによれば、日本は27位であり、遠藤乙彦衆議院議員によれば1992年には日本は第1位だったという。
つまり18年かけて27位まで落ちた計算であり、1年ごとにきれいに1.5位ずつ順位を下げてきたことになる。
しかし、それにしても「欧米諸国だけでなく中国や韓国、タイよりも下位にある」というのは驚きでもあり、私の感覚とは相当かい離している。
それというのも、昨年秋に発表された世界経済フォーラムによる国際競争力ランキングでは10位から8位に上がったはずだからである。
そこで、IMDのランキングの内容についてネットで調べてみると、「経済の状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」という4つの大分類をして、そのうえに20の小分類を行い、各分類ごとにランキングをつけていく方式であることが分かった。
そして、日本が順位を下げてた一番の原因は「政府の効率性」であり、「それなら分かる」と思った次第である。
国際競争力が低いと言われた場合、わが国の場合直感的には農業分野というイメージがある。
少し経済に詳しい人なら、「わが国への直接投資が低い」とも思うだろう。
したがって、ランキングの内容を知らずに、ランキングの順位だけが一人歩きしてしまうと処方箋を誤ることになる。
まったくの偶然だとは思うが、同じ今朝の日経新聞の1面には、昨年の『海外直接投資の主な受け入れ国・地域』という表が掲載されており、わが国の項目は20億ドル・マイナス83.4%である。
アメリカ、中国に比べて異常な少なさ異常な落ち込みである。中国の場合は香港を加えて計算してみると、1636億ドル・14.2%増である。
フランス、ロシア、ドイツ、ブラジルのいずれも日本の10倍以上である。
われわれは外資に対する感覚、見方の劇的な変更・修正を迫られているのである。

国名金額(億ドル)
米国1861(43.3%)
中国1010(6.3%)
香港626(29.2%)
フランス574(▲3.7%)
ロシア397(2.5%)
ドイツ344(▲3.5%)
ブラジル302(16.3%)
日本20(▲83.4%)

UNCTAD調べ。1/18日本経済新聞より