月別アーカイブ: 1月 2010

日経新聞(隅田川氏)の慧眼(第345回)

新聞整理をしていて、昨年(2009年)11月14日の日本経済新聞19面の『大機小機』というコラムが目にとまった。
それは「国債発行額を採点すると・・・」という(隅田川)氏のコラムだった。
新年度(2010年度)予算を財政規律の面から採点するという発想で、国債発行額により鳩山内閣の成績を評価するというのである。
隅田川氏によれば、20兆円なら一般会計の基礎的収支は均衡し新たな借金はふえないので「Aプラス」
30兆円なら、小泉内閣当時よりも財政規律を守ったことになるので「A」
33兆円なら、09年度当初予算の国債発行額と同規模なのでマニフェストに必要な財源は既存経費の見直しによって賄われたことになるので「Bプラス」
40兆円なら、09年度の当初予算よりも税収が6兆円前後減少するといわれているので、実質09年度予算と同規模なので「B」
44兆円なら、前政権の第一次補正予算後の国債発行額なので「C」
最後に、44兆円を超えた場合は評価は「D」で落第。
コラムというものの本質をつく面白さも持ち合わせ、そして何よりも11月14日の時点でこういう発想ができるところが鋭い。
あらためて隅田川氏に脱帽する。
さて、それから1ヶ月以上たって結果はどうだったのか?
鳩山内閣初の予算案での国債発行額は44兆円を超えてしまっていた。
つまり落第の「D」
この隅田川氏の評価に、私も同感である。

雇用関係数値の見方(第344回)

今日の読売新聞夕刊は、『求人倍率 09年0.47倍』として統計を取り始めた1963年以降で過去最悪だったことを報じている。
総務省の発表によれば、特に7月、8月は最悪で0.42倍であり、また平均完全失業率も5.1%と2003年以来の5%台だった。
非常に厳しい雇用情勢が読み手に伝わってくる記事だ。
ただ、その中で若干違和感を覚える部分もあった。
以下のピンク色の記述である。
『その結果、過去最悪だった1999年の0.48倍より悪化した。
09年の平均失業率は、08年の4%台から1.1ポイント上昇した。
一方、09年12月の有効求人倍率(季節調整値)は0.46倍で、11月より0.01ポイント上昇し、4ヶ月連続で改善した。同月の完全失業率(同)も5.1%と0.1ポイント改善した。
上記の記述はおそらく厚生労働省の資料からの引用だろう。
ここでまず注意しておかなければならないことは、有効求人倍率とは「公共職業安定所で職を探している人1人あたりに何件の求人があるか」というデータだということである。
つまり、ハローワーク以外の民間の就職ショップや求人広告を見て職を探している人はここではカウントされない。
つまり、実態から離れているとは言わないがずれていることは念頭におかねばならない。
そのうえで、たとえば船橋にあるジョブ・カフェなどに訪れる人を月ごとに追っていくと毎年12月だけはがくんとが減るのである。
つまり求人の方は変化があまりないのに、求職数は減る。
したがって、12月がやや持ち直したからといって安心するにはほど遠い。
統計は1年であるとか四半期であるとか人為的な期間を定めた形でのデータ解析を行う。
実際、時間に切れ目はないのであるが人為的に切ってしまう。
同じデータでも期限の切り方を替えればまるで違うものが見えたりする。
1月で切れば、またがくんと求職者が跳ね上がるかもしれない。

勉強になった埼玉県「食の安心県民の集い」(第343回)

埼玉県の集いに参加させていただいた。
「千葉県民ですが参加できますか?」という問い合わせに対して「席もまだありますのでどうぞおいで下さい。」とのことで喜んで浦和に乗り込んだのである。
「県民の集い」の第一部は「食をめぐる作文」の表彰式で小・中学生の部9人、一般の部4人の受賞者の作文の小冊子までいただいた。
1800もの応募の中からの受賞であるから内容も濃く、楽しくも考えさせられる力作ぞろい。
第二部は、河岸宏和氏の基調講演「目からウロコの食品表示」。
一度この方の話を伺って見たいと思っていたが、予想通りの興味深い内容だった。
9割がた知らない話で食品やスーパーマーケットや飲食店に対する見方がガラリと変った。
たとえば生卵の扱い。
卵はサルモネラ菌が怖い。この菌は10度で冷蔵保存すれば繁殖が抑えられ卵は60日間はもつ。
ところが36度のところに置いておくとたったの一日しかもたないという。
にもかかわらず、わが国では卵は常温の場所に置かれて販売されている。
先進国で常温で卵を販売しているのはわが国だけだと言うのである。
そのような「なるほど」と言う話が、卵、肉、魚、ハムなどの加工食品について語られていく。
食という、身近で日常的で長年付き合ってきた事柄なのに知らないことがあまりにも多くてびっくりするばかりであった。
こうしたイベントに参加させていただいた関係者に心から感謝したい。

FTAの行方(第342回)

民主党はFTAにどう対処するのだろう?
FTAとは、二国間で相互に関税を撤廃することを決める協定である。
グローバル化の進展にともない、世界各国のFTAは急速に増加してきた。
しかし、わが国においては関税撤廃は工業分野では大きなメリットをもたらすものの、農業分野を壊滅的状況に追いやる危険性がある。
したがって、その交渉は難航を極めている。
民主党のマニフェストには『米国との自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める。』という一項が掲げられている。
これが選挙中に大変な批判を浴び、あわてて『締結し』を『交渉を進め』に変更するとした。
しかし、締結することに変わりはなのだろう。
そして、1月16日の民主党大会ではあらためてマニフェストの実行が強調された。
現在、わが国は農林分野においてシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、スイス、ベトナムと協定を結び、インド、韓国、ペルー、オーストラリアと交渉中である。
一方の国会は、7年ものあいだ毎月1500万円の献金を受けながら、まったく知らなかったと言い切る鳩山総理と自分の金を出したと言いながら何故か自分で買わずわざわざ後援会に都心の不動産を大量に買わせていた小沢幹事長の追及でスタートした。
誰が考えてもおかしな話ばかりである。
一刻も早く、鳩山氏も小沢氏も国民に対する説明責任を果たしてほしい。
そして、FTAの問題や農業の問題にも議論の時間を割いて欲しいのである。

自浄能力なき政権党(第341回)

民主党・小沢一郎幹事長の秘書を務めた石川智裕衆議院議員が逮捕された。
小沢氏の側近だった池田光智私設秘書が逮捕され、大久保隆規公設第一秘書が逮捕された。
私の考えでは、お金という非常に大事でデリケートな扱いを要するものをボスの知らないうちに秘書が勝手に処理することはありえない。
まして、ぼんやりしたボスではない。
自分の意にそわぬものを側近にすることが考えにくい小沢氏がボスなのである。
当然、小沢氏に疑惑の目が行く。
しかし、小沢氏は検察の事情聴取に応じない。
政権党の事実上のトップであり、事実上の最高権力者の小沢氏はまさに公人中の公人だ。
その人が捜査協力を拒むなどあってはならないことである。
そして、とうとうこれまで指導してきた側近が次々と逮捕されたのである。
率先して自らの潔癖を積極的に晴らすべく努力を尽くす。これが権力を持つものの務めであろう。
今回、信じられなかったのは、民主党の中からそんな小沢氏の対応を批判する声がなかったことだ。
国会審議ではあれほど舌鋒鋭く批判を繰り返してきた民主党議員はどこに消えてしまったのか?
要するに民主党もやはり自浄能力ゼロ だったのである。
そんな政党が衆議院で圧倒的多数を占めている。
情けなさを通り越して、恐ろしささえ覚える。
小沢氏の不動産にかかわる疑惑は以前からあった。
小沢氏の政治資金管理団体「陸山会」は、94年5月には元赤坂のマンションを取得している。
これを皮切りに、赤坂や南青山に5つのマンション、仙台や盛岡などに3つの事務所、そして世田谷区深沢の秘書寮(平成17年1月取得。購入価格3億9785億円)など12の不動産を取得し、近年そのうち二つを売却している。
これら資産の購入資金に政党助成金というわれわれの税金は使われていなかったのか?ゼネコンからのヤミ献金は使われていなかったのか?小沢氏は国民の前に明確に説明する責任がある。
にもかかわらず、小沢氏は説明をせず、民主党さらには政権を担う政党も小沢氏の対応を咎めることもない。
あまりにも国民を馬鹿にしているとしか思えない。
1月16日の民主党大会では小沢氏の幹事長は続投だという。
やはり政権交代によって政界浄化がなされるという単純な構造ではなかったわけである。清潔な政治の実現への道は途方もなく険しい。