月別アーカイブ: 4月 2013

水害対策の難しさ

今日の日経新聞に、本当に小さな小さな記事『佐用町側の責任認めず 兵庫豪雨で神戸地裁支部』という記事がありました。
これは、2009年の豪雨災害で死亡したのは避難勧告が遅れたためとして、犠牲者の遺族が町を訴えていた裁判の判決記事です。
詳細が分かりませんので、私には裁判についてコメントする資格はありませんが非常に気になっていました。
私は、2011年6月22日の本会議で、災害情報の伝達と言う観点から佐用町の事例を取り上げました。
『兵庫県の佐用町では、平成21年8月の集中豪雨において20人の犠牲者を出しましたが、このとき、町民の7割以上が避難勧告を聞いていなかったという調査があります。佐用町には、当時既に防災無線の個別受信機が住民の自宅全戸に設置されていましたが、3割足らずの人しか聞いていません。外に出ていたり、車に乗っていたりしては聞くことはできませんし、そもそも旅行者には伝わりません。(略)』
避難勧告を出すタイミングが非常に難しいことは容易に想像できます。そのうえで、今度はその避難勧告を住民に伝えることもまた非常に難しいのです。
さらに、水害の場合はもう一つの難しさがあります。それは、勧告に従って避難することによって返って命を危険にさらすケースがあることなのです。
水害で命を落とすケースで多いのは、道路冠水によって水路などが見えず、誤って落ちてしまうケースです。むしろ、避難せずに自宅の二階などにいた方が安全なケースがあるのです。
そうした個別の事情を行政は認知していませんし、認知していたとしてもそれを伝える手段がありません。
結局、自分の命を守るのは自分しかいないということになります。ただし、だからと言って行政が過失を犯した場合にそれが免責されることはありません。

都道府県は大きいか

今日の朝刊各紙は、国民健康保険の運営を市町村から都道府県へ移管することで社会保障国民会議の意見が一致したことが報じられています。まあ、そうなのだろうなとは思います。しかし、・・・とも思います。
公明党としての議論も、少なくともPTレベルでは都道府県へ移すことで合意ができていると思います。PTで異論を表明したのは私だけでしたから。
国保を都道府県に移管する理由は、市町村ではもはや運営ができないほど財政がひっ迫しているからです。そこで、二つのことを指摘したいと思います。
一つは、では都道府県は十分に大きいのかということです。
小さな県は、千葉県内の中核市である船橋市と同程度の大きさです。横浜市や大阪市とは比較しようもないほど小さいのです。したがって、一口に都道府県と言っても、その大きさには格差があることは注意を払わなければなりません。
もう一つは、歳入歳出構造を変えない限り、早晩『都道府県』国保も行き詰ることは火を見るよりも明らかだということです。
つまり、都道府県への移管も一時的なものであり、結局は国で運営する以外にないのではないかと言うのが私の異論でした。
こうした公的サービスの給付の適正化は、本当は住民に身近な市町村の方が良いのです。ところが実際には給付の内容を市町村で変えることができないのです。そうであれば何も市町村のような身近なところが運営する必然性がありません。
国民会議の意見の通り、もし運営の主体を変えるのであれば、運営すべてを任せてもらわなければ、単なる先送りであり、単なる時間稼ぎになるだけです。
財源も自主財源とし、給付内容も都道府県が決定できる、そういう改革をはたして(唯一の立法機関である)国は認めてくれるのでしょうか。

入札不調は小泉改革の結果?

4月21日の日本農業新聞のコラム『取材ノート』は小泉さんを悪者にしすぎだと思いました。表題が『排水機場の入札が不調』で、その見出しが『響いた小泉改革』なのですから。
しかも記事の中で「入札不調は小泉改革の結果」という業者の方の発言まで書かれています。
記事の分析は、「小泉改革によって土木費が削られた」⇒「建設業者が人員をカットした」⇒「人手不足で落札できない」⇒「建設業者は土木費がカットされているので雇用を増やさない」という論調のようです。
そこで、千葉県の土木費を見てみると、平成13年度が2314億円なのに対して、平成23年度では1224億円とほぼ半減しています。
歳出に占める構成比も14.5%から7.3%へほぼ半減です。
松戸市も平成13年度の178億円(構成比15.9%)から110億円(同8.7%)へとかなりの減額です。
念のため、外房地域の茂原市も見てみましたが、44億円(16%)から32億円(11.8%)へと、この10年で県も市町村も相当の減額です。
10年前からずっと減少傾向にあった土木費について、小泉改革の結果というのは無理があるように思います。
では、土木費が減って何が増えているのかと言うと結局民生費なのです。
この10年間の民生費の伸びは、千葉県が7.9%から14.3%へ、松戸市が25.5%から44.3%へ、茂原市が20%から31.3%へと構成比が増加しています。
いま、労務者賃金がなかなか上がりません。このことも入札不調の原因でもあります。少なくとも行政は、財政が苦しいなかであっても現場で働く人たちの賃金確保にはしっかりと予算をつけるべきだと思います。

明月ケ谷の道

俳人の山口青邨が昭和8年11月5日に書いた文章があります。『鎌倉山小春』という短文です。
たまたま読んでいましたら、ちょっと気になることが記されていました。
『明月院の谷戸の前を通ってゐる道は尚ほ山の方へ延びて行ってゐる、自動車も通れる道ではあるが、毛筆で太く一筆書き捨てた道のやうにその先は山の中へ淡く消えてゆく道であった。』
さて、私が気にかかったのは次の箇所です。
『むかうからたかし君が一茎の龍胆を細い指先につまんで顔のあたりをくるくるまはしながらやって来る。「向ふに何か面白いものがありますか」と訊くと「枯蓮の池があります」と答へる。ぶらりぶらりと行く、成ほど枯蓮や枯蒲の生えてゐる沼がある』
ここに登場する『たかし君』とは、松本たかしのことで宝生流能楽師の松本長(まつもとながし)のご子息です。
私が気になったのは、この谷戸の道は先がものすごい急坂なのです。すると、そんな沼があるとすれば明月院から遠くないところのはずです。
現代社会は、恐ろしいほど便利なインターネットを使って、実はそんな沼の存在を千葉のわが家に居ながら確認することができます。ところが、いくら探してもそんな沼はありません。つまり、昭和8年当時あった沼が、その後埋め立てられてほぼ間違いなく住宅になっていると思われます。
そう、3・11の際に液状化した我孫子市の住宅街と全く同じ構図です。おそらく、住んでいる方もそのご近所の方々も昭和初期にあった沼の存在など知る由もないでしょう。そして、鎌倉市もまた掌握していないでしょう。
偶然見つけたことではありますが、もし自宅近くに関する古い文書が残っていたら読んでみることも大事なのですね。
(写真は明月院への石畳です)

環境負荷を減らしたい「ニューディール」

江戸料理研究家の福田浩さんのお話を伺っていて、「なるほどそうだったのか」「そうかもしれない」と思ったことがありました。
一つは関東大震災の話です。
福田さんによれば、関東大震災によって東京の料理が変わったといいます。
わたしはそれまでハードの部分を中心に考えていて、これまでほとんど取り上げられていなかった横浜港の大被害が、その後の日本経済にどのような影響を与えたかなどを本ブログで書いてきました。しかし、同震災は人的被害も甚大でした。当然、東京の料理人の方々も多数亡くなったことと思われます。
それによって、震災後の東京の料理は、関西などから来た大勢の料理人によって、関西風の味や色彩がかなり加わったというのです。私などには絶対に考えつかない見方です。
もう一つは、東京湾の魚介類、特に泥の中の魚たちがほとんどいなくなったというのです。そしてその理由について、橋を造りすぎたのではないかというのです。
考えてみれば、東京湾にそそぎこむ河川堤防もコンクリートが多く使われています。さらに、広範囲の埋め立て地、湾岸を走る道路、アクアライン、羽田空港など東京湾にコンクリートの影響があるのが当たり前です。
それが東京湾の魚介類や、特に千葉の貝類などに少なからず影響を与えているとおっしゃるのです。
木更津周辺などにどのような変化を与えているのか、これは相当注視していかなければならない重要事項だと思いました。
これから推進していく、命を守るための『防災減災ニューディール』であっても、環境への負荷を極力減らしていく、最大限に環境に配慮した事業にしていくことが非常に重要だと思います。