月別アーカイブ: 1月 2008

目まぐるしきはパネル戦線(第170回)

茂原市にあるIPSアルファテクノロジーは、第6世代の液晶パネルを月産5万枚以上生産している有力企業である。
同社は、日立製作所が100%出資する日立ディスプレイズが50%出資し、東芝が15%、松下電器が30%出資という提携状況だった。
ところが昨年12月25日、IPSアルファテクノロジーへの出資比率は変わらないものの、あと数ヵ月後には日立が日立ディスプレイズの株式を49.8%手放し、それを松下とキヤノンが24.9%ずつ取得することが明らかになった。
そしてさらにその後は、東芝がIPSの株式を松下の売却するなど、松下がIPSの株式の過半数を取得することになっている。
つまり、IPSは日立の会社だと思っていたら、実は日立はそもそも液晶パネルから事実上撤退し、松下電器産業の会社になってしまうのである。
各社それぞれの経営戦略とは言え、目まぐるしきはパネル戦線である。
そこで問題になるのは、こうした経営主体の変更が地域経済に与える影響だ。
経済・雇用その他が良い方向へ進むことを強く望むが、少なくとも後退のないように注視していきたい。

結局、誰が負担する?(第169回)

原油価格高騰である。
農林漁業者も運輸業者も生活者も原油価格高騰の直撃を受けている。
これを政治的に解決しようとすると、結局誰が負担するのか?と言う問題に行き当たる。
何もせずに放置すれば、燃料の購入者が負担をすることになる。
仮に、千葉県が補助金を出せば、それは千葉県内の業者に限ってのことだろうから、その補助金の額だけ県民全体で負担することになる。
国が補助金を出せば、当然広く国民が負担することになる。
すなわち、結論的にいえば日本経済全体を俯瞰すれば、どちらにしてもいかなる手法を編み出したとしても、とどのつまりは国民が負担することにかわりはないことに誰しもが気付く。
それでは、仮に国が補助金を出したとすると、それは経済的にどういう効果があるだろうか?
少なくとも二つのことは言える。
第一に、低所得者よりも所得の高い人の方がより多くの税負担をしているはずなので、ここで所得再配分が行なわれる。
第二に、税として国税当局が吸い上げたものを各種手続きを経て補助金として支出するので、歳入歳出の間に生じる様々な形での人件費や事務費や機会費用などのコストも合わせて負担しなければならない。
はたして民主党は、こうしたことを踏まえた上でガソリンをリッター当たり25円を下げろと主張しているのであろうか?
単に人気取りのために主張しているだけなのだろうか?
どちらなのかは分からないが、せめて国民経済への影響(あるいは経済効果)を明らかにしながらガソリン価格について主張して欲しいものである。

どうするアライグマ問題(第168回)

鎌倉市が発端となったと言われるアライグマ問題。
瞬く間に三浦半島はじめ湘南地方までアライグマが席巻した。
わが房総半島へは、自然障壁としての東京湾があり、人工障壁としての東京都心があるので、そう簡単には侵入してこないだろうと思っていたが、残念ながらすでに7000頭はいるという。
これではもうアライグマをどうこうすると言っている状況にはない。
私はこれまで、外来生物は可愛そうだけれども排除すべきと思ってきた。
したがって、駆除する側のハンターの質をどう高めるか?あるいは高齢化したハンターを若返らせるために狩猟免許等を取得しやすくすると言った方途を考えていた。
しかしながら、ゴルゴ13ばりの凄腕ハンターが大量にいなければ、現実的には駆除できないとなればアライグマの排除はあきらめるしかない。
同様に、アカゲザルの組織的駆除ももしかしたらあきらめたほうが良いのかもしれないと思い始めている。
予算をかけて駆除に乗り出しても、根絶できないうちに瞬く間にまた増えるのだから未来永劫に税金のムダ使いとなる。そうであれば、その予算はむしろ農業者への補償に使うほうが賢明であろう。
この現実的発想が大事であって、仮に根絶できないなら今後の駆除は生活上の被害や農業などの被害に対処することを中心に行なうべきである。
何か決定的な方策が見出せない限り、アライグマなど特定外来生物根絶については敗北宣言が時間の問題に思えてならない。

いすみ鉄道の再生を(第167回)

1月9日に、いすみタイムス社を訪問した折、いすみ鉄道の社長公募の話題となった。
いすみ鉄道は、いすみ市の大原駅と大多喜町の上総中野駅を結ぶ営業キロ26.8キロメートルの典型的なローカル線である。
上総中野駅からは小湊鉄道に接続しており、JR内房線の五井駅へつながっている。つまり、房総半島のど真ん中を鉄道によって横断できるのである。
ところが、道路網の整備や沿線地域の少子高齢化などにより利用者減少に歯止めがかからない。そこで、民間的経営感覚を取り入れた経営改善を図るべく代表取締役社長の公募と言うドラスチックな策に打って出たのだ。
さて、いすみ鉄道再生のためにどんな手法があるだろうか?
まず思いつくのが『無記名式定期券』である。
家族など誰でも使える定期券は利便性が高い。たとえば自転車通学をしている高校生なども購入するようになるのではないか?
次に、自転車を載せてよいことにする。
ツール・ド・チバの成功でもわかるように自転車は人気の高い乗り物だ。自転車を載せることができれば観光客を呼び込めるのではないか?
最後は、やはり話題づくりであろう。
いすみ鉄道は、この1月6日に大多喜高校演劇部のメンバーが車内で幕末を背景にした演劇を披露した。今回が2回目である。
こういう秀逸なアイデアを実行できる鉄道をむざむざと廃線にしてはならない。
公募社長誕生によって、いすみ鉄道が千葉県観光の牽引車になるよう心から期待する。
いすみタイムスの皆様には和やかなひと時をありがとうございました。

宝永噴火300年(第166回)

富士山は非常に律儀に300年ごとに噴火をしているという。
そして、前回の噴火が300年前の1707年(宝永4年)12月16日10時ごろであったことから、国立科学博物館では『富士山展 宝永噴火300年』という企画展が行なわれている。
私は、日本火山の会の人たちと同展を訪れたが、それは専門家に説明していただきながらの見学というこれ以上ない贅沢であった。ご関係の皆様に心から御礼申し上げます。
さて、この宝永噴火は12月16日から翌1708年1月1日の16日間にわたっての噴火であったが、展示の中で火山灰がどの範囲にどの程度積もったかという図面が興味深かった。
富士山ハザードマップ検討委員会によれば、火山灰について2センチ以上の降灰で畑作物は1年間収穫不能、1年間牧場が使用不能、0.5センチの降灰で稲作は1年間収穫不能だというので、仮に宝永噴火と同様の事態が起こったとしたら、現在の千葉県農業がどういうダメージを受けるのか非常に気になったのである。
そこで、帰宅してから千葉県農政事務所統計部による平成18年農業産出額をもとに、荒っぽい試算をしてみた。
県内のほとんどの市町村の農業が壊滅的な被害を受けることは明白であるが、そのなかで旭市、香取市、銚子市という産出額県内ベスト3が被害を受けない可能性が高いことが僥倖であった。
稲作、畑作ともに生き残るのが、銚子市、旭市、匝瑳市、香取市、神崎町、多古町、東庄町、横芝光町。稲作だけが助かるのが、野田市、成田市、山武市、富里町、栄町、九十九里町、芝山町とした。
これらの合計産出額は1486億5000万円(畜産は計算に含まず)で、千葉県全体の農業産出額の37%であった。たかだかこの程度の降灰で千葉県農業の6割が壊滅する。まさに富士山恐るべしである。
千葉県には火山がないからと、のほほんとしてられない現実がここにあった。もちろん、農業だけではなくコンピュータの麻痺から信号機の制御ができなくなり道路も鉄道も大混乱をする、そもそもそれを直そうとする保守要員の移動手段が断たれる。ライフラインもストップするのだろう。
もし富士山がこれまで通りの間隔で噴火するとしたら、われわれは生きているうちにそれを経験することになるのである。