野党の後期高齢者医療制度廃止法案の提出を受けて、昨日の朝刊各紙は一斉にこの問題を社説で取り上げた。ではどう書いているか見てみよう。
毎日新聞 の言い分
?『病気になるリスクの高い高齢者だけを対象にした制度は保険原理にはなじまない。多くの元気な人が病気の人たちを支えるというのが保険制度だが、後期高齢者制度はそうなっていない。』
?『野党に注文がある。(略)行き詰まりつつあった従来の保険制度に代わる高齢者医療制度の創設を検討すると与野党で決めていたはずだ。廃止して元に戻すという案では国民は納得しない。』
このように与野党とも批判し、『与野党は本気で議論すべきだ。』という結論である。
朝日新聞 の言い分
?『制度を「元に戻せ」と言うだけでは、問題は解決しない。 老人保健制度に戻れば、多くのお年寄りは市町村の運営する国民健康保険に再び入ることになる。(略)いまでも厳しい国保の財政が維持できるとは思えない。』
?『老人保健制度では、お年寄りの保険料も現役世代の保険料もまぜこぜで、だれがどう負担しているのかが分かりづらかった。(略)こうしたあいまいな点をはっきりさせておこうというのが新制度だ。』
以上の理由で、野党の主張する従来の老人保健制度に戻せというのは間違いだと批判。そして、結論として『財源問題から逃げていては、「うば捨て山」という批判がいつまでもつきまとい、制度が定着しない。』と公費投入をもっと増やすべきという主張である。
読売新聞 の言い分
?『新制度を撤廃した後にどうするのか、対案がない。とりあえず従来の老人保険制度を復活させるという。これでは、あまりにも無責任ではないか。』
?『新制度で老人保健制度の問題点は改善しており、再び後退するのは望ましくない。利点は適切に評価してさらに磨き、欠点を迅速に改めていくべき』
と、野党の主張を批判。
見出しも『混乱を増すだけの廃止法案』 と、非常に明確である。
最後に日経新聞 であるが、こちらは社説には取り上げていない。『大機小機』というコラムである。
?与党に対して『「なぜ七十五歳以上の高齢者だけ切り分けるのか」という制度の根幹にかかわる疑問にはきちんと答えたほうがいい。』と指摘し、『医療制度を七十五歳で分けたのも、これまでの制度だと現役の負担が際限なく増えて支えられなくなる心配があったからだ。(略)1割は七十五歳以上の高齢者に負担してもらうと定めたところが大切だ。これまではそこがあいまいだった。』
そして結論として『福田首相はこう訴えるべきだ。「高齢者のみなさん、孫のため、をまず考えましょう」と。』
以上を見ると、毎日新聞だけが75歳の線引きに固執しているが、他紙は負担の明確化になったとだいたい評価している。そしてすべての新聞論調は従来の老人保健制度へ戻すことに反対している。当然のことだろう。
民主党以下野党の言うように元の制度に戻せば、大半の年金生活者の保険料は上がるし、現役世代は国保の膨大な赤字補てんを負わせられる。
お年寄りに医療費がかかるのは当たり前の話である。怪我もしやすくなるし病気にもかかりやすくなる。
そして人は誰しも望むと望まざるとにかかわらずお年寄りになるのである。
したがって、75歳以上の医療費が現役世代より高いのは当たり前のことで、お年寄りが悪いのでもなんでもない。
その当たり前の認識の上で、ますます進む社会の高齢化に対応した制度を維持しなければならないのである。
後期高齢者医療制度の改善すべき点はしっかりと改善し、世代を超えて負担を分かち合う制度の構築に取組んでいきたいと思うのである。
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