月別アーカイブ: 12月 2007

プロの拘り、プロの嗜み(第165回)

喫茶店でコーヒーを飲み、レジでお勘定を払おうとする。
壁に表示されていたコーヒーの金額347円を払うと、レジの女性は「346円です」と1円返してよこした。
私が「347円ですよね」と言うと「いえ、346円なんです」という。
なんでも、正味のコーヒーの金額が330円で、それに消費税5%がかかるので本当は346円50銭なのだという。
この場合、店の金額表示については高いほうを表示せよという決まりがあるので347円。
しかし、消費税は端数切り捨てとなるので50銭は切り捨てられて、受け取るのは346円なのだという。
プロ好みの面倒な話ではあるが、まあ1円得した気分にはなった。
妻から毛髪が薄くなったことを指摘され、自覚症状のなかった私は滅多に見ない自分の代表質問のときの映像を千葉県議会のインターネットで見てみた。
カメラはわたしの位置より高いところからわたしを映し出しているので頭部が良く見えるのである。
そして、「これはひどい」と思った。
行きつけの理容室のマスターに面白おかしく髪が薄くなったという話をするのだが、実にうまく話をそらす。
わたしがわざと話題を戻しても絶対に毛髪の話には乗ってこない。
見事なくらい別の話題を持ち出してくる。
これがプロの嗜みなのであろう。

若者恐るべし(第164回)

雑誌プレジデント12月31日号の特集「金メダル社員になる法」は良い企画でした。
次々登場するスゴイ社員に若者が少なくないのです。特に技能五輪で活躍した若者たちについてのルポはページをめくるたびに拍手でした。
この特集で一番印象の残ったのは「ドラクエ?」を製作したレベルファイブの日野晃博社長の話。
「家賃は安いし、通勤は快適。福岡に会社があると発注元の会社もいちいち細かい指示は出せません。だからこそ、うちを信頼して任せてくれます。東京に移転したら、今のようなパフォーマンスは発揮できないでしょう」
一極集中の愚かさをばっさり。

真面目に偉人を語ろう(第163回)

何年も前の話。
水沢市を訪れたとき、郷土の偉人の生家や記念館に案内され、偉人の功績をたっぷり聞かされたことがある。
土地の人のほかに土地の偉人を語る人がいるはずもなく、私は「どうぞ徹底的に語って下さい。とことん聞きましょう。」という気持ちになった。
さらにさらに古い話。
岩手出身の先輩から、子ども同士の喧嘩に「俺の家の方がお前の家より東京に近いんだぞ!」という捨て台詞があると聞いて大笑いしたことがある。
しかし、その場は笑ったが、やがて少し悲しい気持ちになった。
農林水産業が馬鹿らしくてやっていられない産業になれば、地方に残っているのは自然しかない。しかし、自然を産業にするのはなかなか難しい。産業には永続性が求められるのであり、一瞬のブームでは産業にならないからだ。
さらに雇用の量が確保されなければ、若者は郷土を去るしか選択肢がない。
都会へ去った者たちと郷土を結びつける大きな一つの柱が偉人の存在だろう。郷土に誇りを持つには一番手っ取り早い。
子どもたちに繰り返し繰り返し郷土の偉人の話を植えつければよい。
かくして、「地方には偉人、都会には凡人」という一つの構図が出来上がるが、ここで留まっていては単なるバーチャル世界の話で終わってしまう。
だから私は、もっともっと真面目に郷土の偉人を語るべきだと思う。そして、大きな功績があるのに世間的にはほとんど無名、しかし、その土地では有名という偉人を発掘し記念館を建てるほどなら面白い。
ここまで来て、初めて観光資源たりうるだろう。
とは言うものの、果たしてわが郷土に埋もれている偉人なる方がいるやいなや。

委託と言う名のジレンマ(第162号)

自治体の委託事業というのは個人には出せない。
ところが、委託事業だからといって経済活動に対するものばかりではないのだ。
たとえば、民話や昔話を語り部たちに披露してもらうという委託事業もある。
民話や昔話の伝承者は減少の一途をたどり、すでに一人きりになってしまった市すらある。
すると一人になってしまった地域の語り部は、委託事業であるところの「民話語り部の会」や「民話祭り」などに参加できないのである。
こうした伝承文化は、ただでさえ語る機会が少ないので、僅かなチャンスを逃すことは致命的である。
そもそも民話や昔話の語りは、それを聞いてもらえなければ受け継ぐ者が生まれるはずがない。
かくて日本には、そうして失われる文化が死屍累々。