Monthly Archives: 10月 2008

思わぬところのジェンダー(第227回)

自動車免許証の書き換えの際に、小冊子「人にやさしい安全運転」(警察庁交通局監修、全日本交通安全協会発行)を受け取った。
この小冊子は、ページをめくるたびにカラフルな大きなカットが満載で視覚的に非常に分かりやすく作ってある。
小冊子の目的から言って、カットには自動車やバイクのものが多数あるのは当然のことである。
そして、それらカットのなかで男性と女性とが同じ車に乗っているものが13点。そのうち実に11点は男性が運転している。
これはなるほど一般的にそうかとも思う。家族で出かけるときはたいがい男性が運転しているように思える。
私が気になったのは、残り2点の女性が運転しているカットだ。
ひとつは母親と男の子。これはさすがに女性が運転せざるを得ない。ただ、もう一つのカットは運転が下手だと言う表現のためのものなのである。
そういう見方でこの教本を見ていくと、運転中に疲労しているときの状態という説明のカットも女性の絵柄、乱暴な運転の説明も女性の絵柄である。
もちろん、女性がちゃんと運転しているカットも、男性がひどい運転をしているカットもあるのだが、どうにも「運転は男性がするもの」「女性は運転が下手」という類型化された構図が気になって仕方がないのである。
ジェンダーフリーが社会全体で推進されている中にあっては、この教本は早晩改定されねばならないだろう。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか安全運転講習は終わってしまっていた。

生態系と人智(第226回)

初めて現地調査を行なってから一年以上たったので少しだけ書かせていただこうと思う。
ウミグモについてである。
ウミグモが越冬したという記事を見て、漁協組合長にお出しする葉書に何も書けなくなってしまった。
海を生計の場としている方々を思えば言葉を失うのみである。
寒さによる減少に望みを持っていただけに残念でならない。
私は、当初から天敵による駆除という考え方は無理だと思っていた。
駆除や防除のために導入した天敵がさらに悲惨な結果を招いた事例はいくらでもある。
ハブ退治に導入したジャワマングース、アフリカマイマイに対するヤマヒタチオビガイ、ボウフラ退治のカガヤシなどなど。
当時は良かれと思って導入したものが、効果をあげずに予想もつかぬ事態を招いてしまったり、効果はあげたものの導入時よりもひどい結果になってしまったりするのが生態系なのである。
広大無辺の自然の中では、人智など高が知れているとつくづく思わされる。
素人考えでは、ウミグモは船舶のバラスト水の中に紛れてやってきたのではないかと想像する。
では、それがどこの海からなのかは分からない。
越冬したので暖かい地域ではないと仮定すると、今度は熱にも強いという点でつじつまが合わない。
世界のどこにも事例がないとなれば、本当の生息地は火山の豊富な日本近海の「深海」ということなのかもしれない。
問題はこの後どういう推移をたどるのかである。
日本に侵入してきた外来生物のこれまでと現状から推察すれば、全国へ広がり世界に広がるのは時間の問題ということになってしまう。
この最悪の事態にならぬよう本格的な監視体制を続けることが第一の対策なのかもしれない。

食料自給率50%のもつ意味(第225回)

昨日の公明新聞に「食糧自給率50%の早期実現」を目指すと言う囲み記事があった。
これは、わが党が6月19日に発表した『食料自給率50プラン』(「しょくりょうじきゅうりつごーまるぷらん」と呼ぶ) に対応した記事であるが、自給率50%の達成は極めて重要なわが国固有の課題である。
その一方で、経済学や経済界の中には「競争力のある分野に力を注ぎ、競争力のない農林水産業は外国に任せればよい」と主張する方々も少なくない。
そしてその傍証として、強い競争力を保持し経済発展している国々がおしなべて自国の強い産業に特化している事例を掲げている。
なるほど、たとえばシンガポールの経済競争力がアジア第一位となったのも、農業を捨てITやバイオなど知識集約的産業分野の育成に重点を置いてきたことは事実のように思える。北欧諸国の成功も同様の要因かもしれない。
しかし、私がこの主張に賛成しかねるのは、わが国が人口1億人を超える大きな国であり、それらの小さな国と同じように産業特化してはいけないスケールなのではないかという思いがあるからである。
そもそも人口が1億人規模の国で、これほど食料自給率の低い国があるのか?これほど農林水産業分野の高齢化が進んでいる国があるのか?なぜそのような事態に陥ったのか?様々な疑問が沸き起こってくるのである。
わが国のように大きな人口規模の国の自給率が著しく低いとなれば、食料は当然のように輸入せざるを得ず、つまりは世界中から集めてくることになる。
世界には8億人が飢餓にさらされ、飢えによる死者が一日4万人と言われる現実の中で、この自給率の低さは許されるものではない。
様々な産業分野がある中で、農林水産業については他産業に比べて所得が増えなかった。
所得が増えない産業には後継者は育たない。
だから比較優位の産業で勝負しようという意見が出る。
至極自然の論理的思考である。世界がすべて経済原則で動いているのであれば。
しかし、こうした産業発展論の議論以前に、世界全体の食料危機にもっと思いを馳せねばならず、それが持つ重大な道義的意味やさらには政治的意味についても思いを馳せねばならないと思うのである。