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臨財債の見える化を

「日経グローカル」7月2日号に、大和総研の鈴木文彦主任研究員による『積立金は10年で倍増したが東京都以外は依然厳しい都道府県の財政』という非常に興味深い論考が掲載されています。
この論考を千葉県に当てはめるとどうなるのか試算してみました。
まず、貯金に相当する財政調整基金です。
2006年度のゼロ!に対して2016年度469億6416万円です。
財務省は、この部分を捉えて「国は赤字増なのに地方は黒字増」と批判しています。
しかし、その一方で借金である地方債残高は、2兆3103億円から3兆823億円へ。先ほどの黒字分を引くと、10年で7250億円も借金が増えているのです。
この間の歳入における地方債の構成比の平均値は14.6%で、このうち、本来県が発行してはならないはずの赤字県債(臨時財政対策債)が7割前後を占めます。
これは、国に代わって県が赤字を引き受けている構図にほかなりません。この現実を広く知っていただくべく臨財債の見える化を強力に推進しなければなりません。

実質単年度収支の赤字とは

今朝の読売新聞に『実質単年度収支連続赤字』という銚子市の決算見込みが報じられました。
この見出しは何を意味するのでしょうか。
地方公共団体の「収支」は一つではありません。
まず、単純に歳入から歳出を引いた『形式収支』です。形式収支から翌年度に繰越す財源を引くと『実質収支』です。
これが、まさに年度における収入と支出の差です。
記事には『17年度の実質収支から16年度の実質収支を引いた上で』と書かれていますが、これを『単年度収支』と言います。
これが黒字なら、その自治体の余剰が増えるか、あるいは過去からの赤字が減ることになります。
記事には『実質収支は2億3758億円の黒字だったが、これは貯金にあたる財政調整基金から3億円を繰り入れたため』とあります。
もしかしたら、単年度収支も赤字だったのかも知れません。単年度収支から財調の3億円を引いた『実質単年度収支』は赤字ですから、銚子市は連続で債務が増えたことを意味します。
銚子のように急激に人口が減少してきた自治体は何処も苦戦しています。格好のよい解決策は残念ながらありません。
財政立て直しは王道しかないのが現実です。地方の財政運営はますます難しくなる時代となりました。

公金運用の勝者と敗者

今朝の日経新聞に千葉県の公金運用益が低下との指摘がありました。
私は、これまでいかに運用益を上げるかという観点から、県に対していくつもの提案をしてきました。
たとえば「一括運用」など実施していただいたものもあれば、未実施のものもあります。
2015年6月議会で、私は大要以下の発言をしました。
『公金管理方針には不満な点があります。債券のところにこう書かれています。「金利変動による差損を回避するため満期又は期限まで持ち切ることを原則とする」。歳計現金の記述にも同じ文言があります。
しかし、今持っている債券よりももっと有利な債券が市場に出ることがあります。すると、手持ちの債券を売って有利な債券を買うというごく当然のことが行われてしかるべきだと思います。つまり、買いかえることによって、結果として県民の利益を増大させることができます。したがって、私は「満期又は期限まで持ち切る」ことにこだわる必要はないと考えます。
 このような債券の入れかえについて、どう考えておられるのかお尋ねいたします。』
私は、債券の買いかえなしにはなかなか運用益を上げることはできないと思います。
ただ、この運用競争をあおりすぎると、信用度の高い自治体が、別の自治体の債券で金利を稼ぐこともあり、「ふるさと納税」と同じ構図の自治体間競争になってしまいますので注意が必要です。

心配な国の経済財政議論

内閣府のHPにアップされている5月11日の「第7回経済財政諮問会議」議事要旨を読んでいると、本当に心配になります。
石原伸晃特命大臣が「地方財政改革について議論したい」と宣言し、高橋進議員がこう述べます。
「資料3-2をご覧いただきたい。(略)自治体の基金積立残高は21兆円に達している。(略)21兆円というのは新たな埋蔵金と言われかねない状況ではないか。(略)」
何だか、地方の基金積立が不正蓄財かのような発言です。
そこで「資料3-2」をみると、千葉県の基金積立額は2088億円だとされています。
この数字の根拠は何でしょうか。
実は、この金額には減債基金353億円が含まれています。減債基金というのは、たとえば30年後の満期が来たら一括で返さねばならない借金を確実に返すために、毎年30分の1ずつ積み立てておく基金です。これは言わば、国の指示で行っているもので、満期が近づけば増えていくのが当たり前の基金です。
さらに、使途が決まっている特定目的基金1263億円も含まれていますので、千葉県の実質的な基金積立額は472億円ということになります。何と2088億円の4分の1以下です。
他の自治体も同様だとすると、「21兆円に達している」不正蓄財どころか、「5兆円しかない」自転車操業に近いことになります。
そもそも地方財政は国の方針に大きく左右されます。
地方財政ショックと言われた平成16年度は、地方自治体は基金を取り崩すことで何とかやりくりしました。ちなみにこの時の千葉県の基金は完全に空っぽ・ゼロ円でした。
こんな綱渡りのような財政が良いはずがありません。再び起こるかもしれない地方財政ショックに備えるために、少しでも余裕のある時に基金を積み立てておこうと思うのはごく普通の感覚です。
そういうことには触れずに議論が進んでいることに、私は危うさを感じるのです。

あまりにアバウトな交付税論議

20170511地方財政記事5月10日の日経新聞に経済財政諮問会議の議論が報じられました。
『地方の基金 残高21兆円』『諮問会議 見直し要求へ』というものです。
国から地方交付税を受け取りながら地方自治体は基金をため込んでいるので交付税の見直しを求めるという内容です。
何とアバウトな議論なのかと思います。
年間で7900億円の増加ですから、自治体当り約4億円の増加です。
国は、いきなり地方交付税を削減した前例がありますので、日々の住民サービスを担っている自治体なら貯金しておかねばと思うのが普通です。
さらに、口蹄疫で畜産業が壊滅的打撃を受けたり、不況で地場産業が苦境に陥ったりという万一にも備えなければなりません。
その時に「まったく備えはありません」と国や県に要請すれば済むのでしょうか。
そんな首長は当選できません。住民の生活がかかっているのですから。
仮にも、交付税の見直しを言うのであれば、すべての自治体のおかれた状況を綿密に把握して欲しいものです。
また、「基金が増えたら交付金を減らす」という発想も問題です。それは無駄遣いへのインセンティブに他なりません。
諮問会議には、1800の自治体の目にたえうる議論をお願いいたします。