月別アーカイブ: 8月 2012

夏といえばファーブル?

8月尽にも関わらず、東漸寺の山ではアブラゼミの蝉しぐれが聞こえてきます。
私たちは夏になればセミが鳴くのは当たり前と思っていますが、たとえばヨーロッパのアルプス以北では蝉はほとんどいません。
ですから、イソップ物語の「アリとキリギリス」ももともとは「アリとセミ」であって、北ヨーロッパに伝わってからセミがキリギリスに変わったと聞いたことがあります。
私は小さいころもあまり昆虫採集をしませんでしたが、それでも夏は虫取りでしょう。そして、昆虫といえばファーブルです。
ファーブルが本格的に昆虫の観察を始めたのは33歳くらいからだそうです。そして、最初の昆虫記を書いたのがたしか56歳。私もその年が近くなってきました。
ファーブルの昆虫記は、実は単純な昆虫記ではなく、社会時評であったり政治批判であったり、そうした広範囲の分野についての意見具申の中に昆虫観察のことが書かれています。日本では、それを大杉栄らが訳しましたが、昆虫観察の部分を訳して子供向けになっているだけです。
あれほどまで徹底的に観察をしていた粘り強い実証学的科学者ですから、ファーブルが当時のフランス社会をどのように論じていたか、非常に興味があります。
そして同時に、ファーブルの眼に今の日本という国がどういう風に映るのか、ちょっと怖いようなでも聞いてみたい気がします。
「日本?ああ、まるで〇〇虫の社会に似ているね」そんな話になるのでしょうか?

油断なく逆進性対策を

今朝の新聞は、昨日の参議院での問責決議案の採決は「意味不明」「分かりにくい」という報道です。
しかしこれは、民主党内の「解散を先送りしたい」「解散は絶対に嫌や」という執行部内の思惑闘争であり、むしろ非常にわかりやすいとさえ思います。「分かりにくい」のは解散の時期であって、これが分かりにくいのはごくごく普通のことです。
さて、「社会保障と税の一体改革」における3党合意に基づいて法案も成立したうえでの問責決議です。新聞によっては「(合意は)事実上の反故」という書き方もまああるでしょう。
しかし、合意段階でまだ法案成立前だというならともかく、仮にも法案が成立している段階で「反故」はないのではないでしょうか?
税金を上げたくないという誰しも共通の思いからすれば、「反故」になってくれた方が有難いという気持ちはわかります。しかし、「願望」によって「法案成立」の事実を無視してはいけないと思います。
今回の問責決議案が参議院を通ったことから、あたかも消費税そのものが実現しないのではないかという受け止め方が広まると油断を生みかねません。
各報道が「消費税増税は反故」といったようなニュアンスを広めてしまうことを計算に入れて、むしろ一層気を引き締めて「消費税の逆進性対策」に取り組む姿勢を強く打ち出すべきです。こんなことで軽減税率などの様々な対応策が崩されてはたまりません。
常に国民の側に立つという言葉の重みを、今こそ私たちはかみしめるべきだと思うのです。

ストロー効果仮説

ある県民の方から「アクアラインで通勤しているが800円で助かっている」という声をいただきました。
『ストロー効果(ストローこうか)』という言葉があります。ウィキペディアによれば、「交通網の開通により都市が発展したり衰退したりすることを指す」とあります。
アクラライン限らず、たとえば本州と四国を結ぶ橋梁ができたり、都市と都市を結ぶ鉄道や道路が開通すると多かれ少なかれ「ストロー効果」が発生することと思います。
実際、秋田新幹線の開通により仙台市が栄え秋田市が衰退した、特急が走るようになって長崎市民は福岡市にショッピングに出かけてしまうという話をよく聞きます。
では、A市とB市とが交通網によって結ばれたとき、どういう条件によってどちらが吸われえる側と吸う側に分かれるのでしょうか。
A市とB市のどちらが相対的に魅力的かというのはもちろん第一の条件でしょう。アクアラインも木更津にアウトレットパークができたことは非常に大きかったと思います。
仮に、木更津が相対的に魅力あるショッピングモールを持っているとすれば木更津が吸う側ということになります。
その一方で、本来3000円だったアクアラインの普通車通行料金は現在800円です。これが本来の料金に戻れば、川崎から木更津へという流れは減少することは容易に推察されます。
つまり、A市とB市を結ぶ交通料金がある程度以下ならば相対的に魅力のある側へ移動する、交通料金がある程度以上高いと、相対的に高いと感じない住民が多い側がより移動するという仮説が成り立ちます。
そういう視点で見ると、単純に魅力があるから吸う側になるとも限らず、実は移動困難者が多いから結果的に吸う側になっていたということも考えられそうです。
アクアラインがそういう構図ではないのでしょうが、全国の地方都市を見渡せば、実は移動困難だからそこそこ栄えているという街がありそうな気がします。
ストロー効果も研究していくと相当奥が深そうです。こういう研究をしている人がいるものでしょうか?

少しさびしい夏

午後に東京で会議があり、夜は千葉市で会議となるととても家に帰ることはできません。結局、途中下車して総武線沿線のブックオフに寄り、プッチーニのオペラのアリア集を買ったのでした。テノールのホセ・クーラ、フィルハーモニア管弦楽団のCD、950円なりです。
私はオペラが好きです。(アリアは女性の歌手の方が好きですが・・・)
そういうと高尚な趣味のように思えますが、実はオペラというものを劇場で見たことがありません。
オペラはたいがい高額ですし、仮に席を確保したとしても、その日に何が起こるかわかりませんので、私の仕事からいっても観に行ける可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
ですから、これを趣味というのはおこがましいのですが、私のオペラは観劇ではなくCDによる聴劇です。
もちろん、外国語ですからわかりません。しかし、よくしたものでアリアの翻訳などが出ていますので、そのコピーを見ながら聴くというわけです。
難点は、長時間にわたるので夜中の電話がないと思われる時間帯にならないと聞けないことと寝不足です。
今日、買ってきたアリア集などは、ストーリーを追いかけることがないので翻訳を見ることもなく気軽に聞けます。
左脳ではなく、あまり使わない右脳の方を働かせているのだくらいの気持ちで聞けばよいように思います。
お時間のある方は、ぜひ一度聴くオペラを楽しんでみてください。耳からだけでも意外なほど楽しめるものです。

びっくりする絵本

H.A.レイというドイツ人の絵本『星座を見つけよう』を読んでいます。
絵本なのに難しい。もちろん、単純なむずかしさではありません。50を過ぎた中年男性には難しいのです。
子どもの時にこの本と出会っていればどれほど幸せだったろうと思わせる絵本です。
実際、初版が1969年4月5日ですから、私が小学6年になったばかりの時に発刊されています。そして、私がいま手にしているのが第82刷ですからびっくりする絵本です。
さて、私たちは『星』を見ることが本当になくなりました。あまりにも明るすぎるのです。
私は、今でも高校2年の時の田沢湖畔の星の多さをありありと思い出せます。また、その翌日には青森でジャコビニ彗星の天体ショーを見ていました。
以来、あれほど素晴らしい星空を今の今まで見たことがありません。
中学時代から山に登っていましたし、金もないので山でごろ寝をしながら日本アルプスはじめ日本全国の夜空を見上げていましたが、北アルプスでさえも意外に明るいのです。いささかがっかりしながら天の川を眺めていました。(星空の美しい冬は、ほとんど吹雪ですので、さすがに星空を見る余裕はありません。生きるのが精いっぱいで)
しかし、今となってみれば、そんな思いを抱いたことも贅沢でした。
自然に対する恐れや驚く心を現代人は忘れがちだったのかもしれません。もう一度自然を見つめなおす心を取り戻すときなのかもしれません。
※写真は五所川原の立佞武多の一部です。