Monthly Archives: 7月 2008

騙すべき子どもすらいない(第220回)

地球丸々ひとつの国であり、世界政府がきっちり機能していて強権を発動できるのであれば、原油など資源で利益をあげている企業に特別に税を課して原油高などで苦しんでいる産業や人々に所得移転させることはできるかも知れない。
しかし、現実にはエネルギー資源によって利益をあげている国と利益を奪われている国との間には明確なる国境線があり、それぞれが独立国であり所得移転などできない相談だ。
こういうときにわれわれが常に使ってきた手法は時間差を使った解決策である。
奪われた利益を返してもらえないのなら、将来の子孫から取り上げればよいという政策、すなわち公債発行である。
公債の償還期間もいつの間にか延びに延び、それで得た金を使う者と返すものが完全に異なってしまった。
子供だましのような手法であるが、その騙す子どもはまだ存在もしていない。
もうすでに子どもも騙せないほどの巨額な金額になっているのに。
公債発行によって苦境を逃れる、あるいは減税を受けるということは、言うまでもなく苦しみの先送りである。
苦しみの先送りは、「楽」をした者と先送りされた「苦」を受ける者が同一人物なら自然である。
ところが、そうではなく自分たちが「苦」を逃れるために、他人に「苦」を押し付けるという行為は人間としてなかなか決断できるものではない。
ましてや逃れようと思っている「苦」の原因が、それを押し付けられる者の責任でも何でもないのであればなおさらだ。
したがって、この重大な決断は相当の覚悟を持って行なう必要がある。
「苦」をおしつけられる人たちへ本当に申し訳ないという気持があって当然だ。
この覚悟や気持ちがなければ財政再建など未来永劫にできるはずがない。
たとえ奇跡が起こって財政再建なったとしても、すぐに放漫財政に戻るだけの話である。
いつの時代であれ課題はある。課題のない社会など仮想社会である。
子孫には子孫の課題が間違いなくある。
そしてその時代時代の課題解決はその時代時代の子孫が子孫の手で行なうほかない。
そのうえに、仮にも申し訳ないという気持のない先祖 から借金を押し付けられるのでは立つ瀬がない。
せめて公債発行のたびに痛みを感じる人間でありたい。

高齢者福祉 本音と建前(第219回)

今日、町田市の事業仕分けに参加させていただきビックリしたことがあった。
『民設既設高齢者福祉施設整備補助事業』において町田市と東京都は1床当たり1000万円の補助を出していると言うのである。
私の感覚ではせいぜい200万円程度というものだったので、そのべらぼうな気前良さに驚いたのである。
同時に、それほど市民や都民の税金をつぎ込んだとしても特別養護老人ホームは、誰もが全国どこにでも入所を申し込めるのだから、町田市民や東京都民の税金がまるきり無駄になりははしないかと思ったのである。
さらに担当者の同事業の説明によれば、現在の約1000名の入所待機者(要介護度3以上)を100名に減らすために、2011年度までに400床の特養を開設する計画だという。つまり毎年10億円もの補助金を出し続けるというわけである。
もしこれだけの税金を使って町田市民が入所できないとなれば、これは大問題だろう。
ところが、入所者のほぼ100%がちゃんと町田市民だというのである。
建前では誰もが全国どこの特養にも入所できるとしながら、何のことはない町田市民以外は入所させないという暗黙の了解があるということである。
はたしてこれはどこまで許される行為なのだろうか?
町田市がそういう行為を行なっているとすれば、松戸市もほかの大多数の市も同様のことをやっているかもしれない。ただ単に私が知らないだけの話なのかもしれない。
市民感情からすれば、自分たちの税金が使われるのだから自分たちのためになる施策であるべきというのは批判されるような考え方ではない。至極全うな理屈である。
しかし、この論理を突き詰めると財政力の豊かな地域ほど施設が充実し、財政力がそれなりの地域はそれなりの施設で我慢するほかなくなる。
結局、経済力の論理であり、誰もが全国どこでも入所できるという話はフィクションということになる。
どうもいま一つしっくりいかない話ではある。
皆さんはどう考えますか?

道州制はハッピーか?(第218回)

道州制の話題が燻ぶっている。
そして、どの県とどの県が一緒になるかという案も公表された。
この都道府県の組み合わせ一つを見ても道州制が成功するはずがないと私は思う。
大体、弱いところと弱いところが一緒になって強くなるはずがない。
「アイルランドが成功したように、道州制にして法人税を下げれば企業が世界中から来てくれる。」と道州制推進論者は言う。
しかし、一つの道州が法人税を下げれば、他の道州も当然追随するのだから単なる法人税値下げ競争になるだけの話であろう。
「いま経済的に成功しているのは、みな小さな国だ。日本も1億数千万人の国を分割して小さなサイズの国、すなわち道州へ移行すべきだ。」と道州制推進論者は言う。
しかし、北欧諸国やシンガポールは国が小さいからうまく行っているのではない。
国が小さいから産業を特化せざるを得ず、たとえば弱い農業分野を切り捨てて工業に特化する、金融に特化するなどの得意分野に特化するという行為をなしえたからこそ成功しているのである。
わが国で議論されている道州制の分割案は、産業を特化するという観点でなされたものはなく、ただ地理的に東北だ、関東だ、中部だと機械的に分けただけのように見える。
要するに産業戦略的な視点が感じられないのである。
さらに言えば、道州制に移行すれば、みな勝ち組になれるという愚かな思い込みが非常に心配だ。
つまり、われわれは道州制になった場合、何の理由もなくその全ての州がうまくやって行けるという錯覚に陥ってやしないか。
残念ながら、いまの日本を見渡してもうまく行っている地域とうまく行っていない地域の差が歴然としている。
したがって、もし道州制に移行したとすれば、現在以上に地域間格差が生じると考えるべきである。
中には失敗する道州も出てくるだろう。そのときその道州を助けようという機運は少なくとも現在よりは盛り上がらないだろう。
また、何よりも他の道州から助けてもらうことの屈辱感の問題をどう処理するのか。助ける側の州民と助けられる側の州民に生じる優越感と劣等感。
考えれば考えるほど厄介な問題が出てくるのである。
だから道州制がハッピーか?と問われれば、私にはそうは思えないのである。

施策をやめるとき(第217回)

原油価格高騰は止まるところを知らない。
その本当の原因はよく分からないが、要するにファンドの投機でもあり実需でもあり産油国の生産調整でもあるということなのだろう。
さて、そうしたことから一昨日、漁業者が一斉休漁をした。また言うまでもなくかねてより運送業者は経営難にあえいでいる。
私も政治家の一人として何とかしなければならないと素直に思う。いてもたってもいられない気持ちになる。
私ですらそうなのだから、支持率が低迷している総理も同じ思いであるはずだ。
もし仮に、これほど巨額の赤字を抱えておらず、財政に十分な余裕があれば、とっくの昔に強力な財政出動策を講じていることだろう。
つまり、現時点でもし赤字財政問題が存在していなければ、原油価格高騰に対する国民生活防衛策によって再び財政は赤字となる。
この種の政策に反対する政党は存在し得ない。
このように、今回のような原油高騰がなかったとしても、将来必ずおこる景気後退時には国民は財政出動を要求し、政府は実行するものなのである。
このことは今さら言うまでもなく自明のことであり、民主主義国家の宿命とも言える。
中国のようにこれから急速に経済発展するであろう国がいくつも現れ始めた。
それらの国の人たちはまだモーターリゼーションの洗礼を受けていない。
それらの国においても人類最大のベストセラー商品である自動車はいずれ爆発的に売れ、現在の数十倍の人が自動車を持つことになろう。
そうなればガソリン消費量がどれほど伸びるか想像もつかない。
原油高騰の主要因の一つである実需の驚異的伸びは時間の問題といってよい。
ましてや、ファンドが手を引いたとしても、原油産出コストは時代を経れば経るほどかさむ。
実需と産出コストの二つのという要因だけを見ても、長期的トレンドとしての原油価格下落はあまり期待できない。
政策論として導き出される結論は、原油価格高騰から国民生活を守る施策を講じたとき、最も問題になるのはそれをいつやめるかであろう。
財政出動の前にサンセット方式のように終期をビルト・インさせておかないと、今度は施策を打ち切ったときに国民からさらなる批判を受けかねない。

頑張ろう!神戸の友人知人たち(第216回)

神戸の同窓生の話を聞くと生活の大変さがよく分かる。
クリーニング店を廃業したとか塾をやめざるを得なかったとか食堂をやりながら別のアルバイトをしているなどなど皆苦闘している。
我が家もちょうど子どもらの教育費がかさむ時期をむかえており、決して他人事ではないが、神戸にはまた別の要因がある。
そう阪神大震災の後遺症である。
関東大震災以後、都心の人口が郊外へ移転していったことは明白な事実である。
同じように神戸においても都心部の人口減は避けられないことだった。
したがって、震災後の落ち着きからもう一度かつてのような商売を立ち上げようとした人たちにとって人口減からの需要減がじわじわと襲ってきているのだと思う。
問題はこの先どういうことになるのか、であろう。
阪急グループの創業者、小林一三氏のような時代を切り開く人物が出てくるものと私は信じる。
郊外へ流れた人口を逆手にとって、私鉄を走らせターミナルデパートを生み出した。
そういう人物を生み出していくのが時代のダイナミズムだと確信している。