月別アーカイブ: 8月 2010

あるようでないようで・・・港湾戦略(第397回)

新聞整理で7月17日の日経を見ていたら『京浜、阪神を戦略港湾に』という見出しの記事があった。
記事によると、「国交省は十六日、アジアのハブ(拠点)港を目指し集中的に整備する『国際コンテナ戦略港湾』に京浜港、と阪神港の二港を指定する方針を固めた。」というのである。
たしか2004年に国交省は『スーパー中枢港湾』を指定したはずだが、これと戦略港湾とはどう違うのか?
政権が変わったから名称を変えただけなのか?
そこのところを掘り下げた報道が欲しいものである。
日本地図を逆さに見ると日本海と言うのはほとんど内海のように大陸と列島にきっちり囲まれているので驚かされる。
この戦略港湾なるものが、アジアのハブを目指そうと言うのなら、何で日本海側の港を指定しないのか。
これからは中国(香港も含め)だ、台湾だ、韓国だ、インドネシアなど東南アジアだ、というのであれば、もう一港は福岡港の指定がしかるべきだろうし、どうしても京浜と阪神が欠かせないなら三港指定すればよいではないか。
翌年度の予算取りのために打ち上げただけというのことではないとは思いたいが・・・。

個室・多床室論争(第396回)

特別養護老人ホームの在り方についての議論がある。
国が進める「個室ユニット化」が本当に良いのか?という議論である。
介護保険法第1条(目的)には『(略)要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、(略)』とある。
このなかのピンクで示した『尊厳を保持し』が重要である。
多床室で尊厳を保持できるのか?という議論が一方ではある。
限られた予算の中でより多くの人が利用できるようにするためには多床室が必要だという議論が一方ではある。
「では、あなたは個室を選ぶか多床室を選ぶか?」「いや、私自身は個室だ。」「そうでしょう。おそらくほとんどの人がそう思っている。それでも多床室をつくるとするとそれは間違いなく空き部屋となり無駄になる」というやり取りもある。
つまり、自分は個室を選択するのに他人は個室でなくてよいというのはおかしいというわけだ。
これに伴い、ある社会福祉法人は多床室を順次個室化している。
ある社会福祉法人は逆に多床室を増やしたりしている。
さて、私は思う。
一般に、どんな政策も100%の人が賛成することはあり得ない。どのような政策であれ必ず反対はある。
したがって、条例の書き込みではやはり個室も多床室も両法作れるようにすべきだ。
何も選択肢を減らす必要はないのではないか?。
そのうえで、どちらを選ぶかは設置法人に任せるしかないのではないか?
個人の尊厳の具体化まで公的機関が踏み込むとロクなことはないように思うのである。

決算情報の謎解き

7月31日の朝刊は次のような記事を一斉に報じた。
たとえば千葉日報の見出し。
「県09年度決算  税収大幅減も31億黒字化  借金、1人当たり1万7000円増」
たとえば日経新聞の見出し。
「一般会計決算  県、6年連続黒字  昨年度見通し 県債発行24%増」
あくまで見出しだけの情報ではあるが、黒字なのに借金増という腑に落ちない話である。
一方、私のところに県からFAXが届いた。
そのFAXは、重要と思われる部分は太黒文字となっているので、補足しながらその部分を抜き書きしてみる。
○歳入は1兆5876億円、歳出は1兆5802億円で、決算規模は5.3%拡大した。
○県税収入は13.1%減少したが、その一方で臨時財政対策債を含む地方交付税等は41.7%増加した。
○実質収支は31億円の黒字となった。
以上は、すべて同じ千葉県の2009年度決算についての情報である。
そこで県からのFAXをもとに、自治体独特の会計について謎解きをしたい。
第一に、収支が合わない問題である。
歳入1兆5876億円から歳出1兆5802億円を差し引けば74億円であり、31億円ではないではないかという疑問がわく。
これは、(歳入?歳出)を形式収支と言い、ここから翌年度へ財源として繰り越す金額を差し引くと実質収支になるためである。
逆から見ると、74億円?31億円=43億円が翌年度へ繰り越されたことが読み取れる。
第二に、なぜ黒字確保ができたかである。
これについては県税収入の大幅な落ち込み以上に地方交付税などが増えたからだと書かれている。
第三に、新聞が報じる借金増は、県のFAXのどこに書かれているのか?である。
二番目の○のところに臨時財政対策債という見なれない言葉がある。これが借金の正体だ。
この二番目の○を素直に読めば、税収は減ったが色々あって歳入は増えた(31億円の黒字)と読める。
実はこれこそが問題の本質なのである。
一般に、借金は「負債」であり、マイナスのものという感覚がある。
ところが自治体においては、県債や市債という借金は「収入」にカウントされるのである。
したがって、千葉県からのFAXはこういうことを言っているのである。
『税収は大幅に落ち込んだが、借金が増えて収入が増えて黒字になりました』
要するに、県債=収入という役所独特の感覚がないと実は読み取れない内容の話だったのである。