日別アーカイブ: 2011年1月2日

トレーサビリティーの落とし穴(第474回)

中国製冷凍餃子の問題がわが千葉県で発生する以前から公明党千葉県本部は「食の安全安心」に取り組んできた。
議会で議論することは当然として、県下全域での意識調査を実施することにより行政へ数々の提案もしてきた。
そんな折、1月1日の日本農業新聞の『全食品にトレサ導入』との見出しが目に飛び込んできた。
記事によれば「民主党が全食品にトレーサビリティー(生産・流通履歴を追跡する仕組み)を導入する法案を今通常国会に提出する方向で検討に入った」というのである。
私はこれが善政か?と問われたときに単純に「イエス」とは言えないのである。
第一の疑問は、コストの問題である。
一体どれほどのコストがかかるのか?
誰がそれを負担するのか?
もし生産者が負担するとなると、外国産の安価な食品との競争では著しく不利になるだろう。
外国からの輸入に頼っているわが国の食糧事情の中で、外国にも守らせるのだろうか?
その場合、誰がそれを確認するのだろう?
税金を使って世界各地へ係官を派遣して、トレーサビリティーがちゃんと守られているか確認しに行くのだろうか?
外国に人を駐在させるのだろうか?
そもそも国内でもちゃんと守られているのかどう担保するのだろうか?
率直に言って、こういうおカネを使う話と言うのは、官僚が予算を増やそうとしている可能性が高い。
人員確保のために予算と仕事を無理につくっているか、この業務をさせることによって独立行政法人など天下り先の確保を考えていることもあり得る。
もしかしたら1995年に不要となった食糧管理体制関連部署に、未だ相当な余剰人員がいるのかもしれないという類推も生む。
第二の疑問は、食の安全安心との関係についてである。
われわれが求めるのは、あくまでも安全安心な食品なのである。
出来れば安価に入手したいということが目的なのであって、トレーサビリティーをきっちり行うことが目的なのではない。
たとえば、かつてダイオキシン問題で所沢産の農産物がまったく売れなくなったことがあった。
仮に、トレーサビリティーが完璧に実施されていたとすれば、ダイオキシンとは無関係で安全な農産物であっても所沢産だというだけで誰も買わなくなっただろう。
同様のことは、実際に宮崎県での口蹄疫問題で起こっている。
つまりトレーサビリティーには風評被害を拡大する危険性もある。
逆に、トレーサビリティーの情報はどの農地でつくられたかまでであって、その農地周辺の地下水汚染などは分からない。
このように、トレーサビリティー導入と安全性は実はイコールではない。
以上のようなことが、どう解決されるかをしっかりと監視しなければならない。
特におカネを使う事業については目を凝らして見る必要がある。
それでなくとも政府・民主党による歳入金額の見込み違い、マニフェストの見込み違いはもうウンザリなのだから。