日別アーカイブ: 2011年11月13日

少しマニアックな財政の話

平成21年12月議会において、市町村財政の透明度を高めるために、各種指標等を充実させた千葉県独自の決算カードの作成と公表を訴えました。
その結果、現在では総務省報告用とは別に、独自カードを千葉県のホームページで公表しています。
さて、総務省仕様の決算カードを見ると、『経常収支比率』について二つの数値が掲載されています。
たとえば、平成21年度決算状況の松戸市のページを見ると『93.7%』と『99.7%』という数字です。
そして、99.7という高い数値の方には、(減収補填債(特別分)及び臨時財政対策債除く)と書かれています。
一方、千葉県独自の決算カードの松戸市の項を見ると、経常収支比率は『93.7%』という低い方の数字のみしか書かれていません。
なぜ、総務省仕様が二つ掲載されていて、千葉県仕様は一つだけ、それも低い方のみを掲載するのでしょうか?
私はここに地方財政における、国・総務省と地方自治体・千葉県とのイデオロギーの対立をひしひしと感じるのです。
もしかしたら私だけの勝手な思い込みかもしれません。
その可能性も無きにしも非ずなので、表題は『少しマニアックな』としています。

さて、以下わかりやすく説明します。わかりやすくするために若干正確性を欠くことをお許しください。
経常収支比率は、市に通常入ってくる収入のうち、市としてどうしても必要な経常経費は何%あるのかという数値です。
松戸市では、税収や地方交付税などの収入のうち、99.7%が経常経費に使われているのですから、新たな市民サービスを増やせる予算は0.3%という微々たるものということです。
ところが、国が「松戸市さんにあとからお返ししますよ」という『臨時財政対策債』の補てん金があるのです。
もしそれが、ちゃんと補填されたならば、経常収支比率は、6%低くなって93.7%という数字になりますよ、ということなのです。
千葉県としては、「約束なのだから間違いなく国はちゃんと臨時財政対策債の分は払ってくれる」という立場ですから『93.7%』としか書きません。間違っても国が約束を反故にした時の数値『99.7%』など書かないのです。
ところが国は、わざわざ二つ書いています。なぜ二つの数字を書いているのでしょうか?
もしかしたら、心のどこかに「約束を破ってもいいかな」という発想がないかどうか?非常に気になります。
そういう背景を考えていくと、「これはまさに地方財政における地方と国のイデオロギーのぶつかり合いだ」と私には思えてしまうのです。
したがって、千葉県独自の決算カードに、私は二つの数値を乗せるべきだとは決して言いません。たとえ少しばかり不親切であったとしても一つで十分だし、経常収支比率はただ一つしかないと言い切りたいと思っています。

東日本大震災の建物被害について

名古屋大学大学院環境学研究科減災連携研究センター教授の勅使川原正臣先生のお話を伺いました。勅使川原先生は建築構造学の専門家です。
私は、まるで門外漢ですが、東日本大震災でRC造建築物がどういう被害を受けたのか非常にわかりやすく教えていただきました。
たとえば、玄関ドアの脇の壁が損傷している例が数多くみられます。その理由はなんなのか?
あるいは、外側の壁が損傷している場合、なぜ損傷している部分と損傷していない部分があるのか?といったことです。
被害には5つの特徴があるとのことです。
第一に、旧基準による設計の建物の被害は主に柱のせん断破壊であること。
第二に、公共建築物に多かったのは短柱のせん断破壊による軸力支持能力の喪失であること。
第三に、新耐震基準に基づき設計されたRC建築物には構造被害がほとんどみられないこと。
第四に、耐震補強された建築物の構造被害が一部にみられたこと。
第五に、非構造物の損傷が比較的多くみられたこと。
写真を見ると、素人目にはただ壊れているなと思うだけなのですが、解説していただくと、損傷している部分には損傷するべき理由がちゃんとあることがよくわかります。
しかし、お話を伺っていてやはり非常に難しい点が二つあることがわかりました。
一つは上記の第四のように、すでに建築された構造物に対する耐震補強の限界です。
これはどこまで頑丈にすればよいのか、どこまでコストをかければよいのかという、誰にも明確に答えを示せない難問に行き当たります。
もう一つは、建物を頑丈にすればするほど津波の圧力をうまく逃がしてやることが難しいという、耐震と津波対応の兼ね合いの難しさです。
いずれもどこかである一定の線を引いて妥協せざるをえません。してみると第三にあるようにとりあえず現時点では新耐震基準での不都合はなさそうという当たり前の結論に落ち着きます。