名古屋大学大学院環境学研究科減災連携研究センター教授の勅使川原正臣先生のお話を伺いました。勅使川原先生は建築構造学の専門家です。
私は、まるで門外漢ですが、東日本大震災でRC造建築物がどういう被害を受けたのか非常にわかりやすく教えていただきました。
たとえば、玄関ドアの脇の壁が損傷している例が数多くみられます。その理由はなんなのか?
あるいは、外側の壁が損傷している場合、なぜ損傷している部分と損傷していない部分があるのか?といったことです。
被害には5つの特徴があるとのことです。
第一に、旧基準による設計の建物の被害は主に柱のせん断破壊であること。
第二に、公共建築物に多かったのは短柱のせん断破壊による軸力支持能力の喪失であること。
第三に、新耐震基準に基づき設計されたRC建築物には構造被害がほとんどみられないこと。
第四に、耐震補強された建築物の構造被害が一部にみられたこと。
第五に、非構造物の損傷が比較的多くみられたこと。
写真を見ると、素人目にはただ壊れているなと思うだけなのですが、解説していただくと、損傷している部分には損傷するべき理由がちゃんとあることがよくわかります。
しかし、お話を伺っていてやはり非常に難しい点が二つあることがわかりました。
一つは上記の第四のように、すでに建築された構造物に対する耐震補強の限界です。
これはどこまで頑丈にすればよいのか、どこまでコストをかければよいのかという、誰にも明確に答えを示せない難問に行き当たります。
もう一つは、建物を頑丈にすればするほど津波の圧力をうまく逃がしてやることが難しいという、耐震と津波対応の兼ね合いの難しさです。
いずれもどこかである一定の線を引いて妥協せざるをえません。してみると第三にあるようにとりあえず現時点では新耐震基準での不都合はなさそうという当たり前の結論に落ち着きます。
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