日別アーカイブ: 2012年6月14日

「なめらかな滑り」なのか?「すべり残し」なのか?

いささか古い話ですが、昨年12月10日の公明新聞に地震予知連会長の島崎邦彦先生のインタビュー記事がありました。
私は、その日のうちに切り抜いて、今でも政治学習会用のバッグに入れて持ち歩いています。
実は、その中に非常に印象深い発言があるのです。
『北米・太平洋の両プレートの境界が広範囲にわたって最大50メートルも動きましたが、地震学者は、そうしたことが起こるとは考えていませんでした。』
『日本海溝付近のプレート境界の大きな滑りは「起こらない」という大前提が崩れてしまった現実を直視し、今後、長期評価の改善を図る必要があります。』
中央防災会議の南海トラフのその後の評価が予想できるような島崎先生のご発言です。
さて、本来起こるべきタイミングに海溝型の地震が起こらない場合、どういうことが考えられるでしょうか?
希望的な理由を考えれば、地震のエネルギーが発散してしまうような『なめらかな滑り』が起こったという見方です。
『なめらかな滑り』によって小さな地震が発生してエネルギーが使われてしまった。したがって、マグニチュード9のような巨大地震はないという考え方になります。
悪い方の理由は、『すべり残し』があったという見方です。
本来、滑るべき部分が全部滑ってなくて、すべり残しが生じる。そのすべり残しが少しずつ少しずつ溜まっていって、やがて一気に滑って巨大な地震になるという考え方。いわゆる『スーパーサイクル説』です。
頻繁に地震が起こっていた東北沖では、従来は巨大地震は起こらないと考えられていました。それが起こってしまったという現実は、もしかしたらスーパーサイクル説が立証されたのかもしれません。
私たちの千葉県沖の地震も本来起こるべきタイミングで起こっていないといわれています。また、東海地震も本来起こるべきタイミングで起こっていません。
これが『なめらかな滑り』によってエネルギーが使われてしまったものなのか、はたまた『すべり残し』によってエネルギーが溜まり続けているものなのかでは、まさに天地雲泥の差があります。
政治家の仕事はあくまで防災減災に努めることであり、原因の究明については地震学者の方々にお願いするしかありません。

道州制議論は精緻に周到に

今日の夕刊各紙は、『スペイン国債3段階下げ』と報じています。
読売新聞には『ムーディーズ・インベスターズ・サービスは13日、スペインの長期国債格付けを21段階中、上から7番目の「A3」から、10番目の「Baa3」に3段階引き下げたと発表した』と書かれています。
私は、道州制は基本的に賛成です。それは地方自治が進むという観点、それに伴って地方議員も含め地方の側がより自立するだろうという観点から賛成なのです。道州制が実現したからと言って、それで「良し」となどと単純に考えてはいません。
経済や財政と言う切り口で見た道州制の行き着く先はどういう状態でしょうか?
通貨発行権は国でしょう。税制は道州に任せてもらえるのでしょうか?
仮に、税制や産業政策など広範囲な分野で道州の独自性が発揮できるとすると、究極の形は現在のヨーロッパをイメージすればよいのではないでしょうか?
税制も各国が発行する債券の金利もバラバラです。ただ通貨だけは同一です。
当然、経済的にうまくいく道州もあれば、現在のギリシアやスペインやイタリアのようにあまりうまくいかない道州もあります。
国や中央銀行からある程度の財政規律を求められた場合には、財政がうまくいっていない道州はそれなりの苦労を強いられます。
十数年にわたってプライマリー・バランスの黒字を強いられたイタリアと同じような経験をすることでしょう。
そうした苦労、あるいは他の道州よりも高い税率を決めざるを得なくなったとき、その道州民はヨーロッパよりもはるかに容易に転出することができます。
つまり、うまくいかなかった道州はますますうまくいかなくなり衰退していくことになります。
「国としてうまくいかないから道州にする」まさかこのようなナイーブな考えはないとは思いますが、道州を成功させるためにはマーケットの動きをも見通した精緻で周到な読みと細心の心配りが必要だと思うのです。

三番瀬の沈下

3・11以降、三番瀬が沈下しているという話を聞いていました。
地震の現地調査や放射性物質の測定などで3回訪れました。
このほど千葉県環境生活部自然保護課の調査結果がまとまりました。
平成21年2~3月の調査と比べて、三番瀬の水深は平均で27センチメートル深くなり、水深0メートルより浅い部分の面積は46%に縮小していました。
2.69平方キロメートルだった面積が1.23平方キロメートルに半減ですから、明らかに東日本大震災の影響です。
国土地理院は過去100年の日本列島の上下変動を調べ、その変動図をホームページ上で公表しています。
それによると基本的に日本列島のほとんどの部分が低くなっています。
そして、それが特に顕著なのが、北海道の南東部、仙台周辺、首都圏、中京圏、関西圏、福岡周辺などいわゆる日本の中枢部は全部が沈下している地域です。
その一方で、隆起しているのが中部山岳の南部周辺や九州の東半分など人口稠密ではない地域ばかりです。
北海道を除けば、人為的な沈降が想像されます。
また、日本列島は両サイドからプレートから圧力を受けているので引きずられていると言うことがあるのかもしれません。
ここ10年ほどは、GPSの発達により、一層詳しい状況が分かってくることでしょう。
あまりうれしくない情報もどんどん流れ込んでくる時代と言えるかもしれません。