月別アーカイブ: 1月 2011

オバマ大統領の東京演説(第483回)

2009年11月14日にオバマ大統領がサントリーホールで行った演説を読み返している。
問題の個所は、
『The United States will also be engaging with the Trans-Pacific Partneship countries with the goal of shaping a regional agreement that will have broad-based membership and the hight standards worthy of a 21st century trade agreement.』
というくだりである。
朝日新聞の訳では
『米国はまた「環太平洋パートナーシップ」諸国とも、21世紀の貿易協定にふさわしい、広範な参加国と高い水準を備えた地域的合意を作るという目的で関与していくだろう。』となっている。
『the hight standards worthy of a 21st century trade agreement』『will also be engaging』するというのであるが、ニュアンスがまるで分からない。
学生時代に英語を勉強してこなかったことが実にもどかしい。
昨日、菅第2次改造内閣が発足した。
内閣の支持率が危機的に急落している状況で、どうしたら支持率を上げることが出来るか一番考え抜いているのが菅総理自身であろう。
したがって、菅氏の行動、言動のすべてが支持率向上のためのものと考えてよい。
内閣改造も当然これが支持率を上げるためのベストメンバーと考え抜いた結果であろう。
そして、今回の改造内閣は『TPP参加』をめざす布陣だという。
一方のオバマ大統領は、すでに2009年の段階で広範な参加国と21世紀の貿易協定に相応しい高い水準の合意に関与すると演説している。
ここで言う『21世紀の貿易協定に相応しい高い水準』とは具体的にはどう考えても関税撤廃 である。
この演説は、オバマ大統領が初のアジア歴訪の際に、はじめて立ち寄ったわが国で行われた。
オバマ大統領には、日本に対する熱い期待はあっただろう。と同時に、日本が乗ってくる確率はそれほど高くないと見ていたのではないか。
では実際にはどうだったか?
この1年間において、参加不参加のメリット・デメリットを厳密に検証した節はまるで見当たらない。
したがって、わが国のTPP参加不参加について世論が沸騰するはずもない。
一方、オバマ演説が相当の激論の末になされたことは明白である。すなわち、わが国は米国よりもすでに3年は遅れていると見なければならない。
むしろ日本の方が先行していなければならないはずなのだが。

財政運営戦略の不正直さ(第482回)

昨年の6月22日に閣議決定した財政運営戦略を読み直している。
この文書には、私個人としては「ほうっ」と思う記述がある。
それは『具体的な取組』でわざわざあげた3点の留意事項のなかにある。
『財政健全化への取組は正直であることを第一とし』という部分である。
これは出来そうでなかなかできないことだ。
したがって、この文言を書いた人はなかなかの人だと思ったのである。
では、予算編成上で財政健全化へ向けて、どのような『断固たる対応』を見せてもらえるのかといえば、5つの基本ルールを定めたという。
第一に、新たな施策を行う際は安定的な財源を確保する。
単なる「財源」ではなく、わざわざ「安定的な財源」というからには、各種控除廃止や租税特別措置廃止や消費税のような新税導入ということだろう。
なぜ分かりやすくそう書かないのだろうか?早くも『正直であることが第一』が怪しくなっている。
第二に、国債発行額の縮減や国債依存度の引き下げなど毎年度着実に改善が図られるように編成する。
第三に、社会保障費については歳入・歳出の両面にわたる改革を通じて、安定的な財源を確保していく。
ここでも安定的財源が出てくる。
歳入の改革と言えば消費税ということだろう。素直に書けばいいものを全然正直ではない。
さらに、歳出の改革もすると書かれているので、「サービス内容を削りますよ」「サービスを受ける対象者を減らしますよ」という意味だろう。
これもやはり正直に書いてない。
第四に、思い切った予算の組替えを行う。
実は、これが星だと私は思っている。これについては、いずれ『ふじいの独り言』で取り上げたい。
第五に、地方自治体に負担を転嫁しない。
これは、すでに子ども手当では地方へ転嫁しているので、『不正直』を通り越して『嘘つき』になってしまっている。
『正直であることが第一』としながら、その同じ文書の中ですでに『不正直』なのはどうしたことだろう。
やはり『不正直』な人だからこそ『正直であることが第一』などと書けるのだろう。

TPP「断固やる」やらない?(第481回)

1月10日をもって、日本経済新聞の連載シリーズ『民主党 誰が何を決めているのか』が終わった。
誰が何を決めているのか?という表題自体が実に失礼な命名だが、民主党所属議員も『誰が何を決めているのか?』と思っている節がある。
1月6日の読売新聞に『首相、TPP「断固やる」』という記事があった。
1月5日の初閣議で菅総理は環太平洋経済連携協定について、「『平成の開国』を断固やる。各閣僚の奮闘、努力をお願いしたい」と述べたというのである。
さらにその後の経済3団体の新年祝賀パーティーでも「TPPをはじめとする貿易の自由化は課題もあるが、乗り越えて突き進むことなくして日本の再生はない。その1年にしたい」と力を込めたという。
そこで、「なるほどそうか、やるのか」と思って記事を読んでいくと、どうもそうではないような話に流れていくのである。
この閣議後の記者会見で、大畠経済産業大臣は首相が6月をメドにTPPへの参加判断すると述べたことについて「明確におっしゃったとは受け止めていない」と疑問を呈し、鹿野農林水産大臣にいたっては「国内対策が必要で、財源をどうするかもついて回る」と戒めたというのである。
年頭の一大決意を語る初閣議から首相が完全に馬鹿にされているのだ。
まったくもって誰が何を決めているのか?さっぱりわからない。
そもそも菅総理は、TPP参加についてTPPのルール作りをするのだという発言をしていた。
しかし、オブザーバーとして傍聴することもできない日本がどういうルールをつくるのだろうか?
早くて6月に参加するかどうかを決めるということは、既に決められたルールに参加しても大丈夫かどうかという判断をするのではないのか?
後から参加する国が、先に交渉している国々のルールを変えることができるのか?
このような理屈の通らない発言をしているようでは配下の閣僚に馬鹿にされても仕方がないのかもしれない。
日経新聞の『誰が何を決めているのか』というシリーズは終了したが、現実の決定者不在シリーズはまだまだ続きそうである。

終焉なきババ抜き?韓国口蹄疫問題(第480回)

1月8日付の日本農業新聞に『感染拡大止まらず 殺処分100万頭超』という記事がとうとう出た。
昨年の宮崎県での大流行でさえ28万8643頭の殺処分だった。
その4倍近いのである。まさに危機的だ。
ではなぜ韓国ではここまでの猛威となっているのか?
宮崎大学農学部の末吉益雄准教授によれば、冬の寒さが大きく影響しているという。
第一に、消毒液の凍結により散布が難しい。消石灰も積雪があれば効果的に使用できない。
第二に、ウイルスが苦手とする紫外線が日照時間の短さや雪により地面に届かない。
そして、末吉氏は雪の下でウイルスが生きのびており、春の雪解けとともに再び猛威をふるう可能性すら指摘する。
上記の理由を見れば、宮崎県の事例はたまたま春から夏にかけての流行だったから消毒液も使用でき、夏場の紫外線の強さに救われたとも言える。
梅雨時のための埋設の難しさが指摘されていたが、冬場よりはましだったということのようだ。
韓国の口蹄疫発生状況マップを見ると、昨年11月29日に慶尚北道で発生。
その後は、12月15日に京畿道で発生。
12月22日に江原道、12月24日に仁川広域市、12月28日に忠清北道、1月2日に忠清南道と感染が拡大している。
北朝鮮と接する北部地方にはすべて感染が見られる。
つまり、北朝鮮に飛び火している可能性もある。
また、逆に感染がないのは、南部の慶尚南道、全羅北道、全羅南道である。
末吉氏は、「南には養豚地帯がある。南には釜山もあり、福岡との人の行き来が盛んだ。今後、人の動きが活発な春節(旧正月)を迎える。春先にかけ、日本への感染拡大の危険性が高くなってくるだろう。」と警鐘を鳴らす。
一方、その南部では、鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が拡大しているとの報道もある。
まさに韓国は踏んだり蹴ったりである。最悪のパターンは、韓国から跳び火して日本で発生し、韓国が終息を迎えたときに今度は日本から跳び火するという形である。
まるでババ抜きのババのように、日韓二人のプレーヤーの間をウイルスに行ったり来たりされてはたまらない。
アジア全体で常にどこかで口蹄疫や鳥インフルが発生しているのであれば、いよいよアジアあげて対策に取り組む体制が構築されるべきなのかもしれない。

ひったくり事件の正しい見方(第479回)

ひったくり件数において、千葉県が大阪府を抜いてワースト1位になったことから大勢の方からご意見やお問合せをいただいている。
誤解されている方もいらっしゃるので可能な限り正確に記しておきたい。
まず、件数で比較することが良いのかどうかである。
大阪は880万都市であり、千葉県の人口は612万である。
やはりこれは人口10万人当たりの件数で比較しなければ正確な状況はつかめないだろう。
すると、平成20年ではたしかに大阪府40.45件、千葉県36.54件だったが、21年の段階で大阪府35.98件に対して千葉県は36.12件とすでに逆転しているのである。
つまり、実際には平成21年段階で千葉県は有難くない第1位だったのである。
次に、千葉県内の状況を見ておきたい。
私が、千葉県議会で「ひったくり対策」を訴えた平成18年においては、松戸市は千葉市とワースト1位を争っていた。
市レベルなので人口1万人での比較をすると、千葉市10.3件、松戸市9.5件、以下、市川市7.4件、船橋市7.0件である。
だからこそ、松戸市の問題としてひったくり対策を訴えたのである
白く塗り替えて視認性を高めたバイクパトロールの強化や町会などボランティアの皆様の並々ならぬご尽力で大きな成果を上げることができた。
平成20年の確定値を見ると、松戸市は7.1件と2.4件の減少となっている。
県内ワースト順位をみても、平成22年11月末の暫定値ではあるが、ワースト4位まで落ちてきている。
ちなみに、この最新の22年11月末暫定値で人口1万に当たりの件数を計算しておこう。
ワースト1位柏市5.5件
2位市川市5.4件
3位船橋市4.8件
4位松戸市4.4件
5位千葉市4.3件

件数は全体的に確かに減っているのだが、まだまだ高い水準である。
特に、柏市は平成18年段階では3.1件でワースト5位だったのが、5位、5位、4位、そしてワースト1位と年を追うごとに上がって来ているのが気になる。
このたび覆面バイク40台の投入とビデオカメラ設置バイクを投入するが、これからもしっかりと頑張っていきたい。