日別アーカイブ: 2011年6月19日

入院日数の短縮は限界か?

政府の社会保障改革案が提出されました。
そのなかに「平均在院日数の短縮化」が打ち出されています。
これに対して、日本医師会は「これ以上の短縮化は限界」と主張しています。
真っ向から意見の対立です。どちらが正しいのでしょうか。
「日本の平均在院日数が他の先進国より長い理由は何か?」と言う議論は、実に古くて新しい問題です。
例えば、アメリカを例にとりましょう。
基本的には、アメリカでは入院費がべらぼうに高いということが言えます。
なぜ高いのか?
何と言っても人件費が全然違います。
アメリカの病院では日本よりもはるかに大勢の人が働いています。
看護師は4倍ですし、看護助手、薬剤師、ソーシャルワーカー、医療秘書、介護関係や雑務関係の人たちなど医療スタッフのマンパワーの手厚さは比べ物になりません。
したがって、病院から請求される医療費は非常に高くなります。
それだけではなく、アメリカでは、主治医からは当然として治療にかかわったすべての医師一人一人からも医療費を請求されます。そして、アメリカの医師は日本の医師よりもはるかに高給です。
これが、同じ病気の治療費でもアメリカの方がはるかに高い理由です。
これらの費用が入院費に跳ね返ってくるのですから、アメリカでは一日でも早く退院したいと思うでしょう。
一方、日本では医師にせよ看護師にせよ医療スタッフの給料は相対的に安く、場合によっては在宅で治療するよりも入院した方が安いケースすらあるかもしれません。
これでは平均在院日数が長くなって当然です。
しかし、もう一つ考えなければならないことがあります。
それは高齢化です。
人は高齢になれば治癒力が衰え、必然的に入院日数が長くなります。
それを無視して、アメリカ型の発想で、「入院が長引けば患者の支払い額を上げる」「入院が長引けば病院の受け取る報酬を下げる」「入院が短ければ患者の支払い額を下げる」「入院が短ければ病院の受け取る報酬を上げる」という4つの手法ではやはり問題があります。
患者側の支払いが高くなるのも困りますし、病院の受け取る報酬を下げれば患者が病院から追い出されかねません。
かと言って、「治療費を下げる」「診療報酬を上げる」では、おそらく保険料のアップということになるでしょう。
結局のところ、誰が考えても入院日数を短縮するためには早く治さねばなりません。
早く治すには手厚い看護が必要であり、手厚い看護には医療スタッフの充実が必要であり、それは医療費の高額化となります。
政府は、平均在院日数を短縮させて医療費を抑えようとしているのかもしれませんが、私は仮に短縮できたとしても医療費の削減にはならないように思うのです。