月別アーカイブ: 2月 2009

マグマはどこまで上昇した?(第250回)

2月2日に噴火した浅間山に注目している。
浅間山はいきなり噴火するパターンの火山なので油断は禁物だ。
事情が許せば黒斑山に限りなく近づきたいのであるが現実にはのぞむべくもない。
仕方なく「まえちゃんネット」などいくつかのライブカメラをモニターさせていただきながら注視しているのである。
今回の噴火で目を引いたのは、東京大学地震研究所火山噴火予知研究推進センター特任助教の田中宏幸氏のミュオン解析である。
それによれば、今回の噴火はマグマの上昇によるものではなく、その熱により水蒸気爆発が起り、火口の溶岩を吹き飛ばしたというのである。
同じ厚さの岩盤なら密度の高いものほど宇宙線ミュオンを吸収するという性質を使って浅間山の内部の密度変化をとらえての解析だ。
すごいことをやっているとただただ感心する。
私ごときには観測の正確性はまるで分からないので、この報告が正しいのかどうかは言えるはずもない。
ただ今回の噴火のケースでは、火口直下約200メートルの部分で昨年9?12月に約1万5000立方メートルの膨張があったというのが気象庁の発表である。
一方、国土地理院はGPSによる観測で昨年7月以降、火口の西北西約6キロメートル、地下約2キロメートルマグマ約200万立方メートルがあったとしている。
これら東大地震研、気象庁、国土地理院の3者の発言を単純に組み合わせれば、地下2キロメートルにあったマグマが地下200メートルまで上昇して水蒸気を熱して爆発したということになる。
こんな単純な理解でよいのだろうか?
はたまた新しい観測結果か何かが出てきて3者発言のいずれかと矛盾が生じるのだろうか?
まるで推理小説の目撃者発言めいた状況である。
ここで小説のように名探偵が登場し、ぱっぱっぱっと鮮やかな謎解きをするというわけにはいかないのだろうか。

千葉県は誰のもの?(第249回)

昨日の千葉県議会一般質問での自民党・瀧田議員VS堂本知事は完全に瀧田議員に軍配が上った。
知事は、答弁の最初に瀧田議員の御母堂の御逝去のときの様子から話を始め、議場の雰囲気を一気に落ち着かせるなどまさに老練。
しかし、その後の答弁は論理が完全に破綻し大儀のなさが露呈してしまっていた。
論理が破綻してしまっていることを知事自身が自覚しているから情に訴えた、その手段として議員の御母堂の話を出した、そんな舞台裏が見えてしまった気がしたのである。
いすみ鉄道再生会議は経営再建のために社長を民間から公募しようと決めた。
知事は、その就任した民間社長を県知事選に担ぎ出し社長不在としてしまった。
そして民間公募社長の後任は副知事だという。
これではまるで県の私物化そのものではないか。
しかもその副知事は総務省からたまたま出向している国家公務員で、さらにその人も3月末日までで4月からは誰かに代わるというのである。
読売新聞は『知事の道義的責任が問われそうだ』と書いた。
さらに、いすみ鉄道取締役で同再生会議のメンバーである藤平輝夫勝浦市長は「公募で社長を選んでおきながら、引き抜いた知事や県が、本気で鉄道再建を考えているとは思えない」と憤りをあらわにし、同じく取締役で再生会議メンバーの田島隆威大多喜町長は「地域や会社にもっと責任を持ってほしい」と不快感を示したと伝えている。
いすみ鉄道再生会議は平成17年8月に設立された。
その後、平成19年10月29日の最終報告発表までに地域住民の意識調査、住民との意見交換、シンポジウムなどを開催し、30回以上の会議を重ねながらいすみ鉄道の経営再建の道を模索してきた。
最終報告の「経営改善の取組み」「地域による支援」「自治体の取組み」を見れば、活性化への具体的取り組みはほぼ出来上がっている。
いすみ鉄道再生への取り組みのホシは、そうした手法ではなくまさに『民間社長の公募』の一点であったといってよい。
だからこそ私自身、新社長就任間もない昨年4月28日に、いすみ鉄道本社を訪ね「何かお手伝いできることがあれば遠慮なく申し付けてほしい」と申し上げた。
それはこの経営危機の大変な地方鉄道へ社長公募に応募してきた民間社長だからこそ何とか協力したいと思ったからであった。
当時、民主党の議員も「民間の新しい発想や柔軟さ、経営に対するセンスは、やはり公のそれより勝っている(趣意)」「社長公募という試みが、大変な価値がある(趣意)」と絶賛して、東葉高速鉄道も民間からトップを起用せよ、とまで訴えていた。
その同じ党が、予算案を反対するほど対立していた知事の担ぎ出した人を一緒に応援しようと言い、公募民間社長を無くしてしまおうとしているのだからまるでご都合主義である。
道義の上でも論理の上でもまるで大儀のない手法としか言いようがない。
言っていることとやっていることがまるで正反対の政治家に対して、われわれは厳しく監視していきたい。

黒川温泉・後藤哲也さんの話(第246回)

書類整理をしていたら、千葉大学で後藤哲也さんの講演を伺ったときのメモの一部が出てきました。
非常に説得力ある内容なので、ここで紹介させていただきます。
その1
散歩もしたくならないような観光地に人がくるはずがない。そのためには一軒だけ栄えてもダメ。まちぐるみで良くする。
紅葉の美しい温泉地にしようと思った。
ちょうど散歩道が廊下で、各旅館がそれぞれの部屋という発想。
その2
外国人は日本ほど個性のない国はないという。
しかし、本当の日本のふるさとは日本人も外国人も求めている。
ペンションのような洋風の家を作ってもだめ。
自然をつくって気持ちの良いところをつくる。雰囲気の勝負。
日本に来たら日本の雰囲気を味わっていたいと思ってもらう。
そのためには統一感が大事。一軒でもばらばらになったらだめ。
その3
ちぐはぐはだめ。
昔栄えたところほど外から(観光業者?)がやってきてちぐはぐな店をついくる。
黒川もそれが怖い。
その4
中心部がしっかりしないとだめ。中心部を散歩してもらう。
郊外ばかりでは町の活性化は無理。
その5
東京の人が来る。だから東京の真似をしてはだめ。非東京的なものをつくる。
市町村の商工観光課の職員に地域性を勉強させたところほどうまくいっている。
以上が私のメモです。
すでに著書に書かれていることでもあり、何よりも「なるほど」と思わせられる内容ですので紹介させていただきました。

分からないことのガイドライン(第247回)

環境省は温泉資源を保護するためのガイドラインを2008年度中に正式決定するという。
伝えられるところによると、内容は泉質が変ったり、湧出量が減ったりといった枯渇減少が発生した区域を対象に、都道府県が、新たな温泉開発のための掘削を禁止できることを明記しているという。
温泉法は、掘削を都道府県の許可制としているがその判断基準を示していない。
そこで環境省は資源保護のために不許可を出す基準をガイドラインで明らかにすることにしたという。
しかし、考えてみればこれまでそうした基準もなく審査をしていたのであるから、審査はほとんど形式的なものだったろう。
千葉県の場合、環境審議会温泉部会長が資源保護の立場を大切にする方だったので審査は公明正大かつ厳正であった思う。
しかし、その千葉県の審査ですら掘削にストップがかかったことはここ5年間で1度だけだ。
それも、掘削位置が公道に近すぎるので海風を考えると機材転倒のおそれがあるということで、温泉の保護とは無関係の事項であった。
「これはやめておいたほうが良いのになあ」と思う案件はないでもなかったが、温泉法では不許可とできなかったのである。
その意味ではガイドラインの提示は一歩前進であろう。
厳密に言えば、地下資源は国民全員のものである。
たまたま自分の土地を掘って、温泉が出たのでそれを利用するというわけだが、なるほど温泉の噴出口はその人の土地だったとしても、泉源は隣接の他人の土地の地下にある可能性も十分ある。
厳密に言えばおかしな話である。
今度のガイドラインは、どうやら『泉質が変わった』『湧出量が減った』という場合に限り不許可を認めるというもののようだ。
それよりも温泉の温度をモニターすることがより重要だろう。
温泉が枯渇する前兆は温度に表れると推察されるからだ。
温度計のモニターリングまで踏み込んで欲しかったと思うが如何なものであろうか?
地下のことは誰にも分からない。
その分からないことのガイドラインはあくまで抑制的なものにしたほうがよいと思うだが。

誰も語らない『マクロ経済スライド』(第258回)

社会保険庁のホームページにこう書かれている。
「平成16年の年金制度改正によって、今後、年金額改定は物価変動のほか、被保険者の減少・平均寿命の伸びも反映されることとになりました(これを「マクロ経済スライド」といいます)。
さらにこう書かれている。
「具体的には、賃金水準や物価の伸びに連動して毎年度年金額を見直す際に用いられる「改定率」という指標に、(1)被保険者数の減少分としてマイナス0.6%、(2)平均余命の伸びを勘案してマイナス0.3%20組み込みます。すなわち、たとえば賃金・物価の伸びが仮に1%であったとしても、年金額はそこから(1)と(2)で合計0.9%を差し引いた伸び率になるため、結果として0.1%しか伸びないという計算になります。
単純化して言えば、賃金・物価が0.9%以上上昇した場合は、その上昇分0.9%を差し引いた分を年金額に上乗せします、賃金・物価の上昇分が0.9%より下なら年金額の上乗せは行ないません、賃金・物価が下った場合は年金額はその分下げますということである。
このことは平成16年改正のときに私も各地の政治学習会でお話させていただいたが、今となってはどれほどの方が理解しているだろうか?
さて仮に将来、消費税が上ることになると当然物価は消費税分だけ上がる。(と見るのが自然だろう)
すると、現役世代は消費税分を負担する。その一方で年金受給者は消費税による物価上昇の0.9%分の負担となることが予想される。
そうなると、当然0.9%の妥当性が議論となるだろう。
つまり、消費税の議論は年金問題に密接に関連してくるのである。