日別アーカイブ: 2009年2月16日

イラクの民主化(第252回)

前回はソマリアの海賊について書いた。
しかし、100万人以上の国民がまともな食糧もなく難民化しているソマリアの国情について日本では無関心だ。
私自身、いくつもの武装勢力が首都制圧を狙って内戦を起こしているというイメージしか持ちえていない。
多分、その首都にはエチオピア軍がまだいるのだろう?
海賊への対処を議論するなら、やはり20年近く続いてきた無政府状態の国情そのものもある程度は伝えてほしいものである。
さて、イラクは今どうなのだろうか?
伝えられるところによれば1月31日に地方評議会選挙が行なわれて、マレキ首相率いるシーア派中心の政党連合が大都市では多数派になったという。(Japanese Radioというインターネットサイトによる)
つまり反米派の政党やスンニ派の政党は負けたということになる。
こうした結果もさることながら、そもそも選挙が平和的、民主的に行なわれたのかどうかがむしろ気になるのである。
言うまでもなく現在の世界は不況と非常な信用収縮に見舞われている。
これは先進国のみならずイラクやソマリアの経済にも当然厳しい不況の荒波が押し寄せているのであり、その深刻さは先進国以上と見なければならないだろう。
経済の弱い国というのは、一般に経済効率の悪い国といえる。
たとえば象徴的な例は、アメリカが真っ先に造ろうとしていた大型発電施設がイラクで未だに実現を見ていない。
結果としてアメリカのカミンズ社製の発電機を住民がばらばらに使用せざるを得ない効率の悪さがある。
また、あくまで一般論ではあるが、中央政府への信用度が低く部族や地域社会への依存度が高い傾向がある。
そして、こうした非効率性は経済の立ち直りにも時間を要するのである。(わが国における道州制ではこういう議論を聞いたことがないのはどうしたことだろう?)。
一方、平和的、民主的というのは治安の良さとは似て非なるものだ。
極端な話、略奪しつくしてしまえば治安は落ち着くこともあるのである。
したがって、選挙であればせめて投票率がどうしても知りたいポイントの一つだ。
いずれにせよ駐留米軍地位協定により2011年末にはアメリカはイラクから撤退する。
オバマ大統領の誕生によりこの出口だけは間違いないところだろう。
フセインを倒して民主化、平和化がどれだけ進んだか、いよいよ問われる刻限が迫ってきているのである。