日別アーカイブ: 2009年2月8日

黒川温泉・後藤哲也さんの話(第246回)

書類整理をしていたら、千葉大学で後藤哲也さんの講演を伺ったときのメモの一部が出てきました。
非常に説得力ある内容なので、ここで紹介させていただきます。
その1
散歩もしたくならないような観光地に人がくるはずがない。そのためには一軒だけ栄えてもダメ。まちぐるみで良くする。
紅葉の美しい温泉地にしようと思った。
ちょうど散歩道が廊下で、各旅館がそれぞれの部屋という発想。
その2
外国人は日本ほど個性のない国はないという。
しかし、本当の日本のふるさとは日本人も外国人も求めている。
ペンションのような洋風の家を作ってもだめ。
自然をつくって気持ちの良いところをつくる。雰囲気の勝負。
日本に来たら日本の雰囲気を味わっていたいと思ってもらう。
そのためには統一感が大事。一軒でもばらばらになったらだめ。
その3
ちぐはぐはだめ。
昔栄えたところほど外から(観光業者?)がやってきてちぐはぐな店をついくる。
黒川もそれが怖い。
その4
中心部がしっかりしないとだめ。中心部を散歩してもらう。
郊外ばかりでは町の活性化は無理。
その5
東京の人が来る。だから東京の真似をしてはだめ。非東京的なものをつくる。
市町村の商工観光課の職員に地域性を勉強させたところほどうまくいっている。
以上が私のメモです。
すでに著書に書かれていることでもあり、何よりも「なるほど」と思わせられる内容ですので紹介させていただきました。

分からないことのガイドライン(第247回)

環境省は温泉資源を保護するためのガイドラインを2008年度中に正式決定するという。
伝えられるところによると、内容は泉質が変ったり、湧出量が減ったりといった枯渇減少が発生した区域を対象に、都道府県が、新たな温泉開発のための掘削を禁止できることを明記しているという。
温泉法は、掘削を都道府県の許可制としているがその判断基準を示していない。
そこで環境省は資源保護のために不許可を出す基準をガイドラインで明らかにすることにしたという。
しかし、考えてみればこれまでそうした基準もなく審査をしていたのであるから、審査はほとんど形式的なものだったろう。
千葉県の場合、環境審議会温泉部会長が資源保護の立場を大切にする方だったので審査は公明正大かつ厳正であった思う。
しかし、その千葉県の審査ですら掘削にストップがかかったことはここ5年間で1度だけだ。
それも、掘削位置が公道に近すぎるので海風を考えると機材転倒のおそれがあるということで、温泉の保護とは無関係の事項であった。
「これはやめておいたほうが良いのになあ」と思う案件はないでもなかったが、温泉法では不許可とできなかったのである。
その意味ではガイドラインの提示は一歩前進であろう。
厳密に言えば、地下資源は国民全員のものである。
たまたま自分の土地を掘って、温泉が出たのでそれを利用するというわけだが、なるほど温泉の噴出口はその人の土地だったとしても、泉源は隣接の他人の土地の地下にある可能性も十分ある。
厳密に言えばおかしな話である。
今度のガイドラインは、どうやら『泉質が変わった』『湧出量が減った』という場合に限り不許可を認めるというもののようだ。
それよりも温泉の温度をモニターすることがより重要だろう。
温泉が枯渇する前兆は温度に表れると推察されるからだ。
温度計のモニターリングまで踏み込んで欲しかったと思うが如何なものであろうか?
地下のことは誰にも分からない。
その分からないことのガイドラインはあくまで抑制的なものにしたほうがよいと思うだが。

誰も語らない『マクロ経済スライド』(第258回)

社会保険庁のホームページにこう書かれている。
「平成16年の年金制度改正によって、今後、年金額改定は物価変動のほか、被保険者の減少・平均寿命の伸びも反映されることとになりました(これを「マクロ経済スライド」といいます)。
さらにこう書かれている。
「具体的には、賃金水準や物価の伸びに連動して毎年度年金額を見直す際に用いられる「改定率」という指標に、(1)被保険者数の減少分としてマイナス0.6%、(2)平均余命の伸びを勘案してマイナス0.3%20組み込みます。すなわち、たとえば賃金・物価の伸びが仮に1%であったとしても、年金額はそこから(1)と(2)で合計0.9%を差し引いた伸び率になるため、結果として0.1%しか伸びないという計算になります。
単純化して言えば、賃金・物価が0.9%以上上昇した場合は、その上昇分0.9%を差し引いた分を年金額に上乗せします、賃金・物価の上昇分が0.9%より下なら年金額の上乗せは行ないません、賃金・物価が下った場合は年金額はその分下げますということである。
このことは平成16年改正のときに私も各地の政治学習会でお話させていただいたが、今となってはどれほどの方が理解しているだろうか?
さて仮に将来、消費税が上ることになると当然物価は消費税分だけ上がる。(と見るのが自然だろう)
すると、現役世代は消費税分を負担する。その一方で年金受給者は消費税による物価上昇の0.9%分の負担となることが予想される。
そうなると、当然0.9%の妥当性が議論となるだろう。
つまり、消費税の議論は年金問題に密接に関連してくるのである。

恐るべし!メソ低気圧(第262回)

新潟地方気象台のN気象情報官に興味深い話を伺った。
昨年2月23日から24日にかけて、北日本の山岳地帯は大雪に見舞われ日本海沿岸部は異常な高波に襲われた。
そのときのどのような気象現象が起っていたか?についてである。
通常の冬型の気圧配置は言うまでもなく西高東低であり、等圧線は列島では縦になり強い北西の季節風が吹くというパターンである。
ところが、2008年2月23日から24日にかけての気象は通常とは異なった展開を見せたのだという。
先ず気圧である。
午前3時時点では日本海低気圧は1002hPaだったが、6時間後には992hPaとなり、さらに15時には984hPaにまで急激に下った。
12時間に18hPa下がるというもの凄い急激な発達である。そして、その後は21時まで気圧はほとんど上がることがなかった。
次にスピードである。
いくら低気圧が発達してもさっと通り抜けてくれればいいようなものだが、このときは西北西へ逆戻りするなどなかなか東に進んでくれなかった。
一般に低気圧の移動は上空の気圧の谷の動きに左右されるので、このときも上空の動きが遅く低気圧が進むよりもその場に止まってしまったと思われる。
そして、風は低気圧の周りを回るように吹くので長時間にわたって北ないし北東の風が吹き荒れることとなった。
最後に低気圧の立ち位置である。
通常の冬型ではオホーツク海や千島列島付近で発達するのだが、このときは東北や北海道に近い海域で発達した。
こうしたいくつもの従来型とは異なる低気圧の変化により、北日本や日本海側に大雪や高波をもたらされたというのである。
私が興味深く思ったのは、これが『メソスケール低気圧』だという点であった。
通常の前線を持つ低気圧の5分の1?10分の1の大きさ(気圧ではなく面積。一般的に前線を伴った低気圧は半径1000キロほど)でありながら、突風、暴風雪、高波、落雷など乱暴を働くものがいる。しかも、日本海側では意外と少なくない。これがメソスケール低気圧である。
同じような事例が2005年12月22日にあり、このときは新潟大停電をもたらした。
私たちの住む関東においては南岸低気圧が問題となるが、日本海と違ってメソスケール低気圧の発生確率は低いのが幸いだ。
しかし、災害に備える心構えはどこに住んでいても同じだと思いたい。