日別アーカイブ: 2012年9月14日

年金制度を検討する(2/2)

4)現在の年金制度は世代間で不公平がある。この不公平を解消するには賦課方式から積立方式に変更すべきである。

高齢者ほど受け取る金額が高くなるという世代間不公平は生じています。しかし、若い世代も含めすべての世代が支払った保険料以上に受給できる設計となっています。
さて、賦課方式を積立方式に変更すれば、確かに世代間不公平は解消されます。その代わりに大きな問題が生じます。
仮に、賦課方式を積立方式に切り替えますと、現在受給している方の年金は負担しなければならず、さらにその上に自分が将来受け取るための年金を積み立てなければなりません。つまり二重の負担となってしまいます。

5)その二重負担解消のために現在の積立金を使えばよい。

積立金によって2年から3年分の支給額は確保できます。それではとても足りませんのでおそらく年金支給のために国債を発行することになるでしょう。まずこうした国債発行を良しとするかどうかです。
民主主義国家ですから、仮に国債発行をしてもよいという民意であり、積立方式に切り替えができたとします。
先に問題となったAIJ社のように、今度はどれだけうまく運用ができるかという問題になります。仮に運用に失敗したとすると、世代間の公平は守られたものの年金受給額は減額したということになりかねません。
国際経済や国際金融の動向によって、運用がうまくいった世代と運用がうまくいかなかった世代という新たな世代間不公平が生まれる可能性があります。
賦課方式では、人すなわち『民意』が決めた結果により生じた世代間不公平、積立方式では『市場』が決めた結果により生じた世代間不公平という違いだけのような気がします。
そして、積立方式にするために積立金を失い、国債という借金が増えているのですから、積立方式はそれほど良いものかどうか、私には疑問です。
いずれにしてもより良い折衷案はあるかもしれませんので、議論は幅広く行うべきだと思います。

年金制度を検討する(1/2)

今回は、多くの方からお寄せいただいた『声』をもとに年金制度を検討してみたいと思います。

1)国民年金は40年も払い続けて、支給は月額66000円ほど。馬鹿らしいと思う。

保険料月額を15000円と仮定してインフレやデフレをいったん無視して40年間払い続けると
保険料15000円×12か月×40年=720万円
支給額66000円×12か月×9.1=721万円
もちろん厳密ではありませんが、74歳まで生きればとんとんです。
私としては、馬鹿らしいというほどではないように思います。

2)未納者が増えて年金財政は破たんするのではないか。

国民年金の未納者が増えていることは事実です。しかし、人数が倍の厚生年金や共済年金加入者は基本的に未納がありませんので、実際の未納者は多く見ても1割はいないと思われます。しかも年金制度が破たんすることは政治的に持たないのでどのような政権も年金制度は維持することと思います。
したがって、未納が原因で年金財政が破たんすることはありえないと思いまし、仮に年金財政が破綻するとしたらそれは国家財政が破たんする時です。

3)国家財政も破たん状態ではないか。

国の財政赤字は900兆円などと言われています。しかし、国家も数ある経済セクターの一つですので国の赤字イコール国家の財政破たんにはなりません。まず、900兆円から国の資産を引いた純粋な赤字が、日本経済のGDPに比してどれほどの大きさかを見なければなりません。
国は徴税権を持っていますので、国民の稼ぎ(GDP)を揺るがすほどの巨額な(純粋な)赤字でなければよいと言えます。
現在の財政赤字の900兆円は確かに巨額ですが、返済能力に問題はないと言えます。そして実際に、国債の消化に問題はありませんし、かつきわめて低い金利です。