日別アーカイブ: 2010年9月12日

10年前の今日?東海豪雨のこと(第399回)

以下は、9月6日に行った私の千葉県議会代表質問からの抜粋である。
『ちょうど10年前の2000年9月10日から9月12日にかけて、秋雨前線は東北地方から山陰沖へ伸びた状態で停滞しておりました。
一方、9月11日、大型で非常に強い台風14号が南大東島の南南東約120キロの海上をゆっくりと北西に進んでおりました。
秋雨前線は列島上にある。台風は上陸するのではなく九州のはるか南海上を日本から離れるように横切っていく。ある意味では珍しくもなんともない気圧配置であります。
しかし、このパターンは、台風からの暖かく湿った空気が大量に流れ込み、停滞する前線を刺激するというきわめて嫌なパターンでもあります。
愛知県では夕方から12日の明け方まで県内各地で記録的な雨となりました。
名古屋地方気象台では11日19時に時間最大雨量93ミリを記録し、降り始めから12日までの総雨量は567ミリに達しました。
ちなみにこれは年間降雨量の実に3分の1にあたります。
こういう状況ですから、当然のように、一日の降水量も428ミリに達し、これは名古屋地方気象台観測史上最大を記録しました。
この結果として、庄内川では河口から4キロ付近の一色大橋下流右岸で越水。新川では名古屋市西区の左岸堤防が約100メートルにわたって決壊。氾濫面積8.3キロ平米、浸水家屋7000棟という大変な被害となりました。
実際の水位が、計画高水位を超えた場合、堤防がいかに脆弱かということを見せつけたのも大きな教訓の一つでありました。
また、愛知県東部では、天白川の水位は危険水位を超えて堤防高に達し過去最高水位を記録、支川から溢れた水により8200戸が浸水。さらに、この地域では地下鉄や主要幹線道の浸水により深刻な被害を出しました。
一方、矢作川水系では総雨量が伊勢湾台風時の2.7倍以上にあたる595ミリに達し、上流部では土石流による家屋の流出、斜面崩落、大量の土砂と流木が流出する、いわゆる「沢抜け」などにより地域が孤立。
中流部の豊田市では越水、氾濫。そして堤防の方は、至る所で法面崩壊、漏水といった被害がおこりました。
この豪雨による愛知県の被害状況は、死者7名、負傷者107名、浸水家屋2万7606棟、堤防決壊20か所、越水315か所でありました。
この東海豪雨は東北地方から山陰地方にかけて秋雨前線が伸びておりました。これがもう少し南に寄っていたら、中部圏ではなく首都圏が被害を受けていたかもしれません。
いずれにせよ、この名古屋での甚大な被害はコンクリートとアスファルトで固められた都市というものが、いかに水害に弱いかを露呈しました。
水道やエネルギーと言ったライフラインのもろさ、また、千葉市内でもたとえば稲毛区役所前など多数のアンダーパスがあり、登戸など今なお工事中ですが、これらアンダーパスがことごとく使えなくなるという道路網のもろさ、水洗トイレも使えない生活様式面のもろさ、駅やビルディングの地下空間の危険性、そして水害後のあまりにも大量のごみなど都市特有の課題であります。
また、私達は堤防が決壊する、破堤すると言うことを、普段はほとんど考えておりません。しかし、東海豪雨を見れば破堤はいつでも起こりうるということが良く分かります。
計画高水位を超えた場合は、真っ先に破堤を想定しなければなりません。堤防は天端まで大丈夫と言うつくりにはなっておりません。
東海豪雨のケースでは、本当はもう一つダムがあるという想定にたって計画高水位を計算して堤防をつくっておリました。
ところが諸般の事情からそのダムは今なおできておりません。ダムは完成しておりませんでしたが、そのダムがあるという想定で計画高水位が計算されておりますので、ほとんどの一級河川で警戒水位を超え、庄内川、矢作川では計画高水位を超えてしまいました。
この事例は、私ども千葉県の河川と群馬県のダムにおいても聞いたような話ではあります。
実は破堤は、現実の問題としてあちこちで起こっております。もし仮にダムを作らないのなら、東海豪雨クラスの降雨にも間違いなく大丈夫といえる対策を一日も早く講じて欲しいものであります。』
以上、長い引用で申し訳ありませんでした。
さて、今朝の日経新聞の『けいざい解説』で土屋直也編集委員はこう書いている。
『八ツ場ダムはすでに周辺工事がほぼ済んでいる。本体工事で浮くお金は620億円にすぎない。工事中止の場合に1都5県に返済しなければならない約900億円すらひねり出すことはできない。(中略)自然保護などのために八ツ場ダムを造らないと政治判断できなくもないが、洪水リスクにさらされる下流住民を説得するのは至難の業だろう』
民主党政権には、嘘のない正確な検証をお願いしたいものである。