日別アーカイブ: 2010年5月25日

悪しき習慣 打破する側から利用する側へ(第373回)

週刊ダイヤモンド5月29日号の片山善博氏のコラムに驚くべきことが述べられていた。
『ここに一片の通知がある。2010年4月1日付、総務副大臣から各都道府県知事あての「運輸事業振興助成交付金について」である。
内容を要約すれば、各都道府県に入ってくる軽油引取税の税収の一定割合の額を、運輸事業振興助成交付金という名の下に各都道府県にあるトラック協会に交付せよというものである。』
片山氏は、こんな通知があるというのはデマだと思っていたという。
なぜなら
『都道府県が徴収する軽油引取税の税収の一部を誰それに交付せよなどと、総務省が指示あるいは要請することなどもってのほか』
『これまでの地方分権により国と自治体の上下関係は取り払われ、対等の立場にあることが明確にされている。(要旨)』
『鳩山由紀夫首相は、その施政方針演説の中で、「地域主権改革」を「地域のことは、その地域に住む住民が責任を持って決めること」だと定義している。』
『笑ってしまうのは、この通知の末尾に、これは「技術的助言」だと書き添えられていることである。通知は禁止されているが、助言は許されるので、これはあくまで助言だと言い張りたいのだろう。』
『こんな「助言」がまかり通るのなら、闇の世界の人たちが小躍りする。みかじめ料は「助言」に基づいてもらっているし、たとえ恐喝罪で捕まっても、「別に金品を強要したわけではない。単に助言しただけだ」といういいわけも成り立つだろう。』
まったくその通りである。
さて、私が一番気になっているのは片山氏の次の指摘である。
『こんな通知を出した御仁は誰か。じつは、この通知の名義人には「総務副大臣」としか書かれていない。総務省には副大臣が2人おられるが、そのうちのいずれの副大臣かが分からないようにしてあるのである。』
通達行政は、基本的に官僚の行うものであったので、名義人は個人名でなく官職を書くのが一般的である。
官僚ポストはどんどん人が変わっていくので官職でというのは官僚の世界では当たり前とも言える。
一方、このやり方はうまい責任逃れにも見える。今回の通知などまさに誰が出したか分からないようにする狙いとしか思えない。
本来、こうした官僚流の習慣や手法を打破するのが政治主導であろう。
それを打破するのではなく、ちゃっかり使っていしまおうという志の低さが気になるのである。
まるで不正を追及するのではなく、不正をする側についてしまうのだから。原口総務大臣は、この通知は出すべきではないと思っていたという。しかし党から言われて止む無く出したのだという。
そうであれば、むしろ姑息な手段を使わず、名義人をはっきりさせることが党に対する抗議のメッセージであろう。
「政治」が、姑息な手段を利用する側になってしまえばこの国の将来は相当に暗いと見なければなるまい。