月別アーカイブ: 5月 2010

住民投票は万能薬ではない(第371回)

私のところに住民投票の案件が二つ寄せられた。
不思議なもので、相談事というのは同じものが連続することが珍しくない。
一つは、松戸市上本郷の国保松戸市立病院の移転に関するもの。
もう一つは、他市にかかわるものである。
住民投票という制度は住民の意思が直接反映されるということで非常に貴重な制度である。
しかし、正直なところ、私は住民投票は万能ではないと思っている。
市町村合併など市全体にかかわる広域な問題については住民投票による民意を問うことが重要だと思う。
ところが、地域が限定される問題となると効力が疑問視されると思うのである。
たとえば清掃工場建設の場合、建設地近くの住民は反対する可能性が高いかも知れない。
しかし、住民の範囲を建設予定地から外へ広げていくと反対者が減っていく可能性がある。
清掃工場のようなどうしても必要な施設については、むしろそうした傾向が強いのではないだろうか。
つまり、住民投票では建設地周辺住民の声は少数意見だとして反映されない懸念がある。
住民投票は民意とは何か?という根源的な問題を私たちに突きつける。
市の有権者のうち何割が投票したら有効で何割以下なら無効なのか?これも意外に難しい。
たとえば市民の2割が投票したとして、そのうち8割が賛成したとする。
投票者の80%という圧倒的多数の賛成者は、市全体ではたったの16%に過ぎない。
したがって、広報活動は相当強力に進める必要があるのだが、多くの市民は関心を寄せないこともあるだろう。
やはり、住民投票になじむ問題となじまない問題とのたて分けについて厳密な議論が必要に思うのである。

民主党政権の現場感覚(第370回)

現時点で振り返ってみると普天間問題でオバマ大統領に対して「トラスト・ミー(私を信用してくれ)」と言った鳩山総理の心中は何だったのかと思う。
国民にも大統領にも議会にも口からでまかせを言ってしまう人が総理だとすると、現在のわが国は重大事態という以外にない。
そんなことを考えながら今日の日本農業新聞を見てびっくりした。
『農相 きょう宮崎入り』という見出しである。
口蹄疫対策を協議するというのだが、今の今まで宮崎に行っていなかったという事実にびっくりしたのである。
口蹄疫の拡大は宮崎のみならず、わが国畜産業の重大事件だというのに、その最高責任者である農林水産大臣がようやく宮崎へ行くのである。
しかも記事によれば、口蹄疫防疫対策本部長代理が宮崎入りしたのが4月29日。
農水省政務三役の宮崎訪問はそれ以来だという。
宮崎県都農町で口蹄疫の疑いのある牛が確認されたのは4月20日のことである。
その後、県、市町村、JAの職員らの必死の防疫作業が連日続けられている。
にもかかわらず新たな感染が疑いが止まらない。まさに重大事態である。
農相は社会党出身の赤松氏である。
同じ社会党出身の村山首相の阪神大震災のときの遅すぎた現地入りを思い出す。
あのときはヨーロッパから災害救助犬も現地入りしたが、その際「犬より遅い村山総理」という情けない指摘を受けた。
やはり、鳩山総理のみならず民主党政権の現場感覚には相当な違和感を感じるのである。

約束破りの法則(第369回)

普天間の問題で、鳩山首相が「最低でも県外」と言っていたのを「公約でもなんでもない」と言い出すにいたっては・・・・。
もしかしたら本当にこの人は病気なのかと思う。
さて、守れない約束をしてしまって結果として約束破りというパターンがある。
これが第一法則である。
この法則は、民主党のマニフェストの中にたっぷりと見つけることができる。
この普天間の問題などもこのパターンといえる。
ところが、第二の法則として、本当は守れるのに守らなかったパターンがある。
郵政への預け入れ限度額をかねてから半分の500万円と主張していたのがいつの間にか2倍の2000万円となってしまった問題。
政治と金の問題で、鳩山首相が「検察の解明が終わった段階で、知りうる事実をすべて国民の皆さんに説明したい」(12月4日・民主党両院議員総会)、「裁判が終わった暁には検察に書類の返還を求め、皆様方に見ていただきたい」(3月3日・国会答弁)と言っていたにもかかわらず、山口那津男公明党代表との党首討論では「(資料提出は)必要ない」と言い出し、国会答弁まで実は嘘だった。
そして、これも許せないのだが天下り問題である。
民主党のマニフェストは、5原則5策という重点政権構想があり、その中心主張が「税金のムダづかいと天下りを根絶します」だった。
その上で、5策の中にもわざわざ「天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する」と掲げていた。
ところが、日本郵政社長は元大蔵省事務次官の斉藤次郎氏であり、副社長は財務省の坂篤郎氏である。
齊藤氏は、東京金融先物取引所理事長、研究情報基金理事長、国際金融センター顧問などを経て郵政社長に。
坂氏も農林漁業金融公庫副総裁、損保協会副会長を経て日本郵政副社長であるからお二人とも「渡り」そのものではないか。ではもう一人の副社長は誰かと思えば、総務省出身の足立盛二郎氏である。
足立氏も簡易保険加入者協会理事長、NTTドコモ副社長を経ての就任なので、こちらも「渡り」そのものだ。
こういう事実を積み重ねてみると、鳩山氏はもしかしたら病気なのか?と多少はかわいそうに思ったことが実に馬鹿馬鹿しく思えてくる。
つまり、鳩山氏は病気なのではなく、そういう体質だったのだ。
民主党ならびに民主党政権そのものが国民を裏切ることをなんとも思っていない体質だったことに気づくのである。
そして、その政権があと4年続くのかと慄然とするのである。

63回目の憲法記念日に思う(第368回)

憲法は言うまでもなく、国のありようを規定する最高規範である。
今朝の朝日新聞に、憲法についての世論調査をしたという記事があった。
それによれば、「憲法を改正する必要がある」と答えた人は47%、「改正する必要がない」と答えた人が39%で、改正派が8ポイント上回っている。
しかし、「改憲が必要」と回答した人の52%が第9条は変えるべきではないとしているので、全体で67%の人が9条改正には反対しているという。
毎年のように「憲法は改正すべし」が多数派を占めるのだが、やはり問題は「ではどういう改正を国民は望んでいるのか?」である。
憲法は最高規範であるから当然のことながらその議論は国民あげてのものでなければならないし、相当活発になされねばならない。
ところが、2007年8月に衆参両院に設置された憲法審査会はこの3年の間にまだ一度たりとも開かれていない。
民主党の抵抗によるものである。
民主党は憲法の議論をすると護憲派と改正派が真っ二つに分かれ、党の結束が持たないというのである。
そもそも国の最高規範、根本中の根本についての考え方が180度異なっていて同じ党という方が不自然なのである。
それを自分たちの党が分裂してしまうから憲法の議論はタブーといういうのは本末転倒もはなはだしい。
それこそ憲法の認めている思想信条の自由に反する行為であろう。
憲法の議論の場まで党利党略に利用されては国民はたまったものではない。
何か大事なものを汚された気がするのである。