月別アーカイブ: 5月 2009

新型インフルエンザ — 第2ラウンドの戦い

ゴールデンウィーク最終日となった。成田空港では検疫にたずさわる人や旅客でてんやわんやの状態だろう。
ご関係の皆様に心から敬意を表したい。
ちょうど6年前(2003年)の5月23日に、私は『新型肺炎SARSとの戦い』という「ふじいの独り言(第26回)」を書いている。
そのときに千葉県内の対策の不備を指摘させてもらったが、対策がどれだけ進んだかは微妙である。
千葉大学医学部附属病院では陰圧の病室が拡充されただろう。空港のサーモグラフィーも大幅に増強された。
しかし、その一方で当時SARSに対処できた病院が現在は医師不足でお手上げという状況もある。
全体として防御能力が増えたのか?減ったのか?
また克服できていない部分はどこか?今一度再点検が必要だ。
なかでも一番気になるのは成田空港での発熱チェックである。
私はほとんど役に立たないと思う。
なぜなら、出張にせよ旅行にせよほとんどの人が短期間の渡航と考えられるので、発熱前にサーモグラフィーをすり抜けてしまうだろうからだ。
SARSについては潜伏期間が4?10日と言われ、咳のない人も必ず発熱はするということだったのでサーモの配備は必要不可欠だった。
今回のインフルエンザは、残念ながらサーモの位置づけは予備的なものであり、より多くの人を空港外へ出してしまうだろう。
つまり、われわれはすり抜けてしまった人をどうするかということをも重大視しなければならず、その対応を求められているのである。
ひとたび社会へ紛れてしまったインフルエンザが蔓延しないようにどうしたらよいか?
6年前のSARSのときにある医師の語った言葉がしみじみ思い出される。
「(SARS問題は)人間とウイルスの戦いのスタートとして捉えなければならない」
インフルエンザA問題は、まさに第2ラウンドの戦いと捉えなければならない。

悩ましき損失補償

何年も前から損失補償の問題を興味深く見ている。
第3セクターが金融機関から借り入れをする際、金融機関は万が一の場合は自治体が損失補償をするように求めてくる。
自治体がそれを了解して、はじめて金融機関は第3セクターに融資をする。
ところが「財政援助制限法」第3条には『『政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。』 という規定があるのだ。
その一方で、昭和29年5月12日の大分県総務部長あての自治省行政課長の回答が行政実例として存在する。
これは財団法人大分県信用保証協会が保証する特別小口融資について地方公共団体が損失補償してよいかという問いに対しての回答で『損失補償については、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第3条の規制するところではないものと解する。』というものである。
バブル崩壊以後、次々と破綻する第3セクターが出てきた。そして、それに対する損失補償問題が一気に噴出してきた感があった。
大牟田のネイブルランド、荒尾のアジアパーク、芦別の・・・と、今日に至るまで切りがない。
今なお、損失補償問題を表面化させないためという理由のみで、税金という生命維持装置を作動させている案件があるだろう。
そうしたものは私たちの眼に触れることがほとんどなく、誰に尋ねてもまず実態が分からない。
議員個人では時間も力もあまりにも限られている。
やはり行政に対するチェック機能を発揮するには、地方議会にもせめて国会の委員会調査室レベルの機関が必要だと思うのである。

『生活苦しい』母子家庭の増え方

5月4日の読売新聞朝刊に『生活苦しくなった54%』という世論調査記事が出ていた。
それによると2006年12月調査では25%だった同調査の数字が倍以上になったというのである。
率直に言って、この調査数値には違和感を覚えた。
それは3年前には25%だったと言う点である。こんなに少なかったのか?という驚きである。
と言うのも、『生活が苦しくなった』『生活にゆとりがある』という意識調査は、私がずっと追いかけているテーマの一つだったからである。
厚生労働省は国民生活基礎調査の中で『生活意識の状況』調査を長年行なってきた。
私はそれを平成3年からグラフ化してきている。
このデータを見ると、2006年の『生活が苦しい』と『やや苦しい』の合計数値は56.3%であり、読売新聞調査とあまりにかけ離れている。理由は不明だが、私の作ってきたグラフ(出典は厚生労働省調査なので偉そうに言うことはないですね)をみると以下のことが言える。
『生活が苦しい』と言う人は増加傾向にある。これは間違いない。
平成4年などはバブルの余韻があったせいか減少しているし、平成12年までは減少する年もあったが、それ以降は一貫して増え続けている。
『やや苦しい』が横ばいになっていても『大変苦しい』と言う人が増え続けている のは要注意である。
反対に『ややゆとりがある』とする人は減少傾向にあったがここへ来て横ばいになった。
この『ゆとり』のデータで興味深いのは、好況不況に関係なく『大変ゆとりがある』とする人の割合はほとんど変わらない 点だ。
データを見ていて特に問題だと思うのは母子家庭である。
平成9年以降、『生活が苦しい』と言う人が85%を下らない。
逆のデータで言えば『ゆとりがある』とする人が1%を超えない。
最新の19年の数値では『苦しい人』が85.1%であるのに対して、『ややゆとりがある』がわずか0.7%、『大変ゆとりがある』が0%である。
母子家庭が増加している現実を考えれば、この『苦しさ』が数字以上に厳しく、『苦しい』人の激増が読み取れる。
私たちの社会は母子家庭に厳しすぎる気がしてならない。
これらのデータからも子育て支援に特段の力を入れるべき ことが分かるのである。

本当に大変なところは

新聞各紙は連日のように世界地図にAインフルエンザ(豚インフルエンザを改称)の各国患者数を書き立てる。
見ていると、メキシコからアメリカ、そしてヨーロッパに飛び火して患者数は増加していく様がよく分かる。
しかし、メキシコに近い中米や南米の患者数が少なすぎるのが気になる。
本当のところは先進国よりも発展途上国のほうが深刻なのではないのか。
そういう国の政府や保健当局が患者数の補足をしていないだけではないのか。
つまり、本当に大変な国ほどインフルエンザ患者数を把握できず報道されないのではないか。
結果としてちゃんと補足している欧米各国の患者数だけがどんどん増えていく。
これは日本も例外ではない。
あの阪神淡路大震災のとき、兵庫の震度は最後まで出なかった。
大阪は4、滋賀は5、京都も5だったが兵庫は震度の表示がなかった。
あのときの関西方面のNHKの地図を見る限り、大阪の東側で震度5の地震が起ったのだなと受け止めるしかなかった。
だから、大阪のコンビニの棚から数個のビン類が落ちているのを店員が拾っている映像が流れたのだ。
そのとき、神戸ではとんでもない事態が起っていたのに。
つまり本当に大変なところほど情報は伝わらない。
インフルエンザであれ、災害であれ。
このことをわれわれは常に念頭に置いておかねばならない。