私は、私自身の成人式には参加できませんでした。
その日は松戸にいなかったので、友人たちと久闊を叙することもなく大変残念でした。
今日の成人の日は思わぬ大雪となり、そのために参加できない人がいなければよいなと思います。
さて、恒例の成人の日の街頭演説はこの雪のために中止になりました。
私が今日マイクを持ってお話したかったのは、やはり友情についてです。
昨年のベストセラーで山本周五郎賞受賞作の『楽園のカンヴァス』(原田マハ)はアンリ・ルソーをモデルにした作品でした。
小説の中で、ルソーが本当に貧乏をし、カンバスや絵の具を入手するためにどれほどの苦労をしたかが描かれています。
当時の若き画家たちはみな貧乏でした。その一人、ミレーは今でこそ晩鐘や落穂拾いという名画で有名ですが、当時は絵が全然売れませんでした。
そんなミレーを見かねて、同じように貧乏なルソーが「君の絵を200フランで買いたいと言っている人がいる」といって買い上げるのです。そんな人はいるはずもありません。ルオー自身が買ったのです。
当時の人たちが笑い転げたというルオーの作品を評価したのがピカソです。
こうした人間関係のどこかが崩れてしまっていたら、現代の私たちは彼らの絵画を楽しむことができなかったかもしれません。
時代よりはるかに進んだ芸術的感覚を正当に評価するのは、同じく先端的な芸術的感覚を持っている人間だけなのでしょう。
そこにたまたま麗しい友情があったからこそ誕生した作品があったわけです。
いつの時代にも友情は有益なもの、そうありたいと思うのです。
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