月別アーカイブ: 4月 2012

企業誘致-いまむかし 

今日の朝日新聞夕刊は『シャープの堺工場 鴻海が筆頭株主に』と報じています。
亀山市にシャープが最新鋭の液晶パネル工場を建て、私も個人的に見に行ったことを昨日のことのように思い出します。今さらながら企業の栄枯盛衰を思います。
三重県はかつてない額の補助金を出してシャープを誘致し、それから今日まで補助金を積んで企業を誘致することが地方公共団体の『常識』になりました。
確かに、勝ち組負け組という観点で自治体を見ると、結局のところ税収など計数的にも企業誘致に成功したところが勝ち組になっていました。ところがここへきて、補助金を出して誘致した企業が相次いで撤退するケースが出てきました。
自治体側は、進出企業が撤退することを想定していませんでしたので、あわてて補助金返還を求めることになりました。
かくいう千葉県も茂原市からパナソニックの工場が撤退し、同社から補助金の返還となりました。
シャープだけではなく、「パナソニックよお前もか」と、商工労働部はショックを隠せません。
一部の政党は「それ見たことか!大企業優先の施策が失敗したのだ」と批判をしますが、地域経済や地域雇用を考えれば企業誘致政策は間違っていないと私は思います。
本当に幸いなことに、この茂原の工場はジャパンディスプレイが引き継ぐことになりました。
これは単に、茂原の話、千葉の話にとどまりません。私は、ジャパンディスプレイがうまく軌道に乗るかどうかはジャパンブランドの技術が生き残れるかどうかという極めて重大な局面だと認識しています。
仮に、ジャパンディスプレイが負け組になることがあれば、もうこの先を引き継ぐ企業はいません。
複数の企業の集合体と言う不利を乗り越えて、なんとしても勝ち残って欲しいと思います。
「技術で勝ってビジネスで負ける」とは最近の傾向のようではありますが、私は「良いものは良い」と言う当たり前の社会であるべしと心から願うものです。

意識を変えるということ

その環境の中にいると『変化』に気づかないことがままあります。
少子化がこれだけ叫ばれていて、頭の中では理解していても、たとえば毎年の小学校の卒業式に参加していてもそれほどの変化を感じません。
ところが、先ごろ25年前のビデオを見せてもらって、当時の子どもの想像を絶する多さびっくりしたのでした。そして、ビデオの中の子どもたちの多さをいったん見てしまうと、改めて現在の少子化の進み具合にショックを受けたのでした。
さて、話は変わります。
千葉県の平成24年度予算を可決したとき、一つだけ気になったことがありました。それは『退職手当債の発行』でした。
前年度予算では発行せずにすみましたが、今回は3・11という未曽有の大災害があり、被災地である千葉県としても財政需要から考えてやむを得ないと思いましたし、むしろ震災の時点ですぐに思ったのは、次の予算ではたとえ退職手当債を発行してでも乗り切らねば・・・ということでした。
そこで、私が気になったというのは、退職手当債を発行しなかったときの千葉県の議会議員と退職手当債を発行した千葉県の議会議員とは同じ意識であってはいけないだろうということです。
予算を決定する議員として、退職手当債を発行しようがしまいが全く意識が変わらないのはおかしい。そこには財政に対する規律意識が数段階は強まっていなければならないと思うのです。
退職手当債を発行したという変化をきちっと抑制的にとらえることのできる議会議員でなければならない。こういう部分の意識をしっかりと変えていかねばならないと思った次第です。

「プロメテウスの罠」から

現在も朝日新聞に連載している『プロメテウスの罠』が、学研パブリッシングから出版され、ようやく読むことができました。
新聞連載が始まった当初から、この連載記事は必ず本になると思っていました。
さて、読んでみて驚くのは原子炉のメルトダウンのみならず、この国の政治の中枢のメルトダウンでした。
首相官邸の動きだけを見ていても、菅さんの人脈に相当助けられているという印象です。むしろ菅さんの判断を少々見直したくらいです。しかし、それは取りも直さず日本と言う国の統治機構が情けないほど無能だということの裏返しに他なりません。
特に、強烈な印象を受けたのは第六章「官邸の5日間」の3月12日の夕方の首相官邸5階執務室でのやり取りです。
1号機の爆発の内容が分からない段階での菅総理、福山首相補佐官、枝野官房長官のやりとりはこんな具合なのです。

菅「東電や保安院から何も報告が上がってこないのはなぜなんだ」
福山「爆発の状況が分かりません。説明のしようがありません。会見を遅らせますか」
枝野「ぼくは行くよ。テレビで爆発の映像が流れているのに、会見まで遅らせたら国民の不安が大きくなる。会見はしますよ」
考え込んでいた菅総理が言います。「うん、やってもらおう」

ここから本文を引用します。
『枝野は午後6時前から、記者会見を始めた。
「福島第一原子力発電所においてですね。原子炉そのものであるということは今のところ確認されておりませんが、何らかの爆発的事象があったということが報告されております」(略)
記者からは原子炉本体が破損しているかどうか、再三問われた。
枝野は「分析を進めている」などと答えるにとどまった。』

何もわかっていない。そういう状態で記者会見を行い、何を言われても平然と同じことを繰り返せる。この神経であればこそいくらマニフェストが総崩れになっても平然としていられるのだなと思いました。
法律では総理が原子力事故対応の責任者となります。しかし、政治家は原子力の専門家ではありません。したがって、それを補佐する官僚がしっかりしていなければならないのは言うまでもないことです。ところが、官僚の側にも専門の知識を持った人がほとんどいないのです。原子力の専門家がいない組織が原子力を推進していたことの驚きと官僚機構のいい加減さをつくづく思い知らされた一書でありました。