日別アーカイブ: 2008年7月20日

道州制はハッピーか?(第218回)

道州制の話題が燻ぶっている。
そして、どの県とどの県が一緒になるかという案も公表された。
この都道府県の組み合わせ一つを見ても道州制が成功するはずがないと私は思う。
大体、弱いところと弱いところが一緒になって強くなるはずがない。
「アイルランドが成功したように、道州制にして法人税を下げれば企業が世界中から来てくれる。」と道州制推進論者は言う。
しかし、一つの道州が法人税を下げれば、他の道州も当然追随するのだから単なる法人税値下げ競争になるだけの話であろう。
「いま経済的に成功しているのは、みな小さな国だ。日本も1億数千万人の国を分割して小さなサイズの国、すなわち道州へ移行すべきだ。」と道州制推進論者は言う。
しかし、北欧諸国やシンガポールは国が小さいからうまく行っているのではない。
国が小さいから産業を特化せざるを得ず、たとえば弱い農業分野を切り捨てて工業に特化する、金融に特化するなどの得意分野に特化するという行為をなしえたからこそ成功しているのである。
わが国で議論されている道州制の分割案は、産業を特化するという観点でなされたものはなく、ただ地理的に東北だ、関東だ、中部だと機械的に分けただけのように見える。
要するに産業戦略的な視点が感じられないのである。
さらに言えば、道州制に移行すれば、みな勝ち組になれるという愚かな思い込みが非常に心配だ。
つまり、われわれは道州制になった場合、何の理由もなくその全ての州がうまくやって行けるという錯覚に陥ってやしないか。
残念ながら、いまの日本を見渡してもうまく行っている地域とうまく行っていない地域の差が歴然としている。
したがって、もし道州制に移行したとすれば、現在以上に地域間格差が生じると考えるべきである。
中には失敗する道州も出てくるだろう。そのときその道州を助けようという機運は少なくとも現在よりは盛り上がらないだろう。
また、何よりも他の道州から助けてもらうことの屈辱感の問題をどう処理するのか。助ける側の州民と助けられる側の州民に生じる優越感と劣等感。
考えれば考えるほど厄介な問題が出てくるのである。
だから道州制がハッピーか?と問われれば、私にはそうは思えないのである。