月別アーカイブ: 4月 2008

嘆くのは誰?(第188回)

ニューズウィーク4月8日号に『「世界最低」ヒースロー空港の嘆き』という記事があった。
3月27日にオープンした『ターミナル5』でエレベーターが停止してしまう、モノレールがダウン、結局80%の便が欠航せざるを得なくなったというのである。
このヒースロー空港の『嘆き』は、われわれの考えている以上のものであることに注意を要する。
これが羽田だった場合は、それはそれで大変な事態ではあるが、ヒースロー空港の嘆きよりは軽度であったろう。
その違いはライバルの有無による。
ヒースローの周辺にはシャルル・ドゴールあり、スキポールあり、フランクフルトあり、である。
みなナンバー1の座を虎視眈々と狙っている。
そしてナンバー1の座を射止める基本戦略は、いかに利用者の使い勝手を良くするかである。
嘆いているヒースローと嘆くことのない我が国空港とどちらが利用者に愛されるかは自明のことである。

第一次産業はどうしたら良いのだろう?(第189回)

小学校に上がる前の幼い頃、年に1回だけ不二家のレストランに連れて行ってもらうのが大きな楽しみだった。
不二家のテーブルにつくと、子どもはミニカーの形のチョコレートをもらえるのだ。
これがうれしい。
ところが、チョコレートは食べたい、でも食べるとミニカーはぺらぺらの銀紙だけになってしまう。
これが悲しい。
世の中は不条理なものだと子どもながらに感じたものである。
2月28日の朝日新聞の和歌山版に『漁業者の年間所得、80万円アップを』という記事が出ていた。
和歌山県が水産業活性化プログラムをまとめ、その目標が220万円の漁業就業者一人当たりの年間所得を80万円アップさせて300万円に増加させることを目指すと言うのである。
漁業者の年間所得がわずか220万円! 県の振興策で300万円を目指す!
これほどさびしい話は無い。しかし、これが現実なのである。
仁坂知事の談話が載っていて「漁業は林業と並んで傷んでいる産業 ・・・」
これでは後継者がでてくるはずが無い。
安くておいしい魚を食べたい。しかし、食べてしまうとぺらぺらの漁業だけになってしまう。

暫定税率廃止で得する人・損する人(第187回)

今日、暫定税率がなくなった。
私が入れているガソリンスタンドでもリッター当たり126円という安さ!
しかし、言うまでもなくこの126円という値段は誰かが負担をするから安くなったのである。
問題は誰が得をするのか?そして誰が損をするのか?である。
暫定税率は「道路を最も利用する人イコール車のユーザー」という受益者負担の原則に基づいてガソリン購入の際に税負担をしてもらう制度である。
暫定税率がなくなってしまったからと言って道路をつくらないわけにはいかないし、道路を改修しないわけにもいかない。
したがって暫定税率がなくなれば、道路を使う頻度に関係なく、場合によってはほとんど使わない人にも負担をしてもらうことになる。
結局自動車を持っていない人ほど大損をすることになる。
そして、よくよく考えてみると移動に自動車を使うことの多い政治家がしっかりと得をするのである。
今回、小沢氏はとうとう禁じ手を使ってしまった。道路特定財源の一般財源化はともかくとして、暫定税率をいきなり無くしてしまうというメチャクチャな手法は小沢氏以外の誰にも出来なかっただろう。
やってしまえば、国も地方も財政が成り立たなくなり、住民の生活に深刻な影響を及ぼすことが明白だからだ。
なぜなら道路財源は単にこれからつくる道路だけではなく、借金をしてすでにつくってしまった道路の返済にも膨大な額が充てられているのだ。
借金返済に充てる金が入ってこないとなれば、国も地方も福祉や医療費にまわす予算を削らざるを得ない。
これは地方自治体の住民、特に弱者の家計に深刻な影響を与えるだろう。
当然のことながら、小沢氏はそこまで知っている。分かっていてやっている。
つまり、「そんなことは俺の知ったことではない。与党が何とかすればいい」と思っているわけである。
どこまで無責任な政治家でもここまでひどくは無いと思う。
小沢氏は本当のところ政権を取りたいと思っていないのではないか。
なぜならこの禁じ手を使ったと言うことは、仮に自らが政権を取ったときにも野党から同じ手を使われることを意味するからである。
そうなれば政治は動かない。
今の国会とまるで同じ構図である。
こうした馬鹿げた事態に付き合わされる国民特に社会的弱者が実は一番損をさせられているのである。