富士山は非常に律儀に300年ごとに噴火をしているという。
そして、前回の噴火が300年前の1707年(宝永4年)12月16日10時ごろであったことから、国立科学博物館では『富士山展 宝永噴火300年』という企画展が行なわれている。
私は、日本火山の会の人たちと同展を訪れたが、それは専門家に説明していただきながらの見学というこれ以上ない贅沢であった。ご関係の皆様に心から御礼申し上げます。
さて、この宝永噴火は12月16日から翌1708年1月1日の16日間にわたっての噴火であったが、展示の中で火山灰がどの範囲にどの程度積もったかという図面が興味深かった。
富士山ハザードマップ検討委員会によれば、火山灰について2センチ以上の降灰で畑作物は1年間収穫不能、1年間牧場が使用不能、0.5センチの降灰で稲作は1年間収穫不能だというので、仮に宝永噴火と同様の事態が起こったとしたら、現在の千葉県農業がどういうダメージを受けるのか非常に気になったのである。
そこで、帰宅してから千葉県農政事務所統計部による平成18年農業産出額をもとに、荒っぽい試算をしてみた。
県内のほとんどの市町村の農業が壊滅的な被害を受けることは明白であるが、そのなかで旭市、香取市、銚子市という産出額県内ベスト3が被害を受けない可能性が高いことが僥倖であった。
稲作、畑作ともに生き残るのが、銚子市、旭市、匝瑳市、香取市、神崎町、多古町、東庄町、横芝光町。稲作だけが助かるのが、野田市、成田市、山武市、富里町、栄町、九十九里町、芝山町とした。
これらの合計産出額は1486億5000万円(畜産は計算に含まず)で、千葉県全体の農業産出額の37%であった。たかだかこの程度の降灰で千葉県農業の6割が壊滅する。まさに富士山恐るべしである。
千葉県には火山がないからと、のほほんとしてられない現実がここにあった。もちろん、農業だけではなくコンピュータの麻痺から信号機の制御ができなくなり道路も鉄道も大混乱をする、そもそもそれを直そうとする保守要員の移動手段が断たれる。ライフラインもストップするのだろう。
もし富士山がこれまで通りの間隔で噴火するとしたら、われわれは生きているうちにそれを経験することになるのである。
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