月別アーカイブ: 10月 2012

放射性焼却灰から見えてくるもの

放射性物質を含む焼却灰の保管問題は『原発ゼロ』政策にも大きな課題を私たちに突き付けました。
それは『廃炉』の問題です。
現在、わが国には51の商業炉があります。
福島第一原発は別にして、それぞれの炉の耐用年数を40年として残りの耐用年数を見てみます。
まず、敦賀の1号機、美浜の1、2号機はすでに耐用年数に達しています。
2年後に耐用年数となるのが、高浜1、島根1号機、3年後が玄海1、高浜2号機、4年後が浜岡1、美浜3号機、5年後が伊方1号機です。実に福島第一を別にしても、この5年間で10機もの廃炉があり、これを今後10年間のスケールでみると、さらに7機が加わることになります。
福島第一は全て廃炉となるでしょうから、今後10年間に合計23基の原子炉を廃炉にしなければなりません。
過去に原子力船「むつ」の原子炉を廃炉処理した例がありますが詳細が示されていません。ドイツで解体したと聞いていますが。
いずれにせよ廃炉には、膨大な放射能汚染物資が生じます。解体作業に使用した機器、器具、作業衣料なども廃棄せざるを得ないからです。東海原発は廃炉に着手する予定になっていますが、これで6万8000トンもの放射性廃棄物の想定です。
焼却灰問題は持ち込む方も被害者、持ち込まれる方も被害者という構図ですし、廃炉時に発生する廃棄物の放射の汚染度とは比較になりません。誰が考えても廃炉にかかわる廃棄物保管や処理法には答えが見いだせません。
おそらく、何十年何百年と密閉状態にしたうえで廃炉という道をたどることになるのでしょう。
その時に原子炉は海岸近くにずっと置かれているわけですから、数百年の津波にも耐えうる防波堤を建設しなければならないことは自明のことです。そして、赤字国債と全く同じように、原子炉の廃炉解体も次世代先送りにせざるをえないのです。
次世代のことを考えれば、廃炉費用の捻出についてわれわれは今から準備しなければならないと思うのです。

国民の金は自分の金

今朝の朝日新聞の社説は『職場放棄はもうやめよ』でした。
これは言うまでもなく、野田首相が国民の生活を犠牲にして、一日も長く政権を保持していたいがために臨時国会を開会しないことの痛烈な批判です。
3党合意によって設置するとした『社会保障制度改革国民会議』もいつになったら設置されるのかわからず、3党合意による簡素な給付措置に必要なマイナンバー法案のめども立たず、さらに特例公債法案もどこかに行ってしまった感があります。
特例公債法案は成立しないと地方交付税が入ってきません。
千葉県のような大きな県ならまだしも、市町村では一時借り入れといっても利払いにも苦労するところが出てくることと思われます。
それに対して、民主党政権からは「地方に迷惑をかけない。利子は国が出す」という声が聞こえてきます。
この勘違いが恐ろしいのです。
国で出すということは、別に民主党が出すのではなく、国民の税金で出すということです。
国民の金を使って「地方に迷惑をかけない」などと普通は恥ずかしくて言えるものではありません。
つまりは、他人の金、国民の金は自分の金という意識丸出しなのです。なぜ国民から預かっている貴重な財源という発想に立てないのでしょうか?
今さらといえば今さらなのですが、「国民生活を犠牲にして延命を図る」「延命のためには国民の税金を使わせてもらう」では民主党の正体見たりです。

震災から1年7か月後のセシウム

夜遅く帰宅すると県庁からファックスが届いていました。
送信元は、千葉県環境生活部自然保護課と千葉県農林水産部農村環境整備課の連名です。
『野生鳥獣肉の放射性物質検査結果について』という表題で、印西市で捕獲された野生のイノシシから、キログラム当たり100ベクレルを超える放射性セシウム(それでも120ベクレルですが)が検出されたという内容です。
千葉県内には4か所の野生獣肉処理加工施設がありますが、現在そのすべてでイノシシ肉の出荷が自粛されています。震災前は東京の有名シェフの店に出荷して地域活性化のシンボルだったところもありましたので残念でなりません。
こうしたセシウムの被害は実は思わぬところにも及んでいます。
原発に代わる新エネルギー発電として期待されている分野にバイオマスがあります。
千葉県市原市の三井造船には、日本最大規模の49900キロワットのバイオマス発電施設があります。(写真参照)
一口にバイオマス発電といっても、本格的に100%木質チップなどを使っているところもあれば、バイオマスとは言いながら石炭や古タイヤなどにバイオマス由来のモノを若干混ぜて発電しているところもあります。ちなみに市原の三井造船は建築廃材を使用しているのでバイオマス発電だと胸を張れます。
さて、そうした木質系の発電所の中で間伐材を使用している発電所がいくつかあります。震災以後、この間伐材に放射性物質が付着して焼却灰から高濃度のセシウムが検出されてしまいました。したがって、現在は間伐材のみを使用した発電は行えておりません。
つまり、脱原発のためのバイオマス発電にまでセシウムが影響しているという実に皮肉な話となっているのです。
私たちは、このセシウムの影響を数十年先まで覚悟しなければなりません。これからも思わぬところに影響が出て来る可能性があります。しっかり監視していかねばと思います。

幸せの5条件

山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したのは本当に喜ばしく、かつ大変明るいニュースでした。
再生医療に道を開く重要な研究成果とのことですので、難病で苦しむ多くの人を救済するべくさらなる研究発展に心から期待しています。
さて現在の日経新聞『私の履歴書』は、ノーベル賞受賞者の根岸英一先生の連載です。そのなかにご自身の経験から幸せの4条件ということが書かれていました。
第一に、なんと言っても『健康』。これが幸せの基礎であることに異論はないでしょう。
第二に、『家族の団らん』。円満な家庭。
第三に、社会に貢献する『仕事』。根岸先生は報酬分以上に社会貢献することがのぞましいと書かれていました。
第四に、趣味。趣味は人生を豊かにすると言うわけです。
こうして4つの条件を見てみますと、一つ一つがなるほどと頷けます。
しかし、育ちざかりに下宿生活していた私としては、どうしてももう一つ付け加えたいと思いました。
率直な気分で言うと『うまい飯』です。
よくよく考えれば、精神的にも肉体的にも健康で、家族が仲良くて、仕事が順調で・・・初めて食事がおいしいのかもしれません。
でも逆に、なにかうまくいかないときに何気なく食べたごはんが「おいしい」と思ったときにぱっと目が開かれるような気分になることだってないとは言えません。
山中教授のノーベル賞受賞からかけ離れた話になってしまいましたが、値段ではなく、高級な食材でもなく『おいしい朝食』を食べたいですね。
(今日も朝食を抜いてしまいましたので、こんな発想になってしまいました)

『ごまかし』2説

『ごまかし』という言葉の由来には二つの説があるそうです。
言語学者の柴田武先生によれば、一つは「部屋に煙が充満するほど護摩を焚いてしまって回りが見えなくなった」という説。
もう一つは、「文化・文政時代に胡麻胴乱という名前の菓子があって、中が空洞になっていた」という説です。
さて、野田総理の周辺からは臨時国会の開会時期が全く見えてきません。これまでは、赤字国債を発行するためには特例公債法案を通さなければならず、万一通らないと財源が枯渇すると言い続けてきたのに実に不思議な話になっています。
「通常国会が終了する夏には通さないと大変なことになる」としていたのが、「秋に通さないと大変なことになる」になり、俳句の世界では冬に当たる「『11月』で財源が枯渇する」という言い方になり、今の雰囲気では11月で通さなくても大丈夫なような雰囲気すらあります。
もし臨時国会を開かないというのなら、そもそも来年の通常国会で通せばよいということになり、これまでずっと『ごまかさ』れていたことになります。
財務省がこれまで主張してきた危機感が、実はごまかしであったことが総理の能天気さによってばらされてしまいました。
財務省が必死で焚いてきた護摩の煙も、総理の責任感のど真ん中に空いた穴からどんどん漏れ出てしまった形です。
しかし、最低限の責務として地方が借りざるをえない一時借入金の利子だけはきっちり払ってもらわねばなりません。これのごまかしは許されません。