日別アーカイブ: 2009年8月3日

格差ゼロはどこへ?(第300回)

民主党のチラシがわが家に投げこまれた。そうなれば、このチラシの内容について触れなければならないだろう。
民主党の5つの約束であるが、財源が示されていないということは既に周知のことなのでそれ以外の指摘をしたい。
第一の「ムダづかい」の項目に「企業団体献金の禁止」とある。これは3年後に禁止するという内容のはずだが、チラシでは「3年後」というのをわざと隠している。不誠実としか言いようがない。
日本経団連とのやり取りの中で「今すぐ禁止してしまえばわれわれは干上がってしまう(だから3年後に禁止なのだ)」という民主党の真島政調会長の本音発言は前回の「独り言」で触れたところである。
第二の「子育て教育」の項目には、「子ども手当」と「高校の実質無償化」というのがあるが、これには所得制限が課されていない。
つまり所得の高い人にも「子ども手当て」や「高校授業料の補助金」が渡されることになる。
これはまさに格差拡大の政策 である。
「格差ゼロ」社会の実現とか「負け組」ゼロというこれまでの主張に完全に矛盾するがどう言いつくろうのだろうか?
お金があり余っている国ではない。財政赤字の国なのである。バラマキそのものではないか。
格差を是正するなら、所得の高い人に補助するのではなく、低所得の人により手厚い補助をすべきであろう。
第3の「年金医療」では、「年金通帳で消えない年金」とあるが、これも意味が分らない。
年金通帳というのは、あたかも銀行の預金通帳のようなものと錯覚させるための名称かと勘繰りたくなる。
預金通帳は即座に記帳が出来るわけだが、年金通帳はそのようなわけにはいかない。
すると、今の「ねんきん定期便」とさほど変らない情報量となり、莫大な予算をかけてわざわざ通帳を発行することがまさに「ムダづかい」になるかも知れない。
思いつきの政策のような気がする。
さらに「後期高齢者医療制度は廃止し、医師の数を1.5倍にします」とある。これも作為ある言い方だ。
まず、後期高齢者制度と医師数とは特に関係がない。あたかも後期高齢者制度が医師数を制限しているように書いてある。
作為というよりも、むしろ悪意に近いものを感じる。
そして、仮に後期高齢者医療制度を廃止するなら、その後どうするかを明確にしなければ。
従来の老人保健制度では、市町村間で保険料の格差が拡大して破綻するのが時間の問題だった。だから後期高齢者医療制度の創設となったのである。
これにより格差は2倍程度まで縮小したが、まさか元の老人保健制度に戻すのではないと思う。
そのまさかであるのなら、市町村へ渡さねばならない財源がさらに必要となるがこの点の考えを示さなければならない。
ただ単純に「廃止します」では政党として無責任極まりないし、政権担当能力が疑われる だろう。
第4の「地域主権」では「農業の戸別所得補償制度の創設」とある。
これも頑張っている農家も頑張っていない農家も所得補償することが良いのかどうか?
これを実施してしまうと、頑張っている農家がやる気を失ってしまうだろう。
頑張っている人たちをこそ応援する施策でないと、かつて共産国が経済的に破綻したようにわが国農業を壊滅に追いやりかねない。
ましてや食料自給率の向上は不可能となるだろう。
また、高速道路の無料化や郵政事業の抜本見直しが何を意味するのか分らないが、すでに3年前に分社化され民営化された高速道路株式会社や郵政事業で働く人たちをもう一度公務員・準公務員に戻すのだろうか?
そんなことを国民は望んでいるのだろうか?
以上、長くなってしまったが民主党のチラシに対しての私の感想である。
本当に民主党の政策でこの国が運営できるのか、一向に疑問は晴れず、ますます疑わしく思えるのである。