月別アーカイブ: 8月 2009

平成20年のラスパイレス指数は?(第303回)

総務省の「平成20年地方公務員給与実態調査」によれば、地方公務員の給与水準は平成16年以降5年連続で国家公務員を下回っているという。
平成20年4月1日でのラスパイレス指数は全国平均で98.7となっている。
地方財政は総じて非常に厳しい状況にあるが、民間企業と異なり一義的には財政の厳しさとの連動はない。
千葉県は100.6で都道府県の中では15位となっている。これは国家公務員の水準は上回るが、その一方で財政の厳しさから県独自で3%の給与削減措置を取り続けている。
政令市の比較では千葉市が102.3で17市の中で第7位、中核市の比較では39市の中で船橋市が105.2で第1位、柏市が101.1で第13位となっている。
これら以外の一般市では武蔵野市104.6が第1位で夕張市の68.6が最下位である。
したがって、平成20年度の全体の第1位は船橋市となった。
千葉県内の上位市を追っていくと、成田市が103.6、我孫子市が103.5、市川市が103.2となっている。
これらの水準が高いか低いかの判断を求められるのが地方自治というものであり、こうしたラスパイレス指数のような情報を多くの有権者が共有しなければならないのだと思う。
ところが、その一方で勤務内容がハードなのかそうでないのかという仕事の厳しさとの連動がまるで分らない。
しかも実際には、各種手当ての水準の適正化のチェックも必要だ。
扶養手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、管理職手当、特地勤務手当、時間外勤務手当、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、寒冷地手当などなどだ。
このうえに退職金の問題もある。
2006年に調整手当てがなくなり、地域手当というものが創設された。
給与水準の引き下げにともない創設されたのだという説明である。
この地域手当ての支給割合が全国ばらばらで、これまたよく分からない。
かつて千葉県議会で職員給与の特殊手当について茨城県との比較しながらただしたことがある。
答弁を聞きながら思ったことは、なるほど茨城よりは千葉の方が手当てが少ないようだが、全国で見ればどうなのだろうということだった。
茨城県を調査するのも正直なところ四苦八苦だった。当時は、これを全国規模で調査するのは気の遠くなる作業だなと思った。
しつこさと嫌われても気付かない振りをする根性が必要だとしみじみ思った。
司馬遼太郎「竜馬がゆく」に登場する勝海舟のように「百聞は一見にしかず」を貫きながら地道に調査を続けたい。

知事会財政試算の衝撃(第302回)

全国知事会「地方財政の展望と地方消費税特別委員会」の地方財政推計は予想されていたこととは言え衝撃的だった。
千葉県財政の厳しさもさることながら、やはりどの県も五十歩百歩だったことがあらためて明らかになった。
知事会の推計によれば、都道府県は2012年度の段階で今後の経済成長率が底ばいのケースでは13兆1000億円、順調に経済が回復したケースでも9兆1000億円の財源不足となり、どちらのケースであっても都道府県財政は2010年度、市町村財政は2012年度に破たんする というのである。
そして、仮に財政破綻を回避するために歳出削減を行ったとすると、どういうサービス削減になるかという例示もあげられている。
たとえば「公立小中学校の学級編成基準を40人から60人にする」
たとえば「全国1000か所の公立病院が経営危機に陥る」という具合である。
このように、たとえマイナス面であっても具体的事例を掲げる手法は非常に分かりやすい。
一方、2009年度の「普通交付税大綱」を見ると交付税不交付団体は市町村で151団体へ落ち込み、何と都道府県では東京以外は全て交付団体となった。
首都東京が唯一の不交付団体というあまりに異常な事態である。
ここまでひどいと、やはり制度自体がおかしいと言わざるを得ない。
税を納める者と税を集める者と税を使う者とが異なる状況ではただでさえモラルハザードが起りやすい。
ここまでひどくしてしまったのは、このモラルハザードを的確にチェックする仕組みに欠陥があることを意味している。
この一点を素直に認めることが出発点だとわたしは思う。
ここから、ではどういう仕組みを作るべきなのかの議論が始まるのである。
国と地方の関係の抜本的な見直しは、もはやまった無し。実は時代が要求しているのである。

高齢者の医療をどう確保するか(第301回)

高齢者医療をどうするのかという観点からマニフェストを点検してみたい。
公明党のマニフェストは、長寿医療制度について以下の約束をしている。
●低所得者等の保険料負担の軽減措置を継続します。
●被用者保険の被保険者であった方については被用者保険に引き続き加入できるように配慮措置を講じます。
●外来における窓口負担の自己負担限度額の引き下げを行います。
●公費5割、現役世代の支援4割、高齢者の保険料1割の負担割合のうち、公費負担引き上げを行い保険料の軽減を図ります。
わが党はあくまで長寿医療制度そのものは維持しながら、どう改正していくかに心を配っている。
その具体策が低所得者に対する保険料軽減や保険料軽減、外来窓口負担の軽減である。
では、なぜ長寿医療制度を支持したかといえば、従来の老人保健制度ではあまりに地域格差が拡大しすぎて、ついには破綻するところが出てしまうのが時間の問題だったからである。
要するに市町村単位で維持するのは不可能で、制度を維持するためにはもう少し大きな県レベルに拡大しなければならなかったのである。だから長寿医療制度は都道府県の規模での運営となっているのである。
これに対して民主党のマニフェストにはこう書かれている。
●制度、関連法は廃止する。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。
●被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的に運用を図る。
これは、長寿医療制度を廃止して国民健康保険にもどすというのである。
元に戻せば、運営が市町村単位になり破綻するところも出てくるだろう。
これに対してどうするのかはまるで分らない。
その一方で、●国民健康保険財政の地域間格差を是正する、というのである。
われわれが知りたいのは、都道府県規模の運営を市町村単位に戻してしまって、どうやって「地域間格差」を是正していくのかということなのであって、まるで答えになっていない。
民主党の試算によれば、元に戻すのに8500億円がかかるというのだが、もちろんそれは国民に負担してもらうのだという。
結局のところわざわざ制度を元に戻して、その費用はわれわれが負担させられるわけである。
共産党は、基本的に民主党と同じマニフェストである。
●制度は廃止し、老人医療制度に戻します。これにともなう国保の財政負担は国が補てんします。
「国が負担する」とは何と響きの良い言葉であろうか。
しかし、これを正確に書けば、国イコール国民であり、何のことはない「国民が負担する」ということなのである。
共産は「窓口負担をゼロにします」とも言っているが、要するにわれわれの税金でその分が負担されるのであって、共産党が負担してくれるわけではないのである。
まとめて言えば、民主も共産も老人保健制度の矛盾をどう解決するかに全く触れず、赤字になればその分税金をどんどん投入すればいいという考え方である。
これは、血税を使ってただ機械的に赤字分を補てんするだけであり、こんな結論ならば政治家不用である。
もっとも民主のマニフェストには、ムダをづかい』の項目の中にちゃんと『国会議員』が入っていのだが。

格差ゼロはどこへ?(第300回)

民主党のチラシがわが家に投げこまれた。そうなれば、このチラシの内容について触れなければならないだろう。
民主党の5つの約束であるが、財源が示されていないということは既に周知のことなのでそれ以外の指摘をしたい。
第一の「ムダづかい」の項目に「企業団体献金の禁止」とある。これは3年後に禁止するという内容のはずだが、チラシでは「3年後」というのをわざと隠している。不誠実としか言いようがない。
日本経団連とのやり取りの中で「今すぐ禁止してしまえばわれわれは干上がってしまう(だから3年後に禁止なのだ)」という民主党の真島政調会長の本音発言は前回の「独り言」で触れたところである。
第二の「子育て教育」の項目には、「子ども手当」と「高校の実質無償化」というのがあるが、これには所得制限が課されていない。
つまり所得の高い人にも「子ども手当て」や「高校授業料の補助金」が渡されることになる。
これはまさに格差拡大の政策 である。
「格差ゼロ」社会の実現とか「負け組」ゼロというこれまでの主張に完全に矛盾するがどう言いつくろうのだろうか?
お金があり余っている国ではない。財政赤字の国なのである。バラマキそのものではないか。
格差を是正するなら、所得の高い人に補助するのではなく、低所得の人により手厚い補助をすべきであろう。
第3の「年金医療」では、「年金通帳で消えない年金」とあるが、これも意味が分らない。
年金通帳というのは、あたかも銀行の預金通帳のようなものと錯覚させるための名称かと勘繰りたくなる。
預金通帳は即座に記帳が出来るわけだが、年金通帳はそのようなわけにはいかない。
すると、今の「ねんきん定期便」とさほど変らない情報量となり、莫大な予算をかけてわざわざ通帳を発行することがまさに「ムダづかい」になるかも知れない。
思いつきの政策のような気がする。
さらに「後期高齢者医療制度は廃止し、医師の数を1.5倍にします」とある。これも作為ある言い方だ。
まず、後期高齢者制度と医師数とは特に関係がない。あたかも後期高齢者制度が医師数を制限しているように書いてある。
作為というよりも、むしろ悪意に近いものを感じる。
そして、仮に後期高齢者医療制度を廃止するなら、その後どうするかを明確にしなければ。
従来の老人保健制度では、市町村間で保険料の格差が拡大して破綻するのが時間の問題だった。だから後期高齢者医療制度の創設となったのである。
これにより格差は2倍程度まで縮小したが、まさか元の老人保健制度に戻すのではないと思う。
そのまさかであるのなら、市町村へ渡さねばならない財源がさらに必要となるがこの点の考えを示さなければならない。
ただ単純に「廃止します」では政党として無責任極まりないし、政権担当能力が疑われる だろう。
第4の「地域主権」では「農業の戸別所得補償制度の創設」とある。
これも頑張っている農家も頑張っていない農家も所得補償することが良いのかどうか?
これを実施してしまうと、頑張っている農家がやる気を失ってしまうだろう。
頑張っている人たちをこそ応援する施策でないと、かつて共産国が経済的に破綻したようにわが国農業を壊滅に追いやりかねない。
ましてや食料自給率の向上は不可能となるだろう。
また、高速道路の無料化や郵政事業の抜本見直しが何を意味するのか分らないが、すでに3年前に分社化され民営化された高速道路株式会社や郵政事業で働く人たちをもう一度公務員・準公務員に戻すのだろうか?
そんなことを国民は望んでいるのだろうか?
以上、長くなってしまったが民主党のチラシに対しての私の感想である。
本当に民主党の政策でこの国が運営できるのか、一向に疑問は晴れず、ますます疑わしく思えるのである。