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あまりにアバウトな交付税論議

20170511地方財政記事5月10日の日経新聞に経済財政諮問会議の議論が報じられました。
『地方の基金 残高21兆円』『諮問会議 見直し要求へ』というものです。
国から地方交付税を受け取りながら地方自治体は基金をため込んでいるので交付税の見直しを求めるという内容です。
何とアバウトな議論なのかと思います。
年間で7900億円の増加ですから、自治体当り約4億円の増加です。
国は、いきなり地方交付税を削減した前例がありますので、日々の住民サービスを担っている自治体なら貯金しておかねばと思うのが普通です。
さらに、口蹄疫で畜産業が壊滅的打撃を受けたり、不況で地場産業が苦境に陥ったりという万一にも備えなければなりません。
その時に「まったく備えはありません」と国や県に要請すれば済むのでしょうか。
そんな首長は当選できません。住民の生活がかかっているのですから。
仮にも、交付税の見直しを言うのであれば、すべての自治体のおかれた状況を綿密に把握して欲しいものです。
また、「基金が増えたら交付金を減らす」という発想も問題です。それは無駄遣いへのインセンティブに他なりません。
諮問会議には、1800の自治体の目にたえうる議論をお願いいたします。

地方財源の見直しを

20170409無線LAN国の平成29年度予算の中に「公衆無線LAN環境整備支援事業」がありました。
無線LAN整備の際、財政力指数0.8以下の団体に補助率2分の1、0.4以下には3分の2の補助をするとされています。
財政力指数とは、自治体の基準財政収入額を基準財政需要額で除した数値であり、1以上ならその自治体内の税収入等を財源として行政を遂行できることを意味します。
さて、千葉県内自治体の財政力指数はどうでしょうか。
1以上の団体は、浦安、成田、袖ヶ浦、市川の4市です。そして、0.8以下の団体は28、0.4以下の団体は3です。
つまり、県内自治体の財政力指数はかなりばらけています。
ところが、都道府県では様相が一変します。
1を超えるのは東京都のみであり、0.8以上の団体は神奈川と愛知しかないのです。
その一方で、0.2台の団体が4団体、0.3台が14団体もあり、実に27団体が0.5以下なのです。
せめて半数が0.8以上になるよう、地方財源の見直しを強く求めたいと思います。

夕張市の新たな挑戦

3月8日の日経新聞は、10年ぶりに総務相が夕張市の新規事業を認めることを報じています。
財政破綻した夕張市は、徹底した歳出削減と市民税や公共料金を引き上げなどを強いられてきました。
ところが、そうした夕張市再生計画が、結果として人口流出を加速し、地域の存続の危機を招いたということのようです。
そこで、国が特別交付税を出すなどして、子育て支援などを行うことを決めたという記事でした。
夕張市の財政破綻は、観光開発に巨額投資をして失敗したことが原因ですが、その淵源は人口減少につきます。
夕張ほどの急激な人口減が起これば、首長が起死回生の手を打とうとすることも理解できなくもありません。
本来なら投資資金を貸付けた金融機関にも破綻の責任があるはずですが、債権放棄を迫られれば今後一部自治体への貸付を躊躇するかもしれません。
見方によれば、夕張市は全国自治体の円滑な資金調達のために犠牲になったとも言えます。
さて、夕張市は今後10年間で113億円の新規事業を行うとのことです。その内容は市営住宅や市立診療所への投資、2子以降の保育料軽減や中学生までの医療費助成など、新規事業と言ってもそれほど目新しいものはありません。私には、これで夕張に人が集まるとは思えないのです。
本当に夕張市に人を呼び込もうというのなら、全国自治体の施策を超えた内容でなければなりませんが、果たして総務相はそこまで考えているでしょうか。
中途半端な施策でお茶を濁そうと言うのであれば、私は特別交付税を出す意味がないのではないかと思うのです。

権限なきところに責任なし

20161205%e5%9c%b0%e6%96%b9%e8%a1%8c%e6%94%bf「地方行政」12月5日号に『地方財政計画の役割』という記事がありました。実は、これには伏線があります。
1か月ほど前、地方財政計画を巡って財務省が総務省に「歳入の見込みが甘い」と苦言を呈したのが発端です。
しかし、この問題の最大の問題点は、当事者である地方自治体がまったく議論に参加できていないことなのです。
地方財政計画に大きな影響を受ける自治体の頭ごなしに、計画策定に関わっている両省がやりあっているという構図です。
しかし、決定権もなく、何を言われても対応する術もない各自治体にとって、「歳入見込みが甘い」と批判されても困惑するだけというのが本音かと思います。
言うまでもなく「権限なきところに責任なし」が大原則なのですから。

新たな財政指標を

20161115%e5%ba%83%e5%a0%b1%e3%81%be%e3%81%a4%e3%81%a9最新の「広報まつど」11月15日号に、松戸市の家計簿として「財政事情の公表」が掲載されています。地方自治法283条の規定により、住民への公表が義務付けられているのです。それにより住民による監視を期待しているのですが、この程度の概要ではほとんど何も分かりません。
さて「財政事情の公表」のなかに「健全化判断比率等」と書かれたところがあります。
これは、夕張市の財政破綻の反省から設けられた数値で、「早期健全化基準」を超えていると黄色信号、「財政再生基準」を超えると赤信号という訳です。
松戸市は、4つの比率のうち3つはそもそも赤字ではないので算定されていません。実質公債費比率は0.2%で非常に良好です。ところが、おそらく財政担当者全員が財政は厳しいという認識のはずです。
数値は「健全」でも財政は厳しいということは、要するに基準が甘すぎるか、基準そのものがおかしいことを意味します。
そこで私は、新たな基準を打ち出すか、少なくとも現実に即した基準への見直しをすべきと訴えています。