リニアの異常な語られ方

時折、JR東海が計画するリニア中央新幹線の話題がテレビや新聞にでる。
その報道のされ方が私の心を暗くする。
南アルプスを迂回するかトンネルで抜けるかというルートの比較が常に金額ベースなのである。
甲府から茅野、飯田の伊奈谷ルートは5兆7400億円、甲府から茅野、木曽福島の木曽谷ルートが5兆6300億円なのに対して南アルプスをトンネルで貫く直線ルートは5兆1000億円だなどという金の話ばかりである。
金で比較すれば、何となく直線ルートで決まりと言うイメージにさせられるし、実際、国土交通省記者クラブでの大臣会見などを見てみると記者の質問も最初から直線ルートがベストと言う前提のやり取りとなっている。
もう完全に報道のされ方に洗脳されているように思えてならない。
南アルプスがどういう自然を有し、どういう山岳地帯かという考察がすっぽり抜け落ちているのである。
自然を守ることは金では換えられないことなのに。
しかも、相手は偉大なる赤石山脈だ。
無残なスーパー林道の建設にも信じられない思いだったが、いまだにその反省が無いということがさらに信じられないのである。
私は率直に言って、このリニアの計画自体が『コンコルドの錯誤』の繰り返しになるような気がしている。
巨大プロジェクトであるがゆえに失敗すると分かっていてストップできなかった人間の愚かさと悲劇 である。
それでもコンコルドは金を捨てるだけで済んだ。
しかし、リニアは金だけではなく自然破壊という途方も無い代償がセットになっているのだ。
こと山岳に関しては、せめて南アルプスと北海道の大自然だけは守り抜きたいのである。


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