八ツ場ダムについて言えること(第327回)

ダムの問題は厄介だ。
建設が決まってから工事着工までに何十年もかかることが珍しくない。そして着工してからもまだ数十年かかるのである。
八ツ場ダムのように57年、すなわち建設計画決定から半世紀もたってしまえば時代状況がすっかり変ってしまう。
私が中学生だった1970年前半には、多目的ダムはある意味で豊かさのシンボルであり、「ムダの反対、ダム」と合言葉のように語られていた。
ところが、国も自治体も厳しい赤字財政に陥り、ハコモノや巨大公共事業が悪とされる時代になるとダムすべてが否定されるのである。
八ツ場ダムが必要か不必要かと言われれば、私は「必要だ」と言うしかない。
なぜなら八ツ場ダムが果たすであろう治水効果を、八ツ場ダム無しに実現しようとすれば莫大な費用がかかるからである。
第一に、河底を掘るにしてもその莫大な土を捨てるところが国内に無い。
第二に、堤防の嵩上げは、現在でも5メートルでギリギリに守っている状況に対して、さらに2.5メートル上げねばならないとすれば破堤の危険性がある。
現在の状況ですら漏水が生じているのである。万一、堤防が決壊するようなことがあればそれこそ取り返しがつかない悲劇を生む。
第三に、堤防を外側に引いて河自体を拡幅するには住宅が密集してしまっていて補償金だけではなくさらに数十年の歳月が必要だろう。
利水については渇水期にはどうかという観点が必要だ。
本来、渇水期であっても銚子の河口堰に毎秒30トンの水を流さねばならないことになっている。
そうでなければ海水が逆流して塩害をもたらすのである。
ところが、渇水期になると実はこの30トンが確保できていない。
つまり、渇水期には本当は取水してはいけない水まで取水している現状なのである。
したがって、治水の面でも利水の面でも、もっとも効率的に予算を使うことを考えると八ツ場ダムの建設を進めるという結論となる。
それでも中止するというのなら、この論理を覆すアイデアや理由を明らかにして欲しい。


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