「天下り」の定義にみる民主党の変貌(第328回)

民主党は、日本郵政の社長に元大蔵省事務次官を、さらには人事院人事官に元厚生労働省事務次官を起用すると言う。
しかも日本郵政にいたっては、副社長にも大蔵省出身の前内閣官房副長官補を就任させた。これほどあからさまな「天下り」・「渡り」人事は無いだろう。
ここでもう一度、民主党のマニフェストを見直してみたい。
最初のアピール文には『官僚任せではなく、国民の皆さんの目線で考えていきたい。』と高らかに掲げてある。
また、鳩山政権構想の根幹となる5原則の第一番目が『官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ』である。
そして何よりも、5原則の下に5策を実行するとして掲げ、その第5策の冒頭には『天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する。』 とそのものズバリが書いてあるのだ。
にもかかわらず事務次官を起用する人事である。
『天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する』とした張本人の民主党自身が斡旋をしているのである。
ここまで国民を馬鹿にするのかと思う。
すると今度は、11月6日の衆議院議院運営委員会に天下りの定義に関する文書を出してきた。
それによれば、天下りとは『府省庁が退職後の職員を企業・団体などに再就職させること』だとし、府省庁のあっせんによらなければ天下りではないのだそうだ。
「渡り」についても『府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることを複数繰り返すこと』と説明した。
民主党自身にも嘘をついたという後ろめたさがあるから今ごろになって天下りの定義などという苦しい言い訳を出してきたのであろう。
しかし、これはやはり国民目線ではおかしいと思う。
第一に、民主党自身がこれまで「あっせんがなくても関係省庁との関係があると疑わしい場合には天下りに当たる」と主張していたのである。
亀井大臣の意向による日本郵政社長人事、副社長人事は決定の経緯がわからず、何か裏がありそうで非常に疑わしい。
第二に、省庁のあっせんによる再就職はだめだが、政権党のあっせんなら良いとすれば、政権党は府省庁にも民間企業側にも強烈な影響力を持つことになる。
官僚は、国民を見るのではなく政権党の顔色を伺いながら仕事をするようになる可能性が高い。
そもそもあっせんが無かったとしても、官僚が民間企業へ再就職すれば、その官僚の出身府省庁がその民間企業に便益を図らないと言う保証が無い。
だからこそ民主党は『全面禁止』を掲げたのではなかったか?
そこに国民は期待を寄せたのである。
しかし、選挙が終ってからまだわずかな期間が過ぎたばかりだと言うのに民主党は国民の期待を大きく裏切ったと思うのである。


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