社会経済現象に確答なし(第389回)

渡辺喜美氏(みんなの党・代表)が、あるインタビューの中で面白いことを言っていた。(鳥巣清典著『絶対に受けたい授業 「国家財政破綻」』青志社)
— 日本がやるべきことは何ですか?
「まず、マクロ政策です。財政・金融一体政策。マクロ政策というのは、財政政策、金融政策、為替政策に分かれます。1930年代に高橋是清さんが大蔵大臣としてとった政策は、財政は拡張、金融は緩和、為替は円安。この3本の矢で、日本はみごとにどの国よりもいち早くデフレから脱却していきました。今、同じことを行えば、デフレからの脱却はできます。(以下ずうっと続くが略)」

もちろん私には、ここまで明確に言い切る自信はない。
なぜなら社会現象、経済現象には、こうすれば100%こうなるという確答が無いと思っているからだ。
今もデフレ社会であるから、高橋大臣よろしく3本の矢をつかえばデフレ脱却できると本当に言い切れるのかどうか?
そもそも高橋大臣の3本の矢でデフレが脱却できたのかどうか?
高橋大臣の3本の矢が無くてもデフレ脱却ができたのではないか?
結論を出す前に検討すべき議論がまだまだいくらでもある。
まず第一に考えなければならないことは時代性である。
なぜなら高橋是清大臣の時代は2・26事件の時代だ。
これから戦争へ突き進んでいく時代である。
言うまでもないことだが、戦争の時代とはインフレの時代だ。
日用品などの消費財も、消費財を作る機械などの生産財も軍需に回されたり、敵の攻撃により破壊されたりするのが戦争の当たり前の姿だ。
「日本はみごとにどの国よりもいち早くデフレから脱却していきました」という渡辺発言は決して誇らしく言うべきものではないと私は思う。
それは単に、当時の日本においては製品を作る機械はほとんど欧米製であり、生産力が脆弱だった。
欧米よりも生産力が脆弱だったから、欧米よりも早くインフレになってしまった。
渡辺さんと異なり、私はこういう風に見るのが真実に近いと思っているのである。
したがって、高橋さんご本人がご自身の政策を誇らしく思っていたかどうかとも思う。
私は、社会現象や経済現象を明確に説き明かして見せる人ほど、眉に唾をつけて話を聞く人という風に思っている。
仮に高橋政策をやってみて失敗したら、それこそ目も当てられぬ借金だけが残るだろう。
財政危機が深まれば深まるほど続けば続くほど、こうした危うい財政・金融政策、眉つば財政・金融政策が飛び交い続けるのであろう。


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