日別アーカイブ: 2011年2月21日

分別ある大人の行動(第498回)

世の中の複雑さが判断を誤らせているのは事実である。
「風が吹けば桶屋が儲かる」といった一見結びつかない事象と事象が密接に絡んでいたりする。
週刊「東洋経済」2月26日号の土居丈朗慶応大学教授のコラム「減税の後に何をするのか」はそれを端的に指摘している。
コラムは名古屋市や愛知県の住民税減税を俎上に載せている。
『名古屋市や愛知県は、不況期に国税が財源である地方交付税を国から受け取ったり、地方債を発行したりする状況におかれている。』

『地方交付税の財源は、名古屋市や愛知県の住民だけでなくほかの地域の住民も負担している』

『地方債の返済財源は、返済時の将来の住民が負担することになる』

『ほかの地域の住民や将来の住民に依存しながら歳出削減の恩典を現在の住民だけに与えていることにほかならない』
まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」風の、「人に負担させて減税を享受する」類の話だというわけである。
この名古屋市や愛知県の減税が成り立つには、他の地域が同じことをやらないという条件がつく。
もし、「ではわが市でも、わが県でも減税をやろう」となった場合は、ただただ将来の借金が増えるだけということになる。
経済学の教科書にはこれを『合成の誤謬』というと書かれている。いわゆる経済学のイロハである。
しかし、財政の話は複雑であり、複雑なものは実感しにくく、人は誤りを犯しやすい。
誤りに気付いたときに誤りを訂正できるかどうか。
それが分別ある大人の行動ということになるのだろう。