日別アーカイブ: 2010年8月5日

個室・多床室論争(第396回)

特別養護老人ホームの在り方についての議論がある。
国が進める「個室ユニット化」が本当に良いのか?という議論である。
介護保険法第1条(目的)には『(略)要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、(略)』とある。
このなかのピンクで示した『尊厳を保持し』が重要である。
多床室で尊厳を保持できるのか?という議論が一方ではある。
限られた予算の中でより多くの人が利用できるようにするためには多床室が必要だという議論が一方ではある。
「では、あなたは個室を選ぶか多床室を選ぶか?」「いや、私自身は個室だ。」「そうでしょう。おそらくほとんどの人がそう思っている。それでも多床室をつくるとするとそれは間違いなく空き部屋となり無駄になる」というやり取りもある。
つまり、自分は個室を選択するのに他人は個室でなくてよいというのはおかしいというわけだ。
これに伴い、ある社会福祉法人は多床室を順次個室化している。
ある社会福祉法人は逆に多床室を増やしたりしている。
さて、私は思う。
一般に、どんな政策も100%の人が賛成することはあり得ない。どのような政策であれ必ず反対はある。
したがって、条例の書き込みではやはり個室も多床室も両法作れるようにすべきだ。
何も選択肢を減らす必要はないのではないか?。
そのうえで、どちらを選ぶかは設置法人に任せるしかないのではないか?
個人の尊厳の具体化まで公的機関が踏み込むとロクなことはないように思うのである。