日別アーカイブ: 2009年7月11日

検証!雇用のセーフティネット

1980年ごろは、統計数値を使った原稿を書くのに、よく政府刊行物センターへ足を運んだものである。
仕事柄、ある程度自由に出歩くことが許されていたので、デスクワークの気分転換と一石二鳥であった。
自分の書きたい分野のデータがどういう書籍にあるのか刊行物センターの本棚で迷う時間を楽しんだ。
今はインターネットという圧倒的に強力な武器があるので利便性は100万倍増加したものの楽しさは半減だ。
今週号(7月18日号)の週刊ダイヤモンドの人気コラム『「超」整理日記』(野口悠紀雄氏)を読んでいて引っかかった箇所があった。
『厚生労働省が六月三〇日発表した五月の雇用調整助成金の利用申請状況によると、対象者数はじつに約二三四万人に上る。これは完全失業者数三四七万人の七割近くに相当する。』
ここに書かれている数字がたとえ間違っていなかったとしても、雇用調整助成金の支給を決定した人数ではない『申請者数』と『完全失業者数』を比較することが果たして適当かどうか?
こういう引っ掛かりがあると、数字全体を調べてみたくなるのであるが、インターネット誕生以前ではあまりに大変な作業が想定されるので調べることはありえなかった。
ところが、インターネットではこれまでとは比較にならぬほど簡単に調べられるのだ。
(してみると、私も権威も何も無い独り言とは言え、『ふじいの独り言』を打つキーボードの指が止まりがちになる。)
さて、厚生労働省発表の『雇用調整助成金に係る支給決定状況』によれば、平成21年度4月の」対象者は52万2370人だ。
4月の一ヶ月の人数とは思えない多さである。
この数字は野口氏の数値よりはずいぶんと低く見えるのではあるが、実際には平成21年1月の4150人が2月には5倍の2万1575人、3月はさらに約10倍の21万2348人という激増であり、その上での4月の52万2370人でなのある。
したがって、野口氏の警鐘・警告は内容的には間違いない。
もしかすると平成21年という括りや21年度という括り方をすると、現実は野口氏の指摘よりもひどい結果となる懸念すらある。
逆に言えば、政府与党の創設した中小企業緊急雇用安定助成金や大幅に拡充した雇用調整助成金が今しっかりとセーフティーネットたり得ていると言えるのである。