日別アーカイブ: 2008年3月26日

信頼社会的哀憐作業(第183回)

昨今の犯罪たとえば「振込め詐欺」や「食品偽造」などを見ていると、いまさらながら信頼社会の怖さを思う。
日本という国はモノを定価で売買する国だ。
それはおそらく島国ないし移動の少ない閉ざされた社会の中でひとたび信用が失われては相手にしてもらえないと言う風土のなかで自然に育まれてきた慣行だろう。
業者間の取引でも、中国人社会のように仕入れ商品を一つ一つ重量があっているか、仕様が間違っていないかなどといった確認作業は行わない。買うほうも売るほうも信用第一に行動様式が統一されている。これがジャパンスタンダードなのだ。
ところが昨今の犯罪は、このジャパンスタンダードを逆手に取っている。そこが恐ろしい。
食の安全ということに絞って言えば、北海道の食肉卸会社「ミートホープ」のような業者の出現がそれを端的に物語っている。
そこで思うのはJAS法である。実はミートホープは同法違反ではなかった。
JAS法違反に問えるのはあくまで消費者に直接の被害や不法行為が及んだときであって、ミートホープが卸として業者に対して不法行為を行ったとしてもJAS法では裁けないのである。
これもまた業者同士の取り引きにおいてはお互いに不法行為をしないものと言うジャパンスタンダードが思想の根底にあるのだと思う。
しかしながら、そんな麗しい関係とは決別しなければならない時代となった。
今後、われわれはジャパンスタンダードを一つ一つ見なおすという、コストばかりかかる悲しい作業をしていかねばならないのであろう。