遭難をまったく報じない新聞がある中で、本日の毎日は社会面、読売は社会面だけではなく1面でも大きく報じたのが目を引きました。
中部山岳は、厳冬期と変わらぬ積雪量ですし、天気が崩れれば6月初旬でも猛吹雪というのが立山・剣では当たり前です。
実は、私は大学2年の3月、北アルプス後立山で滑落事故を起こしています。
風にあおられてバランスを崩し、そのまま何百メートルも滑落しました。
練習通りの滑落停止姿勢に入ろうとしましたが、スコップやザックがあってうつ伏せになれません。
そのうち、背負子以外の荷が吹っ飛んだのでようやくうつ伏せになれてピッケルを斜面に打ち込みました。
しかし結果は、跳ね返されてピッケルが飛ばされてしまいました。
バンドを手繰ってもう一度ピッケルを持ち直して打ち込みましたが、スピードは落ちません。
止む無く、教科書ではやってはいけないとされているアイゼンでの制動を試みました。
これもそれほど効果があったとは思えませんでしたが、雪質によっては「やるべき」と思いました。
滑落しながら、生き残るためのいろいろな方策を考えましたが、結局は止まろうが止まるまいが滑落停止姿勢で斜面を削りながら落ちていくだけでした。
私が助かったのは尾根の段差から落ちた時に下の雪が柔らかかったからにほかなりません。途中に岩でもあれば死んでいたと思います。
滑落を経験した私が得た結論は、滑落停止術の訓練はもちろん必要ですが、それと同時に、まず倒れたら形にこだわらず即座にピッケルを刺す、これに尽きるということです。出来れば体が空中にあるうちに刺す。
そして、その第一段階に失敗したら滑落停止姿勢ということです。
もちろん、歩いているときから雪質を意識して、倒れた時にはこうしようと考えておかねばなりません。
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