日経ビジネス2月16日号にザ・ウォール・ストリート・ジャーナル2月1日号の「ソマリア海賊と交渉56日」という記事が掲載されていた。
これは昨年11月28日夜に乗っ取られた大型タンカー・ビスカグリア号の乗務員が1月22日に開放されるまでのルポである。
その際の海賊の武装はAK47自動小銃(有名な1947年型カラシニコフ)と携行式ロケット弾だったという。
実際問題、T72型戦車33台含む対空砲、対戦車ロケット弾を満載した貨物船がソマリア海賊に乗っ取られたこともあるので、こと武器に関しては彼らはほぼすべての火器を所有していると見て間違いない。
ビスカグリア号も海賊を警戒して仏海軍の船団についていったのであるが、スピードの差で遅れ気味となり事件当時は約2時間の距離が開いていた。
そういう状況を予備知識として、彼らの手口を見てみよう。
夜の海を高速艇で接近して発砲。
続いて梯子をかけ甲板に上る。
乗組員の立てこもった船橋の窓に銃弾を打ち込み、船長と機関長を引っ張り出す。
その頃には警戒に当たっていた仏軍と独軍の武装ヘリが駆けつけてくるが、海賊は二人の人質に銃を突きつけて追い払う。
乗っ取りを完了して人気のない砂漠地帯の沿岸へ回航する。
身代金の回収は現金を積み込んだ密閉性のコンテナをアデン湾へ空中投下させ、それを高速艇で回収する。
海賊事件の起るアデン湾は公海であり司法権を持つ国はない。そしてソマリアは無政府状態である。
2007年には乗っ取られた船舶は一隻だけだったが2008年には32隻に急増、特に2008年10?12月だけで50件もの海賊被害が発生し、国連は海賊への武力行使容認決議を採択した。
また、国連海洋法条約第100条には「すべての国は、最大限に可能な範囲で、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する」 とある。
これを受けて現在は、NATO諸国、中国、インドなど14ヶ国20隻の軍艦が派遣されている。
仮に、日本が派遣ということになれば、ヘリ搭載型護衛艦の「ひゅうが」の出動ということになるのかもしれない。
これまではマラッカ海峡のみが問題として取り上げられてきた。
しかし、アデン湾の手口は完全にビジネス化されており、他地域へ飛び火しないという保証はない。
この流れだけは阻止しなければならない。
そのためには艦艇派遣という力による対症療法と国際社会の足並みをそろえた根本治療が必要なのだが。
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