ハザードマップの話(第263回)

独立行政法人・防災科学技術研究所で開催された次世代ハザードマップに関する研究集会は非常に興味深かった。
今まで私が考えていたハザードマップについての認識は良くも悪くも相当変ってしまった。
ハザードマップと言うのは、災害予測図、危険範囲図とも呼ばれ、ある条件のもとで災害を想定し、その影響の範囲や被害の程度を地図として示したものである。(国土交通省国土技術研究所・小山内氏の講演より)
火山のハザードマップを例に取れば、過去の噴火の状況からコンピュータによりシミュレートして、「こういう噴火の場合はこういう被害が出る」という予測をする。
しかし、シミュレーションである以上もちろん現実とは異なる。
たとえば、溶岩の流れは溶岩が熱いほど速く、冷えてくれば流れるスピードが落ちる。
では溶岩の熱の冷え方は一様かといえば、そんなことはない。
実際にはさまざまな条件により、溶岩の温度はなかなか低くならなかったり、逆に急に落ちたりするのだろう。
しかし、コンピュータによるシミュレーションでは一定の速さで温度が冷えるというモデルを使わざるを得ない。(砂防・地すべり技術センター・安養寺氏)
また、気象庁は2008年3月31日から降灰予報を開始したが、降灰域は大体予報通りとなるが、降灰量はなかなか当たらない。(気象庁・新堀氏)
これも降灰時間が割り出せない以上、予報するのは無理に近いと言うものだろう。
2006年6月4日、桜島の噴火が想定外のところから始まった。
しかし、これが大きな混乱をもたらさなかったのは、その年の3月にハザードマップが作成され、5月に住民説明会を開催していたからだと言う。(京都大学防災研究所・石原氏)
こういうラッキーもなければやってられないだろう。
次世代ハザードマップへの道は相当険しいという印象を持ったが、多くの関係者のご努力によってハザードマップが作成されていることが実感できただけでも有意義な研究集会であった。


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