古くて新しい千葉市の問題提起

今日の日経新聞に『バス赤字解消へ住民負担を提案』という小さな記事がありました。
記事によれば『千葉市は移動手段のない高齢者らを対象に市の負担で運航してきた地域住民向けのバスについて(略)自治会や商店会など地域住民と折半することや、市の負担額の上限を年500万円にすることなど(の運用を始めたい考えだ)』
民間バスが赤字のために運航できなくなった場合、それまで利用してきた高齢者などの交通手段確保は全国的に行政が行ってきました。
一地域のために税金を投入するのはおかしいという意見と地域の利便性確保は常に議論されてきました。その一つの結論として、行政は「これは交通政策として実施するのではない、あくまで福祉施策として行うのだ」という説明をしてきました。
それがとうとう千葉市では財政難と言う観点からでしょうか、『地域住民と折半』『上限500万円』という段階に来てしまったようです。千葉市が現在抱える該当路線は3路線、赤字補てん額は3900万円だと報じられています。
首都圏の一角の政令市でこうした問題提起が行われるのですから、全国的に過疎地を抱える自治体はどういう議論を行っているのでしょうか。おそらく全国の自治体が千葉市の投じた一石を見守っていることと思います。
高齢化・人口減少の圧力がいよいよ居住地を選ぶという個人の権利の制限に及んできました。豪雪地帯の過疎地などでは集住といって、単身世帯のお年寄りには街中の一つの建物に住んでもらおうという議論もあります。
今後は、全国各地で個人の自由にかかわる権利とそれを守るためにどれだけのコストがかかるかという議論されるようになるのかもしれません。
経済成長期にはエコノミック・アニマルという批判的言葉が使われましたが、今度は低成長経済社会において権利についてのエコノミックな計算を行うようになるとすると何とも皮肉な話です。
権利の侵害とその補償のような係争もいずれは起こるでしょう。「その件のエコノミック・ライツは〇〇円です」という判決が出るようなら本当に味気ない話です。


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