今朝の朝日新聞「わたしの紙面批評」に内田樹氏が『領土問題の緊迫化』という批評を載せています。
大変示唆に富む内容で「なるほど」と思います。
そのなかで内田氏はこう語ります。
『領土問題の解決方法は二つしかないということである。一つは戦争。勝った方が領土を獲得する。もう一つが外交交渉。双方が同程度の不満を持って終わる「五分五分の痛み分け」である。』
ズバリその通りだと思います。ただ、私の認識と少し違和感があるのが次の下りです。
『中国とロシアの国境紛争は先年「五分五分の痛み分け」で解決したが、これはプーチン、胡錦濤という両国の指導者が「自国領土を寸土とて譲るな」という国内のナショナリストの抵抗を押し切れるだけの安定した統治力を有していたからできたことである。』
もしかしたら、紙面のスペースの関係で内田氏はこのように書かれたのかもしれませんが、私は少し違う認識を持っています。
中国とロシアの国境紛争とはダマンスキー島すなわち珍宝島の領有権問題のことですが、これについては長い長い間のロシア国境警備隊と中国人民解放軍の多くの犠牲を出した戦闘が繰り返されてきました。まさに戦争(武力)によって解決をしようとしてきたわけです。
その結果として、最後の最後にイレギュラーな形をとってコスイギン・周恩来会談が実現して戦闘状態はとりあえず終結し、その後に内田氏の言う「五分五分の痛み分け」にたどり着いたというのが私の認識です。
したがって、国内ナショナリストの抵抗を押し切ったのが両国指導者の指導力という見方が間違いとは思いませんが、その前提となる背景として、両国の『戦争行為』があって、いよいよ核の準備をするしかないというところまで進んでしまった現実を見なければならないと思うのです。
本当のところは誰にもわからないのでしょうが、両国指導者の力量や統治能力で領土問題が解決するということは、残念ながら可能性として限りなくゼロに近いというのが国際社会の現実のような気がします。
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