本の紙カバー(第363回)

以前は(数十年前という相当以前ですが)、本を買うと私のお気に入りのカバーのかけ方をしてくれる書店があった。
今は、確かにいつも「カバーをおかけしますか?」と尋ねられるのだが、お気に入りのカバーのかけ方をしてくれる書店にであったことがない。
気に入らないカバーのかけ方であっても別にいやだとは思わないが、大抵いい加減なカバーのかけ方なので帰宅後に自分でかけ直す。
第一、幅がちゃんとあっていない。
だから、本をカバーで包もうと思っても表紙が入らない。折り直すしかないのである。
私のお気に入りのカバーのかけ方は、背表紙の上下を2ヵ所ずつ切れ目を入れる。
このピシッと決まるカバーは気持ちがいい。
北小金にあった辰正堂書店の店員さんがぴっぴっと鋏で切れ目をいれ、手品のような手際であっという間にカバーをかけていくのを小学生の私は毎回見とれていた。
そういう書店はまだ日本のどこかで生き残っているのだろうか。
ノスタルジー以外の何ものでもないが、私が本好きになった大きな要因の一つが書店のこうしたお客に対する気遣いだったのである。


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