企業債は「負債」か「資本」か?(第366回)

【あまり大勢の人が興味を持っている話ではないでしょうがご容赦ください】
国県市町村の予算は現金主義で単式簿記である。
これに対して、病院事業や水道事業などは収益と費用を対比させ経営状況を明らかにする必要があるため発生主義・複式簿記となる。
とは言え、まるっきり民間の企業会計と同一というのでもない。
その一つが、債務の扱いである。
たとえば病院が改築や高額な医療機器購入のために企業債を発行した場合、それは貸借対照表の「資本」に計上されるのである。
企業債は借入金である。普通は「負債」だろうと思う。実際、一時借入金は「負債」なのである。
ところが、企業債は「資本」の部に仕分けされる。
おそらく多分、公営企業の債券は当該公共団体が当然払ってくれるものであり、取っぱぐれはないということから「資本」と同じというのであろう。
しかし、本当にそうなのだろうか?
昨今の公立病院の破たんを見ているといつまでも自治体が面倒をみるという時代ではなくなっているように思える。
総務省の地方公営企業会計制度研究会の報告書をみると、昭和44年報告書にも平成13年報告書にも「負債」として整理すべきと書かれている。
企業債が「負債」か「資本」かは古くて新しい問題だと分かる。
では、企業債は「資本」と「負債」のどちらに計上されたほうが住民にとってわかりやすいか?
単純に考えれば当然「負債」であろう。
しかし、仮に「負債」にした場合、今度は公立病院における赤字とは何という根源的な問題が生じる。
公立病院が採算の合わない医療を行わないとなれば民間病院と変わらず、公立の意味がない。
民間の一般病院が診ることができない小児救急などの不採算部門を担当するからこその公立だとも言える。
そういう問題を考慮せず、たとえば高度医療のための高額医療機器を購入して「負債」が増えた場合、これを経営判断の誤りと言えるだろうか?
平凡な医療のみに徹して、「負債」を増やさないことを良い経営と言えるだろうか?
「負債」の多さイコール経営の怠慢と見られてはたまらない。
結局、どういう公立病院にしていくのか、そしてその場合、赤字をどこまで許容するかはまさに住民が決めることなのだ。
すると、企業債を「負債」とするか、あるいは「資本」とするかについても、その病院を所有する住民が最終的に決めることになるのだろう。