日別アーカイブ: 2008年10月22日

生態系と人智(第226回)

初めて現地調査を行なってから一年以上たったので少しだけ書かせていただこうと思う。
ウミグモについてである。
ウミグモが越冬したという記事を見て、漁協組合長にお出しする葉書に何も書けなくなってしまった。
海を生計の場としている方々を思えば言葉を失うのみである。
寒さによる減少に望みを持っていただけに残念でならない。
私は、当初から天敵による駆除という考え方は無理だと思っていた。
駆除や防除のために導入した天敵がさらに悲惨な結果を招いた事例はいくらでもある。
ハブ退治に導入したジャワマングース、アフリカマイマイに対するヤマヒタチオビガイ、ボウフラ退治のカガヤシなどなど。
当時は良かれと思って導入したものが、効果をあげずに予想もつかぬ事態を招いてしまったり、効果はあげたものの導入時よりもひどい結果になってしまったりするのが生態系なのである。
広大無辺の自然の中では、人智など高が知れているとつくづく思わされる。
素人考えでは、ウミグモは船舶のバラスト水の中に紛れてやってきたのではないかと想像する。
では、それがどこの海からなのかは分からない。
越冬したので暖かい地域ではないと仮定すると、今度は熱にも強いという点でつじつまが合わない。
世界のどこにも事例がないとなれば、本当の生息地は火山の豊富な日本近海の「深海」ということなのかもしれない。
問題はこの後どういう推移をたどるのかである。
日本に侵入してきた外来生物のこれまでと現状から推察すれば、全国へ広がり世界に広がるのは時間の問題ということになってしまう。
この最悪の事態にならぬよう本格的な監視体制を続けることが第一の対策なのかもしれない。